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2023.05.31 Wed

本の紹介

ブロードキャスト!!房野史典さんが選ぶ5冊の本┃「歴史の学び直し」に推したい!日本史がもっと面白くなる本

人生で特別な5冊を紹介してもらう連載企画「5冊の本」。

今回お話を伺ったのは、吉本興業所属のお笑いコンビ「ブロードキャスト!!」のツッコミ担当である房野史典さん

無類の歴史好きとして知られる房野さんは、より多くの人に歴史を面白がってもらおうと、とにかくわかりやすい独自の語り口で数々の解説本を手がけています

現代社会で起きているさまざまな問題や事件は、歴史的な背景を知っていなければ理解できないことも少なくありません。時事問題や歴史を学び直すことは、時事問題に対する理解が深まり、打ち合わせや商談の場をスムーズにしたり、新しい企画のヒントを得たりと、ビジネスパーソンにとって役立つはずのもの。

そこで今回は、歴史の学び直しをテーマに、5冊の本を選んでもらいました。

「歴史の面白さは、深掘れば深掘るほど『こいつ、ヤバイ!』という人物が出てくること歴史は極上のエンターテインメントですよ」と話す房野さん。

大人だからこそ歴史を最高に楽しめる、極上の5作品とは?

取材
芸人・作家
房野史典

岡山県出身。吉本興業所属のお笑いコンビ「ブロードキャスト!!」のツッコミ担当。大の歴史好きとして戦国武将や幕末関連の著書を複数持つ。2023年4月には『読んだらきっと推したくなる! がんばった15人の徳川将軍』を発売。(InstagramTwitter


水野史恵

この記事の取材担当/水野史恵(エディマート)

ディレクターとして書籍や新聞の編集・執筆業務を担当。房野さんの著書『超現代語訳 戦国時代』を読んだことをきっかけに、歴史(とくに戦国時代)に興味津々。

1. 大人になった今こそ歴史のベースを知っておきたい

幼少期から歴史に興味があり、小学生のころにはすでに活字に抵抗がなかったという房野さん。図書室で読む本は、ミステリーなどの物語というよりも歴史関連のものが多かったと話します。

改めて歴史を学ぶ面白さについて尋ねると、「『こんなことが本当にあったの!?』という驚きがいっぱいあること。僕もまだ知らない歴史上の人物がたくさんいて、何千年というボリュームのコンテンツだから飽きることもない。漫画やアニメなど、エンタメ好きな人であれば絶対に好きになれる要素がある」とのこと。

また、きっかけさえあればいつでも誰でも歴史の面白さに気づくことができると話す房野さん。とくに今の日本で生きる上で、歴史の学び直しはとても意味のあることだと言います。

「歴史を学ぶことで、時代によって物事に対する価値観が変わっていったことがわかるんです。日本でもここ数年、ダイバーシティが重要視されていますよね。だからこそ、子どもだけでなく大人も歴史を通して『こういう考え方があったんだ』と、多様な価値観を知っておくことにが大切だと思っています」。

歴史を学べば視野が広がると語る房野さんが、初めに紹介するのは『探究学舎のスゴイ授業 戦国英雄編』です。

『探究学舎のスゴイ授業 戦国英雄編(方丈社/探究学舎)』

探究学舎は宇宙・生命・歴史・芸術など、さまざまな分野で学びの体験を展開する興味開発型の学習塾です。子どもたちの「知りたい!」「やってみたい!」という探求心に火をつける“魔法の授業”は、メディアでもたびたび取り上げられるなど、注目されています。本書はそんな探究学舎の授業をリアルに再現しているとのこと。

「実際に『探求学舎』で行われている授業が、この一冊に落とし込まれているんです。逸話や伝説といったものも載っているので、すべてが史実通りではないのですが、子どもが興味を持つであろうエッセンスが散りばめられているんです。もちろん、戦国武将たちのストーリーを知ることもできますよ」。

房野さんはこの本について、「『歴史の学び直し』という意味で親御さんも一緒に読んでほしい」と言います。

「ところどころに『魔法の流儀』という解説があり、子どもへの問いかけの方法などを紹介しているので、親御さんにぜひ注目してもらいたいですね。どうやって子どもの興味を引くか何をしたら新たな発見・驚きにつなげられるかという教育面のポイントがまとめられているんです」と一冊に施された工夫について語ります。

房野さんが子どもたちに授業をする際も、本書を参考にしているのだとか。

「僕自身、何かを学び始めるときに学んだ先のアウトプットまで視野に入れておくと、より頭に入ってくるんです。『何かを誰かに説明する』『何かを本にする』というのがアウトプット、つまり目的だとするとインプット止まりではダメだと、きちんと一つひとつ考えるようになる」。

読書の先の、子どもの学び・発見を考えながら、大人も一緒に読んでみてほしいですね」と房野さん。

子ども向けの本だからこそ可能な、大人の歴史の学び直し方法があるのだと教えてくれました。

探究学舎のスゴイ授業 戦国英雄編

¥1,980
発行/方丈社
著者/探究学舎

続いて紹介してくれたのは、だれが歴史を書いてるの?歴史をめぐる15の疑問です。

『だれが歴史を書いてるの?歴史をめぐる15の疑問(太郎次郎社エディタス/ピエルドメニコ・バッカラリオ、フェデリーコ・タッディア)』

本書は、「歴史を学ぶとはどういうことなのか?」といった、歴史にふれる上で大前提となる素朴な疑問を解決してくれる、歴史学の入門書としてぴったりな一冊です。

「歴史の授業では、『戦国』『室町』などの時代や『平清盛』『織田信長』といった歴史上の人物をたくさん習いますよね。けれども、キーワードや単語を覚える前に、『そもそも歴史はどこからはじまったのか』『昔のことを、誰が今に伝えたのか』『歴史は戦の勝者が塗り替えているのか』といった前提の部分をまず考えてみませんか?とこの本は提案してくれているんです」。

歴史を学ぶ上で重要なのは、当時の“当たり前”を知ること。しかし、それらについて子ども向けに解説された本は数少ないと言います。そんな中で本書について房野さんは「抽象的な事柄をより具体的に落とし込み、わかりやすく述べている見事な本」だと絶賛します。

「例えば、歴史の教科書で頻出する地位や権力といった用語について、本質を理解できていない、なんてこともあると思います。歴史を学ぶ上でのそもそもの部分を、大人になった今だからこそ学び直してみると面白いのでは?」とすすめます。

また、児童書である本書をあえて大人にすすめる理由を尋ねると、「もちろん子どもが読みやすいように書かれているのですが、読んでみると大人にとっても気づきがたくさんあると思います。例えば、『歴史はみんなのものだから、君のものでもあるし僕のものでもあり、いろんな国のものでもある。何を語り継ぎ、何を忘れるかは僕らが選ぶこと』というメッセージなんて、ハッとさせられますよね」と房野さん。

記憶することにも忘れることにも意味がある。そんな歴史の根本にふれてみると、学生時代とは違った捉え方ができるかもしれませんね。

だれが歴史を書いてるの?歴史をめぐる15の疑問

¥1,980
発行/太郎次郎社エディタス
著者/フェデリーコ・タッディア、 ピエルドメニコ・バッカラリオ

 

2.時代と偉人の衝撃的な実態を読み解く

続いて紹介するのは、「歴史の本なのに、現代と絡めて語られる構成に面白みがある」と、房野さんが太鼓判を押す一冊です。

『室町は今日もハードボイルド 日本中世のアナーキーな世界(新潮社/清水克行)』

本書は、現代人が思い描く昔の「日本人像」が根底から覆る、中世日本の仰天エピソードが詰まった日本史エッセイ。

「最近は、大河ドラマの影響もあって中世ブームだと言われているようですが、とくに室町時代は印象が薄いという人は少なくないですよね」と、平安時代末期から戦国時代中頃までの中世はあまり人気がないことに言及する房野さん。

「ただ、この本を読んだら驚きますよ。『そりゃ嘘だろ!?』となるびっくりエピソードばかりなんです」。

話題の最初には必ず現代社会のトピックが語られるという本書。現代人が親しみやすい話題を盛り込み、読者をひきつけてから「実は室町ってこんな時代だったの!?」と驚くような実情を披露するという流れが魅力的なポイントなのだそう。

室町時代の日本人は、現代人とはあまりにも価値観が違っていたことがわかります。例えば2人の人間が争っていたとして、どちらが悪いのかの決着。お湯に手を突っ込んで火傷が重かった方が悪いとか、焼いた鉄の棒を肌にあてて跡が強く残った方が悪いとか。正直、意味がわからない行為ですよね(笑)。けれども、当時の日本人は彼らなりに理論・ロジックをもとに行動していたんです」。

歴史として語られる、理解しがたい行為や風習を全部受け入れろということではないと主張する房野さん。

「切腹も、今でこそ『武士たるもの』なんてきれいなものとして描かれることが多いですけど、当時は没落しそうな人間が『助けてくれなきゃ死んでやる!』という脅しの言葉として使っていたのだとか。そんな社会があったという事実を認識することに意味があると思うんです。この本は多様な生き方・考え方に寛容になる手助けをしてくれるんです」と熱く語ってくれました。

笑っちゃうほどパワフルだった中世日本人。室町時代を通して、まだ知られざる中世を学び直してみてはいかがでしょうか。

続いて紹介してくれたのは、大河ドラマ『どうする家康』の時代考証担当である著者が執筆した青年家康 松平元康の実像です。

『青年家康 松平元康の実像(KADOKAWA/柴裕之)』

家康は今川氏の人質ではなかった!?」という新機軸で、徳川家康誕生までの青年家康の歩みが徹底検証されている本書。

柴裕之氏の書籍は、自身の著書の参考文献にも挙げているという房野さんは、「歴史の学び直しに一番向いているのではないでしょうか」と本書について話します。

「『徳川家康は幼い頃、今川家に人質として送られて肩身の狭い思いをしていた』というのは、よく聞く有名な話。しかし実際は、今川義元の一族の娘と結婚していて、当時の名前『元康』は主君が家臣に一文字与えるという偏諱(へんき)によるもの。思いっきり親戚のような扱いだったことがわかったんですよね」。

と、房野さんが話すようにこれまで数々の文献で『一般的にこうだった』と述べられてきた歴史が、実際は違った!?という点に言及しています

「もちろん最初は人質だったのですが、成長とともに一族の人間として力をつけていった青年家康。その実像を読み解くと、今まで語られてきた通説が真実ではなかったことに驚きますよ」と房野さん自身が衝撃を受けたことを語ります。

「さまざまな文献で必ずと言っていいほど語られてきた歴史的な定番エピソードが、本当かどうかはわからない。学校で学んだ知識だけが正解ではないという新たな発見につながりますよね」。

無数に存在する文献のどれを参考にするかで、歴史が大きく変容してしまう。そこが、歴史の難しさであり、面白さを感じるポイントでもあるのかもしれません。

青年家康 松平元康の実像

¥1,870
発行/KADOKAWA
著者/柴裕之

3.歴史がこれからの時代を生き抜く知恵に

最後に紹介してくれた現代語訳 論語と算盤は、房野さんが「すべての大人に読んでほしい」という一冊。

『現代語訳 論語と算盤(ちくま新書/渋沢栄一、守屋淳訳 )』

明治期に資本主義の本質を見抜いていた渋沢栄一による経営哲学の要素が、現代語訳されて詰め込まれた名著『現代語訳 論語と算盤』。「論語」は道徳、「算盤」は利益を追求する経済活動を意味します。

「江戸時代に力を持っていた武士たちは、中国から伝わってきた儒教をもとに動いていました。儒教の有名な書物といえば、孔子の論語。簡単に言えば、当時の武士たちは思いやりや礼儀といった道徳を重要視していて、利益を求めるのは卑しいという感覚があったんです」。

その一方で、江戸時代は経済が急激に発達し、武士たちもコントロールできないほど商人が力を持った時代でもあったといいます。

道徳に従っていたら利益にならないというのが商人たちの考えでした。つまり、当時の考え方は道徳を守るか利益を追求するかの2択しかなかった」。

それを否定したのが渋沢栄一。彼の主張は「道徳がある利益を求めるのが一番正しい道だ」というもの。渋沢栄一が読み解いた資本主義(=合本主義)は、生じた利益は出資者以外にも還元していき、最終的には社会の利益にするというものでした。

「僕は学生時代、『資本主義=お金があれば何でもできる。お金持ちが好き放題』というイメージだったんです。けれども、『そうじゃない』と言っている人がここにいたんだ!と衝撃を受けました」と本書を初めて読んだときを振り返る房野さん。

「今の日本では『企業は社会に貢献すべき』空気感があって、ありとあらゆる場所で人とものが溢れているからこそ、理念というものを重要視する時代になりましたよね」。

何を大事にし、何を追い求めていくか。それは、いつの時代も存在していたけれどおざなりにされてきたもの。それを思い出させてくれる「究極の一冊」だと房野さんは語ります。

先の見えない現代を生きる私たちを原点に立ち返らせ、指針を示してくれる『論語と算盤』。歴史を学び直すとともに、これからの時代を生き抜く術を見出すことができるかもしれません。

現代語訳 論語と算盤

¥902
発行/筑摩書房
著者/渋沢栄一

4.終わりに

これまで芸人活動の傍ら、数々の書籍や講演会、YouTube配信などを通して幅広い歴史普及活動を行ってきた房野さん。

“ただ好きなこと”であった読書は、作家として活動する現在、「執筆に必要なインプットとしての役割が大きいけれども、やっぱり学生時代から変わることのない趣味でもある」と話します。

房野さんご自身が、読者であり、作家であるからこそ持てる多角的な歴史の捉え方。本から得られる基礎知識や新たな発見、先人の知恵を吟味して「歴史の学び直し」にピッタリな5冊を選んでくれました。

どこまでも深く、面白みのある歴史に熱く向き合う房野さんの新刊読んだらきっと推したくなる!がんばった15人の徳川将軍も必読ですよ!

今だからこそ気になる本を手に取って、私たち自身が選び、伝えてきた歴史に、もう一度ふれてみませんか。

 

取材・執筆=水野史恵、有馬虹奈(エディマート)

写真=早坂直人(Y’s C Inc.

 

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