2023.04.26 Wed
『読んだらきっと推したくなる!がんばった15人の徳川将軍』 ブロードキャスト!!・房野史典さんインタビュー/歴史を彩った15人の知られざる功績と素顔に迫る
「歴史の解説本」と聞くと、よほどの歴史好きでない限り「なんだか、難しそう」と感じる人が多いかもしれません。
けれども、そんな歴史の解説本が、普段私たちが使う現代語で軽快につづられたコミカルドラマのような一冊だとしたら、とっても面白そうではないですか?
戦国武将&幕末好きの芸人、ブロードキャスト!!房野史典さんの新刊『読んだらきっと推したくなる!がんばった15人の徳川将軍(日本実業出版社)』が2023年4月18日に発売されました。本書では、江戸時代を作り上げた15人の将軍たちの生きざまと功績が徹底解説されています。
これまで数々の書籍や講演会、YouTube配信などで、多くの人々に面白おかしく歴史を伝えてきた房野さん。今回は、作家となった経緯や過去の執筆活動を振り返りながら、新刊に込めた想いを語っていただきました。
この記事のライター/水野史恵(エディマート) エディマートではディレクターとして書籍や新聞の編集・執筆業務を担当。房野さんの著書『超現代語訳 戦国時代』を読んだことをきっかけに、歴史(とくに戦国時代)に興味津々。 |
目次
1.“無類の歴史好き”から、歴史を解説する作家へ
ずっと持ち続けていた歴史への熱意
無類の歴史好き芸人として知られる房野さん。歴史に興味を持ったきっかけを尋ねると、明確には分からないものの、幼い頃から『学習まんが 日本の歴史』やゲームの『信長の野望』といった歴史に関するコンテンツによく触れていたとのこと。
「亡くなったじいちゃんが、古代から中世にかけての歴史が書かれている分厚い本を持っていたんですよ。その中の戦国時代の部分だけ、半分意味も分からず読んでいた記憶があります。当時から信長、秀吉、家康の時代が好きだったんでしょうね。幼少期、とくに小学校4・5年生の頃は、同時多発的にいろいろなものに触れて歴史にのめり込んでいたんです」。
学生時代は、さまざまなエンタメが好きで、部活に一生懸命な普通の子だったと振り返る房野さん。歴史に対し、ずっと熱を帯びていたわけではないものの「どこかに(歴史に対する熱を)ずっと持っていた」と話します。
作家活動の原点は、芸人活動がなかなか上手くいかないことを実感したある時、打開策となる何かを見つけようと、作家の山口トンボさんとキングコングの西野亮廣さんに相談をしたことだそう。話をする中で「房野は情報をかみ砕いて人に伝えるのが上手い」と言われ、他者が認める自身の特技を何かに使えるかもしれないと思ったのだとか。
「説明の上手さをアウトプットするために選んだのがFacebookでした。それまでも、ライブでは歴史について話していたのですが、『めっちゃいいけど(ライブじゃ)残らないでしょ。何かに残したら?』とアドバイスされたんです。そこで、当時勢いのあったFacebookに歴史エピソードのひとつを解釈して上げてみたらバズってしまって!それを見た出版社の方に『本にしましょう』とお声がけいただきました」と作家デビューのきっかけを語ってくれました。
自分なりの語り口で「面白い」を伝える
房野さんの著書の特長は、内容のわかりやすさと語り口。歴史上の重要な出来事・用語は太字や会話形式を駆使して説明されており、読者に語りかけるように現代語での解説が進んでいきます。
堅苦しいイメージのある歴史を面白く理解してもらおうと、とにかくかみ砕く。独自の表現スタイルで作り出す、小学生以上ならば誰でも読めるという敷居の低さも魅力のひとつです。
歴史マニアでなくても、時々クスっと笑いながら、さらっと読める。それでいて、重要な部分はしっかりと頭に残る。そんな房野さんの著書は、「彼の『戦国愛』がよくわかる」「戦国ファンが好みそうなところをしっかり押さえている」など、専門家からも好評を受けています。
著書が話題となり、執筆活動において何か心境の変化があったかどうか尋ねると、「『これ面白いよね』という自分なりの説明や解釈を、作品にして人に見てもらうってこんなに楽しいんだと思いましたね」と房野さん。
続けて、「小説家ってかっけーなと思ったことはありましたが、その2秒後には『絶対無理か』と諦めるくらいドライなやつだったんです」と笑いを誘います。無理だと思っていた夢が、いつの間にかとんでもない方面から叶うことがあるのだと、実際に作家活動を始めて過去の自分を振り返ったそうです。
2.現代ともリンクする徳川将軍の歴史
芸人だからこそできる表現が光る
4月18日に発売された新刊『読んだらきっと推したくなる!がんばった15人の徳川将軍』。
出版社からオファーを受けた房野さんは「この機会に江戸時代の歴史を深掘りしてアウトプットしてみよう!」と執筆を決意したそう。
江戸時代を作り上げた徳川将軍は15人いますが、学校の教科書に出てくる有名な将軍はその中の数名。しかし、滅多に取り上げられない将軍たちにも、驚くほど面白いエピソードや素晴らしい功績があったそうです。本書は、そんな切り口から江戸幕府と徳川将軍について面白おかしく解説されています。
「凡庸中で最も下等」? お料理が趣味、13代家定のあだ名は「イモ公方」
もちろん今回も、房野さん特有のくだけた語り口とわかりやすい表現がポイントですが、執筆で苦労した点について尋ねると「言葉の選び方」と意外な答えが。
「僕は執筆しながら都度しゃべるんですよ。書いた文章を声に出してみて、リズムを確かめる。たとえ正しい日本語ではなくても、しゃべり言葉として面白い表現は積極的に取り入れたり、ちょっと変わった位置で句読点を入れたり、面白く伝わるように工夫をしています。ですが、しゃべっているときは面白くても文章にすると面白さを感じなかったり、逆に文章だから面白さを表出できたり、表現にも向き不向きがありますよね。どんな表現で伝えるか、言葉の選び方は毎回難しいです」と話します。
さらに、「伝える情報量のバランスにも苦労しました。書籍の冒頭で入門書だと言ってしまっているので、歴史に詳しくない人に向けて『ここは解説しておきたい!』という部分が多々ありました。けれども、それだけに何ページも使えない。内容をかみ砕くほど使う言葉は増えるので、情報の取捨選択も難しいと感じました」。
執筆において、芸人としての経験が生きたかどうかと尋ねると「芸人をやっていたから書けた」という房野さん。
「芸人として、普段舞台でしゃべっている言葉を文章にしているみたいなところがあって。正しい執筆方法を習ったことがないので、プロが見たら『何だこれ!?』と思うような、ありえない位置での改行や行間の開け方があるかもしれませんね。けれども、そこは『このほうが気持ちよく読める』という自分の感覚にしたがっています」と執筆におけるこだわりを教えてくれました。
房野さんの「推し」将軍は?
ここで、新刊のサブタイトル「読んだらきっと推したくなる!」にちなんで、房野さんの「推し将軍」を尋ねてみました。
すると、「一番は家康。これは変わらないかもしれません。けれども、家康はみなさんもよく知るレジェンドクラスの将軍ですよね。家康を抜いて考えると……難しいですね(笑)」と悩む房野さん。
「今度、他のインタビューで違うことを答えていたらごめんなさい!」としっかり断りを入れてから、「今日の気分で決めるなら15代目の慶喜かな」と推しを選んでくれました。
「慶喜は、試行錯誤の末に出した決断で、周囲からとにかく嫌われてしまいます。ですが、優秀で合理的な考え方をする将軍だったんですよ。慶喜について『悪いやつだったんだろう?』『幕府を終わらせたポンコツだ』なんて思っている人ほど書籍を読んでみてほしいですね。ピックアップして書いた部分なので」。
これから書籍を読む読者に向けては、「ぜひ、現代とリンクさせながら読んでほしい」と話します。
「僕が描きたかったのは、徳川将軍たちの生きざまを通して将軍・幕府の視点から見る、江戸時代の流れ。お金・経済の問題や災害が起こったときの対処など、思ったよりも現代社会とリンクする部分があると思います。そういうものに考えを巡らせながらストーリーを楽しんでいただけたら、将軍という存在をもっと身近に感じられるのではないかと思います」と熱く語ってくれました。
¥1,595
発行/日本実業出版社
著者/房野史典
3.終わりに
今回の書籍で解説された歴史の半分ほどは、教科書には載っていない話だと話す房野さん。
学校では教えてもらえない、認知度の低い将軍たちにも、時代を作ってきたそれぞれの頑張りと功績があると熱弁する様子から、歴史への愛と尊敬が伝わってきました。
15人の将軍一人ひとりの人間味・キャラクターがわかりやすく伝わってくる房野さんの文章に触れると、『読んだらきっと推したくなる!』というサブタイトルの意味がわかりますよ。
面白くて、スルスル読めるのに、しっかり学べる歴史の解説本『読んだらきっと推したくなる!がんばった15人の徳川将軍』。
これまで、難しそうだと歴史を避けてきたあなたも、「もっと早く読んでおけばよかった」と思うかもしれません。
取材・執筆=水野史恵、有馬虹奈(エディマート)
写真=早坂直人(Y’s C Inc.)
関連記事
新着記事
人気記事
お問い合わせ
お仕事のご相談や、採用についてなど、
お気軽にお問い合わせください。