名古屋の編集プロダクション・エディマートが取材や編集のノウハウを伝えるメディア「エディマグ」 エディマートが取材や編集の
ノウハウを伝えるメディア

  • TOP
  • お役立ち
  • 編集者が軽視できない、情報誌の「雑貨化」

2019.05.11 Sat

お役立ち

編集者が軽視できない、情報誌の「雑貨化」

こんにちは!エディマート代表の鬼頭です。
みなさん本屋さんに行っていますか?ネットで本を購入していると気付かないかもしれませんが、最近の情報誌はいろんな部分が変わってきました。デジタルメディアが台頭し、本売りが厳しい状況だということは周知の事実だと思います。変化の主な原因は、そこにあるかもしれません。
では何が変わってきたのか?中身はもちろんなのですが、情報誌の「見た目」が変わってきているのです。私はこの現象を、情報誌の「雑貨化」と名づけてみました。雑貨のような情報誌とは、どんなものでしょうか?主観も少なくありませんが、これから編集に携わる方や、ブランクのある編集者の方の参考になればうれしいです。

スポンサーリンク


1.情報誌の雑貨化とは?

「雑貨化」とは簡単にいえば、“見た目が雑貨のような情報誌が増えた”ということ。ここで言う「雑貨」とは、暮らしに溶け込んだ日用雑貨ではなく、セレクトショップなどに並ぶ感度の高いアイテムを指しています。

デジタルメディアとの差別化

なぜ、情報誌が雑貨のようになるのでしょう?私たちが情報誌を制作するとき、これまでは同じテーマで編集された「本」がライバルでした(たとえば、まっぷるvsるるぶ)。しかし近年は、デジタルメディアが大きな壁となって立ちはだかります。情報量や検索性ではとてもかないません。そのため、より深く、よりコアに─デジタルメディアと差別化するために、情報誌の中身に関しては、そんな戦略がとられることが増えました。
そして「雑貨化」も、デジタルメディアより優位に立つ戦略のひとつと考えます。本にできてデジタルメディアにできないのが、見た目を変えること。中身だけではなく、見た目を工夫して、所有欲を高めようというワケです。

書店が変われば本も変わる

出版不況のなかでネット書店が増え、その影響から実店舗をもつ書店が減っています。生き残っている書店は、「大型化」と「個性化」の2方向に分かれているようです。前者は、そこに行けば大抵の本が手に入る超大型書店。後者は、店主のこだわりで選んだ本が並ぶ、いわば本のセレクトショップ。超大型書店の場合は、ラックや棚に本が並べられますが、セレクトショップ型の書店の場合は、インテリアと一緒に本が並べられるなど、ディスプレイにもこだわりが見られます。このような書店に本を並べてもらうためには、見た目を工夫せざるをえません。
加えて、インスタグラムやツイッターといったSNSによる口コミが、ときにテレビや新聞といったマスメディアよりもパワーをもつ今、見た目が“映える”本を作り、SNSで拡散してもらうことも、戦略として欠かせなくなってきています。

雑貨化した本の特徴とは

セレクトショップなどに並ぶ感度の高いアイテムのような、見た目が“映える”本とはどんなものでしょうか?まず共通して言えるのが、「小さい」という特徴です。かつて情報誌といえば、B4サイズ、A4サイズが多かったと思いますが、近年はB5サイズ、A5サイズがとても増えました。「女性の小さなカバンにも入るように」と、小型化の理由を聞いたことがあります。
もうひとつ特徴的なのが、「質感」へのこだわりです。写真と文章で情報を伝える特性上、情報誌は「コート紙」というツヤのある紙を使うことが少なくありませんでした。もちろん今もコート紙は使われていますが、それ以上に「マット紙」が選ばれる傾向にあります。少しざらつきのある紙は、手ざわりがやさしく、自然光を活かして撮影したやわらかな写真との相性もバツグンです。表紙も「マットコート」と呼ばれる、表面のツヤを消して質感と手触り感を高めた紙が、よく使われるようになりました。

 

2.編集プロダクションが直面した「雑貨化」

小さくなったり、質感を重視したり。編集プロダクションであるエディマートが直面した、情報誌の雑貨化の実例をご紹介します。

これまでの「定番」が変わった

名古屋の観光情報をまとめた情報誌をつくったときの話です。それまで表紙を包む帯には、名古屋を象徴するランドマークである「オアシス21とテレビ塔」などの写真を使っていました。ある日、出版社の担当から「帯の写真の方向性を変えたい」というオーダーがあり、結果的に採用されたのが、「あずきとコーヒー」の渋い写真。情報誌のテーマカラーも黄色から群青色に変わるなど、大きく舵が切られましたが、セレクトショップ型書店でも“映える”一冊に仕上がりました。
このように、これまで当たり前だった写真、色、モチーフを、ガラリと変えていくケースが増えました。

小ささを意識した本づくり

情報誌といえば、たくさんの情報をギュッと詰め込むのが鉄則でしたが、近年の小型化の傾向を受け、掲載するコンテンツの量を制限し、ゆったり見せるのがトレンドになっています。企画を説明するリード文は数行程度、データ欄も本当に必要なものだけにとどめ、より詳しい情報はWebでどうぞ、といった具合です。かといって、制作工数が減るかといえば決してそうではなく、より洗練された情報にするため、これまで以上にリサーチ力や経験値が問われるようになりました。

「大切な情報は上へ」は古い?

本の顔である表紙で、セオリーとされているのが「大切な情報は上へ」。書店やコンビニエンスストアでは、本はラックの中に並べられます。段差のあるラックの中で、自らのアピールをするために、ほかの本と重ならない上部に、大切な情報を配置するのです。書籍名の上に、その中身を端的にあらわすキャッチコピーがあったり、読者プレゼントの情報があったりするのは、そのためです。
ところが、セレクトショップタイプの書店では、これまで想定しなかったディスプレイがされるようになり、大切な情報を上に配置することが、それほど重要ではなくなってきた気がします。最近人気の情報誌「ことりっぷ」の表紙を見てみてください。書籍名の「ことりっぷ」は左上にありますが、肝心な対象エリア名は中段より下に配置されています。しかし、全体にかわいらしい和柄がバランスよく散りばめられ、表紙そのものの完成度はとても高いことがわかることでしょう。

 

スポンサーリンク


3.「雑貨化」に対応するために

ここまで、情報誌の雑貨化の傾向や、エディマートが直面した実例を紹介しました。それでは、編集者としてどのような心構えや、知識を身につけておくとよいのでしょうか。これがすべてではありませんが、私見をまとめてみます。

「使われる」だけではなく「見られる」を意識

情報誌は、掲載した情報が使われてナンボの世界です。紹介したお店に一人でも多くのお客さんが訪れることは、編集者としてもこの上ない喜びです。しかし、情報がどのように使われるかを意識しているだけでは、せっかく良いニュースをキャッチしても、誰にも届けることができません。
情報誌の対象とする読者が、その本を持つことに喜びを感じるか?この点を意識することも大切だと思うのです。カバンから少し見えるとき、カフェで読んでいるとき、読者とその本が一体となった姿に想像をふくらませてみましょう。
また、さまざまなスタイルの書店に行き、今どき本がどのように売られているかを知っておくべきです。ある書店ではお菓子と一緒に並んでいたり、またある書店では店主の一言コメントが添えられていたり。売られ方を知ると、おのずと本づくりも変わっていきます。

もっと印刷のことを学ぼう

編集者が仕事をする上で印刷知識は欠かせませんが、これまでは工程に関わる基本をおさえておけば何とかなりました。しかし、プロダクトデザイナーが材質や加工法を知らなければ話にならないのと同じで、より理想の雑貨(情報誌)を作るためには、紙やインク、印刷方法といった、さらに深い知識があってしかるべきでしょう。もっといえば、カバーや外箱などの装丁についても学んでおきたいところ。簡単なことではありませんが、より踏み込んだ本づくりができるようになり、編集者としてのステージが上がるはずです。

4.最後に

いかがでしょうか?勝手な造語で恐縮ですが、情報誌の「雑貨化」はひとつの傾向として無視できないと思います。コンテンツを広げたり深めたりといったことは、マンパワーで何とかなるかもしれませんが、雑貨化は力技では難しいところがあります。
行き着くところは、どんな本だったら持ち歩きたいか、棚に並べたいか──。答えは、机の上やパソコンの中にはありません。外に出て、人と話をして、本の現状やあるべき姿を実感することから始めてみませんか?

スポンサーリンク

EIJI KITO

この記事の執筆者EIJI KITO代表取締役

  • TWITTER
  • FACEBOOK
  • INSTAGRAM
1973年生まれ。96年に同志社大学卒業後、新卒入社の宣伝会議で編集職の楽しさを知るも、己の未熟さから挫折。地元名古屋に戻り、プロトコーポレーションの制作部門に入社し、編集の仕事を学び直す。親会社に転籍後はWEBのプランニングに従事。03年フリー編集者として独立、06年法人化。エディマート代表として制作と営業を統括しながら、自身も編集者として最前線に立つ。好きな言葉は岡本太郎の「危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ」。趣味はバイクとマイクラと部屋いじり。

記事一覧

お問い合わせ

お仕事のご相談や、採用についてなど、
お気軽にお問い合わせください。