2021.07.27 Tue
『幸福を見つめるコピー完全版』(東急エージェンシー・岩崎俊一) / 日々の幸せに気づかせてくれる、温かな言葉のパレード。
「年賀状は、贈り物だと思う。」(日本郵便 年賀状キャンペーン/2007)をはじめ、多くの名キャッチコピーを残した岩崎俊一さんのコピー&エッセイ集。
「幸福になること。人は、まちがいなく、その北極星をめざしている。(中略)コピーも例外ではない、といばるつもりはないが、少なくともここをめざして書かなければいけないと、ずっと思ってきた。」
そんな著者の人柄に通じる序文から温かな言葉が詰まった一冊です。
¥1,540
発行/東急エージェンシー
著者/岩崎 俊一
この記事のライター/甚沢里絵(ライター・心を整えるノートレッスン主宰) 書くことって、楽しい。それに、自分をご機嫌にしてくれるもの。幼い頃からそう信じて、ライターになる。現在は、日記の習慣化など、心すこやかに生きるエッセンスを発信。女性のライフスタイルや暮らし方、セルフケアに関する分野を中心に、気持ちよく生きるためのコツを日々収集する。 |
1.大好きなキャッチコピーがあるのです
詩をはじめ、言葉というものが幼い頃から好きでした。
「広告」というものにキャッチコピーなるものがあると知ってからは、テレビCM、新聞、電車の中吊りポスターの中の言葉が気になって仕方がありません。ちょっとした一言に、胸が熱くなったり、痛いところを突かれたり、ハッとしたり、ワクワクしたり…。そのたびに、言葉で人の心を動かすことができるコピーライターという人はなんてすごいのだろうと、向こう側にいる書き手に思いを馳せました。コピーライターは、学生の頃からわたしの憧れでした。
本書の著者、岩崎俊一さんのコピーとの出会いは、「年賀状は、贈り物です。」という、日本郵便の年賀状キャンペーンのキャッチコピーでした。
年賀状の販売枚数が少なくなり、日本らしいお正月の伝統がなんとなくさみしさを帯びてきた頃。私は、そのテレビCMを見て、今年も年賀状を送ろうと、強く思ったのです。
いまも年の瀬が迫ってくると、このコピーを思い出します。そして、どんな年賀状を送ろうかと思います。
あのテレビCMから10年以上経つというのに、私が年賀状を続けている理由は、いまも岩崎さんのキャッチコピーです。
2.岩崎さんのキャッチコピー、いくつかご紹介します
ほかにも、岩崎さんの代名詞となるコピーはたくさんあります。選びがたいのですが、個人的な視点でいくつかご紹介します。
「やがて、いのちに変わるもの。」(2004年)
酢や納豆をはじめとする食品メーカー「ミツカングループ」のグループビジョンスローガン。
このキャッチコピーには、食の大切さ、いのちの素晴らしさを伝えるボディコピーが添えられています。人生にはさまざまな転機があり、人は多様に生きていて、その一日一日をつくるのが食べものであり、食べものはいのちをつくっている。そんなメッセージが、岩崎さんの言葉で綴られています。ちなみに、グループビジョンスローガンとは、「お客様に提供していく価値の宣言」。
そして、この言葉は「人のいのちの源である食品をつくっているという、誇りと責任」から生まれたものだと、ミツカンのホームページに記されていました。
「新しい今日がある。」(2012年)
コンビニエンスストア「セブンイレブン」でおなじみの「セブン&アイホールディングス」のブランドメッセージ。こちらにも、温かなメッセージが込められたボディコピーが添えられています。始まりはこんなふう。
「どんなことでもいい。そこに行けば、いつも必ず小さな幸せに出会える。
お店とはそういうものでなくてはいけないと、私たちは思うのです。」
ホッとひと息つきたい時のカップコーヒー、子どもがよろこぶ駄菓子コーナー、週末のごほうびにスイーツ。確かに、足を運ぶたびに小さな幸せを受け取っている。家族とのとてもささやかな思い出も一緒に思い出されて、この言葉がじんわりと心に染みてきます。
「人は、書くことと、消すことで、書いている」(2006年)
トンボ鉛筆のキャッチコピーです。ボディコピーの一節には、
「真正面から向き合い、苦しみ、迷いながら、でもなんとか前へ進もうともがいている。消す、という行為には、人間のそんなひたむきな想いがこもっている気がしてなりません。」
と深い言葉が綴られています。
広告のキャッチコピーなのだから「買ってください」という多少の押しつけや誇張がありそうなもの。でも、岩崎さんのコピーには、それを感じません。今の暮らしが幸せに満ちているということを、そっと教えてくれているような、そんなふうに感じます。
幸せであることを教えてくれた広告の主のことを、前よりも好きになっている自分がいました。だから、ちゃんと広告ですよね。
3.コピーライターになった娘さんのあとがきが、また素敵
胸を打つような言葉のほかにも、クスッと笑える一言や、見る人に問題提起する社会性の強いメッセージなど、さまざまなコピーがこの一冊には詰まっています。
最後には、岩崎さんの娘さんであり、お父さんと同じコピーライターとして活躍する岩崎亜矢さんがあとがきを書いています。親子でのテレビゲームのエピソードなど、父である岩崎さんは少年みたい。その家族の風景にもまた幸せをしみじみ感じます。娘さんがお父さんと同じコピーライターをめざした理由も綴られています。
広告って、気が付かず通り過ぎてしまうことが多いものかもしれません。けれど、目を向けないなんてもったいない。とくに、岩崎さんのコピーは、小さな幸せに気づかせてくれる深いものばかり。
大切にしたい言葉に、きっと出会えると思います。
¥1,540
発行/東急エージェンシー
著者/岩崎 俊一
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