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2020.08.06 Thu

Bookレビュー

『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社・川崎 大助)/AIに音楽を選ばれていいの?「意志ある選曲」にこの一冊

『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社・川崎 大助)

アメリカの音楽雑誌『ローリング・ストーン』が発表した「500 Greatest Albums of All Time」と、イギリスの音楽メディア「NME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)」の「The 500 Greatest Albums of All Time」。著者はこれら米英の専門誌の2つの名盤リストを素材とし、100位までの順位付けを行なった。こうして浮かび上がった“主観抜き”の『究極の100枚』について、丁寧な解説が加えられていく──。

この記事のライター/鬼頭英治(エディマート)

編集プロダクション代表にして、エディター歴20年強。テレワーク時には必ず、AppleMusicをかけながら仕事を行う。ギターを少々。音楽知識レベルは人並み。好きなアーティストはRayBarbee、カーリー・ジラフ、ユニコーンと散らかり気味。


鬼頭英治

1.自分で音楽を選ばなくなっている。不安を覚えた時に出会った本

自分の音楽歴を振り返ると、カセット&レコードからはじまり、CD、MDを介して曲を聴いてきた。それが今では、サブスクリプションサービスの存在が当たり前に。いろんな曲を気兼ねなく聴けるのは素晴らしいことだが、アプリから勝手に「あなたにおすすめ」とリコメンドされ、「俺の何を知っているんだ!」と、ありがた迷惑に感じるときもある。

自分が聴きたい曲を聴く。今こそ明確な意志を持たないと、コンピュータに進められたままの曲しか聴かなくなるのではないか。大袈裟かもしれないが、こんな不安を感じていることは否定しない。

自らの意志で曲を選ぶにあたって、基礎知識は得ておきたい。その一方で、誰かの偏った情報で自分の好みが影響を受けるのも嫌だ。だから書店で本書を見つけたときは、表紙にならぶ「教養として」「主観抜き」という文字が胸に刺さった。

米英の一流の批評家「たち」が選んだアルバムを、著者がスコアに基づいて順位付けし、一枚ずつ、名盤が生まれた時代背景やアーティストのプロフィール、注目すべき曲などを紹介してくれる。

スコアの付け方はこうだ。まず、『ローリング・ストーン』の「500 Greatest Albums of All Time」と、『NME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)」の「The 500 Greatest Albums of All Time』両方にリスティングされているアルバムを抜き出す。次に、それぞれのランキングの最上位から最下位まで、順位に沿ってポイントを付与し、アルバムごとに双方のポイントを合算し上から並べる。こうして1000枚から選ばれた『教養としてのロック名盤ベスト100』が完成した。異論はあるかもしれないが、洋楽の深いところまでは知らない自分としては、とてもわかりやすい納得のいく方法だ。

2.ランキング番組のように読み進められる楽しさ

あらためて本書に掲載されている著者・川﨑大助氏のプロフィールも紹介しておきたい。

1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)がある。

アルバム紹介にあたっては、専門誌によくある「Aを知っている前提でBを解説する」ということがなく、その点「教養として」というタイトルに偽りがない。いきなり第1位の紹介文を読むなど、カタログ的に使うこともできるが、やはり最下位から順に読み進めていってほしい。往年のテレビ番組「ザ・ベストテン」のように、次にどんなアルバム&アーティストが登場するのか楽しめるからだ。また主観がないランキングだけに、同じアーティストが頻出することもある。その場合、下位で書かれた情報を読んでおかないと理解しづらいこともあるだろう。

3.ステイホームな今こそ、この本を片手に自分で選曲しよう

自分は本書を読んでは、気になるアルバムや曲があったら、その場でサブスクリプションサービスで検索をかけ、曲を聴きながら解説文で理解を深めている。やはり名盤だけに、耳にしたことのある曲が多いが、見たことのある曲名と聴いたことのあるメロディ、さらにはアーティスト名がはじめて合致することもあり、「なるほど、聴いたことのあるこの曲は、このアーティストのこういう曲名だったんだ」という瞬間がとても楽しい。

ここに紹介されているアルバムや曲は、今をときめくアーティストたちの楽曲の下地になっていることも少なくない。ステイホームで音楽にふれる時間が増えた人もっと音楽の幅を広げたいと思っている人は、ぜひ一読していただきたい。

EIJI KITO

この記事の執筆者EIJI KITO代表取締役

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1973年生まれ。96年に同志社大学卒業後、新卒入社の宣伝会議で編集職の楽しさを知るも、己の未熟さから挫折。地元名古屋に戻り、プロトコーポレーションの制作部門に入社し、編集の仕事を学び直す。親会社に転籍後はWEBのプランニングに従事。03年フリー編集者として独立、06年法人化。エディマート代表として制作と営業を統括しながら、自身も編集者として最前線に立つ。好きな言葉は岡本太郎の「危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ」。趣味はバイクとマイクラと部屋いじり。

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