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2021.05.10 Mon
『それ、編集入ってますか?』エディマート・鬼頭英治インタビュー/コンテンツを動かし、正しく輝かせる「編集の力」を伝えたい
編集プロダクションのエディマートが、自ら出版社となり、EmoBooksをレーベル名として2021年4月28日に書籍「それ、編集入ってますか?」を刊行しました。
著者は当社の代表取締役。経営者でありながら、編集者としても現場に立つ鬼頭が、「編集」や「企業経営」についてまとめています。
表紙カバーをめくると、こう書かれています。
出版不況、働き方改革、新型コロナ、DX──あぁ、もう大変!
編プロの17年にわたる闘いから、
ニューノーマル時代の「編集」の活かし方と生き方が見えてくる!?
エディマートで編集者として働く私も、この数年は本当に「激動」だと実感しています。入社したころは情報誌の編集がほとんどでしたが、最近はWebコンテンツのディレクションもいっぱい。それらを、ワーク・ライフ・バランスを実現しながら進めているなか、新型コロナが直撃……。
たしかに本書は、地方の編集プロダクションをとりまく過去と現在、未来を教えてくれます。しかし、働き方改革、コロナ禍、DXという課題に立ち向かう姿は、多くの中小企業にも参考になるかもしれません。
そこで今回は、手前味噌ではありますが、著者である当社の鬼頭に、本書に込めた想いを聞いてみました。
¥1,540
発行/エディマート
発売/星雲社
著者/鬼頭英治
1973年、愛知県名古屋市生まれ。東京、名古屋の出版社で編集職に従事し、2003年に独立。現在は編集プロダクションの代表として制作と営業を統括しながら、自身も編集者として最前線に立つ。
この記事のライター/水野史恵(エディマート) 2018年にエディマートに入社し、編集や執筆の業務を担当。東海地方を中心とした情報誌や観光ガイド、新聞広告などのコンテンツを制作している。オンライン書店&ブックレーベルであるEmoBooksの“中の人”という仕事も。 |
目次
1.編集者と経営者、2つの視点から見えてくること
編集の仕事を知ることが、費用対効果の高いコンテンツにつながる
エディマートの出版社登録から、『それ、編集入ってますか?』の刊行までおよそ1年ですね。 私も本書の校正・校閲を担当しましたが、あらためて自分も編集者の一人として、こんなに仕事の内容が広がり、トライ&エラーで業務改革が進んでいるんだと再認識しました。 |
この本は、エディマートの社員ブログと、オウンドメディア「EDIMAG」から、自分が書いた編集や経営にまつわる記事を抜粋し、再編集したものだけど、たしかに読み返してみると、創業のころと今とでは、編集の仕事も会社自体も大きく変わったね。 |
情報誌の取材先確認のため、会社の床に返信されたFAXを並べて整理している写真が載ってましたね(笑)。 今なら、メールにPDFを添付したり、WebのURLを知らせて見てもらったり。 |
自分の世代は、DTPの走り。当時は最先端を担っているつもりだったけど、今はさらに変化してきている。 もともと編集プロダクションやそこで働く編集者は、仕事内容が見えづらかったけれど、IT化やDXでさらに分かりにくくなっているかもしれないね。 |
分かりにくい編集の仕事を、広く知ってもらうのが本書の目的ということですね。 |
ライターは原稿を書く、カメラマンは写真を撮る、デザイナーはデザインをすることは分かっても、編集者となると「?」だと思う。 発注者のオーダーや市場をふまえ、プロのクリエイターを束ねながら企画をゴールにもっていく。家づくりで例えるなら「現場監督」のような編集者の仕事を、少しでも理解してもらえたらと。 |
そのあたり、本書の「何者でなく、何者でもある。忙しくも楽しい編集者の魅力とは?」という項に凝縮されていますね。 |
編集者って本当に忙しい。でも、その忙しさの理由を体系的に理解している人は、編集者自身でも少ないと思う。 これまで、バブルを引きずっているような「忙しさに酔っている」編集者もたくさん見てきたよ。でも今は時間もお金もシビアだし、どんなプロジェクトであっても力のかけどころを考えるのが大切。 忙しさの中身を分解しないと、費用対効果の高いコンテンツは作れないんじゃないかな。 |
忙しい一方で、「この仕事は麻薬のよう」とも書いてあります。 |
ある意味、「沼」だね(笑)。 この仕事は一度知るとなかなか抜け出せない楽しさと刺激にあふれている。 ただ、長く楽しい状態でいるためにはメリハリが必要。最近は編集者のなり手が減ってきている気がしていて、それを改善するためにも、本書を通して忙しさと楽しさの理由を客観的に理解してもらえればと思ってます。 |
中小企業の闘いから垣間見える、「当たり前」を変える葛藤
エディマートは2021年5月現在、総勢14名の中小企業です。本書では、創業から今に至る改革の歴史にもふれていますね。 |
創業当時は、「師匠と弟子たち」のような関係で会社を運営してきたけれど、人数が増えてくると、少しずつ組織体制を整える必要が出てきて。 社員が家族をもったり、病気になったりすると、一律のルールではなく、一人ひとりに寄り添う制度が必要になるよね。産休・育休制度や時短勤務などなど。 さらに最近は、フレックス制度とテレワークを導入して、それぞれのライフスタイルにあわせて、いつでもどこでも仕事ができるようになった。 |
本に書かれている経歴を見ると、退職後に“お試し的”にフリーの編集者になり、仕事が増えたから法人化。編集と経営の楽しさと難しさに取り憑かれてあっという間に17年……。 会社経営ってそんなライトなものなのですか(笑)? |
起業はライトかもしれないけれど、続けるのはかんたんじゃないよ(笑)! 経営者としても赤裸々に悩みを吐露しているので、独立を考えている人にもぜひ読んでほしいです。 地道に経営を続け、いろいろなお客さんから仕事をいただくなかで、クリエイティブだけではなく、企業の質が問われるシーンも増えてきたところに、働き方改革と新型コロナ……。 |
そのあたり、中小企業の経営者の方々にとっても、参考になるのではと思いました。 |
新型コロナとDXは、多くの中小企業がそれまで曖昧にしていたことや、当たり前だと思っていたことを、大きく変えたと思う。 編集プロダクションだから、中小企業だから残業や休日出勤は当たり前、はもう通用しない。 当社のように、限られた予算のなかで福利厚生を追加したり、クラウドツールを導入したりというのは、ほとんどの中小企業で同じような葛藤があるはずなので、参考になればうれしいです。 |
海外取材中に脳梗塞になったエピソードは衝撃でした! |
これまで会社の健康診断でとくに警告もなかったのに、カンボジアでいきなり呂律が回らなくなったから、自分がいちばん驚いた(笑)! でも、こういった経営者が突然倒れるリスクは、どこの中小企業も抱えていること。自分の体験を伝えることで、みなさんの備えにつながればと。 |
2.出版不況のなか、あえて編プロが出版に挑戦した理由
下請け企業の課題のひとつ「メーカー化」を、出版で実現
編集プロダクションといえば、出版社や広告代理店、印刷会社から依頼を受けてコンテンツを作るのが一般的ですよね。 編プロであるエディマートが、下請けではなく自ら出版に挑戦したのはなぜですか? |
エディマートが出版社登録した2020年4月は、新型コロナによる第1回の緊急事態宣言が発令されたとき。 クライアント各社の動きが止まるなか、「何かしなければ」と焦ったのが正直なところだね。 |
それが出版だったと? |
クライアントの動向に左右されがちな下請けにとって、「メーカー化」はコロナ前からの課題だった。出版不況により、各出版社は中の人を減らし、コンテンツ制作のほとんどを外部委託するケースが増加したと思う。 エディマートもいろいろなジャンルの本の下請けを通して、流通をのぞけばほぼ出版社と同じソリューションが構築できていたので、メーカー化に挑戦するならまずは出版が順当だと。 |
そんなに簡単に出版社になれるのですか? |
日本図書コード管理センターに登録し、流通に必要なISBNコードを取得するまでは簡単だと思う。 問題は流通。初めて出版をする会社が、いきなり取次と契約を結ぶのはほぼ不可能だから。 |
流通のハードルはどうやってクリアしたのですか? |
いろいろ調べたところ、当社のような小規模な出版社の流通をサポートしてくれる星雲社という会社を見つけて。「発行:エディマート、発売:星雲社」とすることで、全国の書店やオンライン書店に流通することが可能に。 星雲社の方々は本当に手厚くサポートしてくれて、ありがたかったね。 |
出版不況は、イコール編集不況ではない
それでも、出版不況のなかで自らが出版社になるのはリスクがありそうです。 |
その通り。 この本は、執筆とデザインを自社で行ったのでコストは最小限に抑えられているものの、校閲と印刷を外部に委託しているし、本の流通や保管にも経費はかかる。 売れなければその分は赤字になるので、少なからずリスクはあるよね。 |
リスクを承知の上で挑戦したんですね。 |
あらゆるコンテンツがWebに流れている今、本を出版する価値は逆に高まっていると思う。 今でも、「本を作れませんか?」と聞かれることがよくあるけれど、「作れますが、流通はできません」という回答になるのが、本当にもどかしかった。 エディマートとして執筆から流通まで経験したことにより、これからは大小問わず、いろんな人の「本を出したい」という夢が叶えられるはず。 |
「あらゆるコンテンツがWebに流れている」現状は、編プロにとって脅威では? |
出版不況が、イコール編集不況と捉えられているなら大きな間違い。その誤解をとくのも、この本の大きな目的のひとつだよ。 Webのおかげで誰もがメディアをもち、情報発信できるようになったけれど、動いていなかったり、コンテンツの精度が低かったりするケースが散見されるよね。そういうのを見るにつけ、「これ、編集を入れたらもっとコンテンツがスムーズに、正しく輝くのに」と。 |
タイトルの『それ、編集入ってますか?』の由来ですね。 |
Webコンテンツはコンバージョンの最大化がミッションだから、システマチックにつくられがちだと感じることも。たしかに「見られる」コンテンツになるかもしれないけれど、「心に届く」コンテンツになるかは別問題。 コンバージョンにエモーションを注ぐのは、読みやすさにこだわってコンテンツを作ってきた編プロの腕の見せ所じゃないかな。 加えて、Webのなかには、「いつでも直せる」「間違ったら消せばいい」と思っているのか、誤植や盗用といったリテラシーの低いコンテンツも少なくない。その点、「印刷して流通したら直せない」という覚悟のもとコンテンツを作ってきた自分たちは、情報の正確性には何よりも注意をしているよね。 |
はい、入社したときからめちゃくちゃ気をつけています。 それでは「スムーズに」というのは? |
編集者はコンテンツを作るために、スケジュールを組み立て、最適なライターやカメラマンをアサインし、納品物のクオリティをチェックする。 最初に編集者のことを、家づくりで例えるなら「現場監督」と言ったけど、とくにWebコンテンツは監督不在のものや、マンパワーの問題で監督しきれていないものがまだまだ多い。そこに編集を入れることでスムーズに回るはずと、本書でも力説してます! |
3.編集プロダクションの未来を社会に示したい
編集プロダクションは死なない!
この本をきっかけに、編集プロダクションや編集者の正しい現状を知ってもらいたいですね! |
まず、「今どきの編プロは”ブラック”じゃない」と(笑)。少なくとも当社は胸を張って言える。 そして何よりも伝えたいのが、「編プロの未来は明るい」こと。ただし、未来を明るくするためには、編集の仕事、編集の力をしっかりと伝えていく必要があるね。 |
「編集が入ることでコンテンツがスムーズに、正しく輝く」と言っても、知られなければ意味がありませんね。 「EDIMAG」も、そんな編集の力をPRする役割を担っています。 |
編集の業務領域は日々変化、拡大しているので、本書の刊行後もEDIMAGを活用して発信を続けないとね。 じつは本書のタイトルは、直前まで『編集プロダクションは死なない!』が候補だったことは知ってた? |
なかなか過激ですね(笑)。 |
それぐらい覚悟をもって編プロをやっているってことかな。死なないためには、変化し続けないと! |
時代にあわせて編集者も変化し、それをきちんと発信するのが大切ということですね。 最後にひと言お願いします。 |
前職を含め四半世紀にわたり本づくりをサポートしてきたけれど、いざ自分の本を手にすると、こんなにも嬉しく、また責任感をともなうんだとあらためて感じました。 やっぱり「本」はすばらしい。この感動を一人でも多くに味わっていただくため、EmoBooksレーベルからいろいろな本を出していきたいです。 |
¥1,540
発行/エディマート
発売/星雲社
著者/鬼頭英治
写真=太田 昌宏
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