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2022.06.13 Mon

本の紹介

名古屋市科学館の学芸員・野田学さんが選ぶ5冊の本┃プラネタリウムがより楽しくなる「天体の基礎知識や面白さを教えてくれる本」

名古屋市科学館,男性

人生で特別な5冊を紹介してもらう連載企画「5冊の本」。

今回お話を伺うのは、名古屋市科学館の学芸員である野田学さん。小学生の頃から星を見るのが大好きだったという野田さんは、20年以上にわたり、プラネタリウムの解説や天文関連の展示の企画を行ってきました

名古屋市科学館のプラネタリウムといえば、世界最大径35mドームでギネス記録を持っていることでも知られ、県内外の多くのファンに愛される同館の目玉です。

2011年の大リニューアルの際には、プロジェクトリーダーを務めた野田さん

目指したのは、あくまでも「限りなく本物に近い星空」。そして、プラネタリウムの役割について、「見終わった後、本物の星空を見上げてもらうこと」だとつよく思っています。

そうして見上げた星は、何光年も離れているところで光っていて、地上に届くのは大昔の光であること。星ごとに距離が違うこと。

たとえばそんなことを知っていればいるほど、星を見るのが楽しくなるはずで、「知識は、決して感動を邪魔するものではない」と野田さんは言います。

そこで今回は、「天体の基礎知識や面白さを教えてくれる本」をテーマとし、5冊の本を選んでもらいました。

名古屋市科学館のプラネタリウムの魅力や役割を知り、星空の魅力を伝えるために力を尽くしてきた方たちの思いにふれるとともに、星を見る楽しさや天体を学ぶことの意味についても迫ります。

取材
名古屋市科学館・学芸員
野田学

名古屋市生まれ。京都大学理学部物理学科卒、名古屋大学大学院修了、博士(理学)。研究職を経て1997年から名古屋市科学館の学芸員に。天文学や天文教育ほか科学リテラシーの普及にも尽力。


大塚亜依

この記事のライター/大塚亜依

約8年間エディマートに勤めた後、フリーのライター・編集者に。月のリズムのある暮らしに憧れ、月の満ち欠けカレンダーを5年ほど愛用。いつか、種子島へロケットの打ち上げを見に行きたいと夢見ている。

1.台本なしで50分の生解説!名古屋市科学館プラネタリウムの魅力とは

2011年3月にリニューアルオープンした名古屋市科学館のプラネタリウム。

大きな魅力は、直径35mという世界最大規模を誇るドームを備えていること。以前のプラネタリウムの直径は20m。開館当時としては東洋一の規模ではあったものの、ドームの中で見たものが実際の星空のスケール感に追いつかない感があったそうです。

「夜、外へ出て方角を確かめて空を見上げたとき、プラネタリウムの星空と同じように星を見つけてもらうために、できるだけ大きなドームが欲しかった」と野田さん。

ドームに映し出す星空についても、肉眼で見られる9,100個の恒星の正確な位置と明るさ、日々の惑星の動きや月の満ち欠けなどさまざまな天文現象を正確に再現する光学式プラネタリウムを採用することで、本物に近い星空を再現しています。

さらに、未来や過去の星空や宇宙旅行も再現できるデジタル式プラネタリウムとのハイブリッドで、地上から見上げているだけでは分からないようなことも科学的に表現

前例のない大スケールのプラネタリウムを作るにあたっては、既存の機器やシステムではとてもまかなえず、映像をはじめ照明装置や音響装置など複数の機器も含まれる一大システムが製作されることに。

そんなプラネタリウムリニューアルまでの出来事を記したノンフィクションが『星空の演出家たち 世界最大のプラネタリウム物語』です。

星空の演出家たち 世界最大のプラネタリウム物語(中日新聞社)

リニューアルがすごく大変だったので、その経験が失われないよう、形に残しておきたかった」と話す野田さん。

リニューアル計画が具体化してから完成まで、工事にかかった期間はわずか3年。日々の業務をこなしながらも、「本物に近い星空」を再現するために全力をつくすスタッフたちの怒涛の日々が綴られます。

もうひとつ、一冊の軸になっているのが、星をこよなく愛し、名古屋市科学館の歴史を紡いだ解説者たちの物語です。プラネタリウムが大きく進化する中でも変わらなかったのが、解説のスタイル。

1967年に初めて名古屋市科学館にプラネタリウムが開設された当時から、毎回50分間、台本なしの生解説が行われているのを知っていましたか?

「星空って、日々変わっていく。月ひとつとっても形や出る時間が変わったりするんです。録音された音声で話すとなると、何か月か同じ話になってしまうし、他人ごとのようになってしまう僕らとしては今日来たなら、今日の夜空を見上げてほしいという思いがあるんです」。

機械音声を用いず、生の声で解説を行う理由について野田さんはそう教えてくれます。

意識しているのは名古屋市科学館伝統の「対話式の解説」。

“声なき相手の雰囲気を察しながら、日常的な普通の言葉で語りかける。これを私たちは『解説者と見学者の対話』と呼んでいるの。”

本書に登場する野田さんの先輩でもある元解説者の北原政子さんは、新人教育に際してそう伝えます。

「解説者席に座って見渡し、年配の方が多ければ敬語中心になったり、子どもが多ければ投げかけるような言葉を使ってみたり、その場の雰囲気で口調が自然と変わってきます」と野田さん。

一度として同じ解説はなく、解説者それぞれがよい解説をするために行っている工夫や苦労が語られており、ぐいぐい引き込まれます。

ただ結局のところ、いい解説をするには、究極的には人間性を高めるしかないのだと野田さんは考えています。

「50分間、真っ暗な中で話すとなると、その人の人となりが言葉の端々に出てきます。それを聞いて信頼してもらってこの人が言うなら夜外に出てみようかな、と思ってもらうためには、話術やテクニックだけでこなそうとしても無理で、自分をさらけ出して人間性で勝負するしかない。自分を磨くしかないんです」。

プラネタリウムに使う映像についても、すべて学芸員による手作りのオリジナル。科学的に精度が高く、最新の内容を盛り込んだ映像は、テレビ局から提供を求められることもあるほどだそう。

天体に魅せられたスタッフたちが過去から現在までいかに情熱を持って宇宙と向き合い、それぞれの思いや世界をもって、その魅力を全力で伝えようとしているかが伝わってくる本書。

プラネタリウムに関わる方たちのバックヤードを知るために、ぜひ読んでみたい一冊です。

2.名古屋市科学館の礎を築き上げた人物の、味わい深い星空案内ガイド

さきほど取り上げた『星空の演出家たち 世界最大のプラネタリウム物語』の中で、折にふれ登場する人物がいます。1967年の名古屋市科学館開館時からプラネタリウムの解説者を務めてきた山田卓さん

山田卓さんとは…?

開館当時は珍しかった話し言葉により対話形式の解説をスタートさせた張本人であり、1985年には、名古屋の街の真ん中にある名古屋市科学館の屋上に当時日本一の口径65cm大望遠鏡を設置。「天文台は山奥に」という常識を覆す。

また、今では全国で行われるようになった昼間に星を見る観望会も、この大望遠鏡を生かすために山田さんが定例行事として始めるなど、今の名古屋市科学館の基盤を作り上げた人物。2004年逝去。

山田先生に育ててもらった自分やスタッフたちにとって、一言では言い表せないくらい大きな存在」と昔を振り返って懐かしそうに目を細める野田さんが次に紹介してくれたのが、そんな尊敬してやまない山田さんが、星空を見上げるお供にと著した二冊です。

『夏の星座博物館(地人書館/山田卓)』

まずは『夏の星座博物館』。てんびん座、さそり座など夏の星座の見つけ方から歴史、星の名前、伝説、見どころまで紹介した盛りだくさんの一冊です。

当館プラネタリウムの解説者たちはみんな『バイブル』と呼んでいて、なくてはならない解説のための、いわば“ネタ本”にもなっています」と野田さん。

「読まれてしまうと『あの解説の内容はここに載っているこの話だな』とバレてしまう(笑)。だからプラネタリウムの解説で聞いたあの話をもっと知りたい、と思ったときには本書を読んでもらえれば」と教えてくれました。

春、秋、冬バージョンもあり、季節ごとの星の楽しみに出会えます。

星の伝説や歴史などに添えられたチャーミングなイラストも満載の本書。星図も含め、すべて山田さん本人の手で描かれており、空に星を探す楽しみを広げてくれるとともに、その多才さに驚かされます。

なにより、どんな小さな星座についても愛情深くていねいに語られており、山田さんの「星のことがかわいくて面白くて好きで仕方がない」という気持ちがあふれ出る内容に。

読み物としても十分楽しめ、星や星座の物語を心に持つことの豊かさを教えてくれます。

夏の星座博物館

¥1,980
発行/地人書館
著者/山田卓

『肉眼・双眼鏡・小望遠鏡による 新装版ほしぞらの探訪(地人書館/山田卓

星や星座の探し方、二重星や星雲星団の見え方をやさしくわかりやすく紹介する星空のガイドブックほしぞらの探訪』も山田さんの著書。

「肉眼である程度、星を探すことができるようになり、次は小望遠鏡や双眼鏡で天体観望を始めよう、という方に読んでもらいたい」と野田さん。とくに星雲・星団については見え方を写真で示し、探しやすくするための案内図も付いています。

野田さん曰く、天体観測の方法として、最近は「電子観望」と呼ばれる方法が広まっているそうです。

電子観望とは…? 天体望遠鏡に接眼レンズを差し込む代わりに、天体用のCCDカメラやCMOSカメラを取り付けて、パソコンでリアルタイムに画像処理を行い、画面に天体の姿を映し出して楽しむ観望スタイルのこと。肉眼では見えづらい星雲や銀河の姿を簡単に、短時間で観望できるとして人気を集めている。

「星雲星団って肉眼や小望遠鏡で見るとほんとに地味なんですよね…(笑)。でも最近の技術を使いさえすれば『ええっ!』っていうくらいの鮮明さで捉えられるようになってきている。でもそんな時代だからこそ、肉眼や小さな望遠鏡で星を探す楽しみを見直してぼしい」と語ってくれた野田さん。

そして、自分で小さな望遠鏡を動かして、夢中で星を探していた若い頃のことを振り返ります。

「自分で望遠鏡を動かして、ある明るい星を視野に入れたうえで、順番で星をたどっていった先にぼやっと見える星雲がある。ガイドに従ってついに目当ての星雲や星団を捉えたときの楽しさは格別でした」。

大物でなく小さな魚でも自分で苦労して釣り上げると何とも嬉しいのと同じように、自分でとらえた天体はどんなにささやかでも親しみを感じていとおしい。

デジタル主流の今の時代だからこそ、あらためて自分の手で星や星雲、星団を探す楽しみを教えてくれる。古い本ですけれど、自力で探すということについて言えば、新しいも古いもないですから」と野田さんの言葉にも力が入ります。

山田さん独特の味わい深い語り口で、星の実際の見え方などもご自身の印象を基に書かれているのが大きな魅力ですが、あとがきには「他人の見た印象など、あまり当てにならないということだ。本書の“見え方”についての記載内容も例外ではない」という言葉が…。

自分だけの星空との対話を、思い切り自由に楽しんでほしいという山田さんからの粋なメッセージなのでしょう。

3.「天文学の黄金時代」を残すために。学問の奥行きにふれられる一冊

そもそもは、赤外線天文学の研究で博士課程を満了し、研究の道に進み始めていた野田さん。名古屋市科学館で働くようになったのは、山田さんに誘われたのがきっかけでした

「『これからの時代、プラネタリウムにも、研究をバックボーンに持った人材が必要とされる。受け売りではなく、ちゃんとした背景を持った人の言葉は、説得力が違うから』と山田先生に背中を押されまして」。

研究者の仕事にも未練はあったものの、宇宙や天文学から自分が得た感動を、自分の言葉で伝える仕事にそれ以上の魅力を感じ、プラネタリウム解説者の仕事に就いたのでした。

そんな研究者としてのバックボーンを生かして野田さんが著したのが『Dr.Nodaの宇宙料理店』です。

『Dr.Nodaの宇宙料理店(プレアデス出版/野田学)』

ニュートリノから、銀河のでき方、膨張宇宙論まで、宇宙に関する難解な用語や現象をイラストや写真を交えてやさしく解説した本書

名古屋市科学館の天文クラブの会誌に1999年から20年以上にわたって連載してきた69話を書籍化しました。

そもそもは、山田さんが「最近の宇宙や天文の話題に出てくる難しい用語を、野田君がシェフになって解説し、最後に料理にして出してしまうのはどうか」と新連載のアイデアをくれたのが始まりだったそうです。

ここ20年ほどは、天文学にとって劇的な時代なのだと野田さんは言います。

「“重力波”が見つかったり、“ブラックホール”が観測的に見えてきたり、何十年か未来の人たちが振り返ったときに、この21世紀に入ったあたりというのは『天文学の黄金時代』って言われるくらいいろんな発見があった時代ときっと思われるでしょう。その時期に連載という形でこの時代の考え方や熱のようなものも含めて記されたものがあれば、貴重でおもしろいのではないかと」。

さらに、最近の天文学というのは物理学のことが分かっていないと、理解しづらいのだと野田さんは続けます。

「たとえば『ブラックホール』が新聞記事に取り上げられていても、表面をなぞっているだけでよく分からないというのが実態。もう一歩か二歩踏み込んで、物理的な理解を深めてもらうと、本質が見えてくる。さらに知識を活用すると、同じ理屈で分かることがいくつもありますよ、ということも伝えられたら」。

重力波、宇宙の年齢、ダークマター…、用語ごとの一話読み切り型で、物理学の専門家ならではのかみ砕いた言葉が使われているものの、理解するのが難しい部分も。

でも、野田さんは言うのです。

難しいことを難しいことだからと言ってあえて教えないのは違うと思う」。

そして、高校生の時に『相対論的宇宙論―ブラックホール・宇宙・超宇宙』という本を読んだことを振り返ります。

「チンプンカンプンで、何を言っているか全然分からなかった。とはいえ、これを分かって書いている人がいるっていうだけでもすごいな、と感動して。自分もちゃんと勉強すれば、これが分かるようになるのかな、と学問の奥行きを感じました。本当の学問っていうのは、すぐに分かるものなんかじゃない。まだ分からないことが先へとずっと続いている。そんなくらくらするような部分も少しは感じてもらえたら」。

なぜ宇宙が膨張していることが分かったかということや、メートルやキロメートルという長さは実は光の速度から決められていることなど、「へえ!」という驚きがいっぱいで、知る喜びにふれながら、天文学の奥深さに浸ることができる一冊です。

Dr.Nodaの宇宙料理店

¥2,090
発行/プレアデス出版
著者/野田学

4.宇宙を学ぶ意味、そして名古屋市科学館・プラネタリウムの役割とは?

2022年4月、博物館の設置や運営について規定している「博物館法」が改正されました。

1951年の制定から約70年が経過し、博物館を取り巻く状況が大きく変化するなかで、博物館登録制度の要件が見直され、民間施設も加えられることに。そんななか、博物館、ミュージアムの役割があらためて見直されています

「古い本ではありますが…」と野田さんが最後に紹介してくれたのが、『地球と人のあいしかた 今、ミュージアムができること』です。

『地球と人のあいしかた 今、ミュージアムができること(高陵社書店/岩崎公弥子)』

本書は今を伝え、地球と人を伝えるという使命に挑み続けるミュージアムの中から、名古屋市科学館(プラネタリウム)、名古屋港水族館、東山動植物園の試みを、実践の現場からレポートしたものです。

「宇宙を学ぶとはどんなこと?」という問いかけに名古屋市科学館・プラネタリウムの学芸員が答えつつ、プラネタリウムの魅力が語られていきます。そして、科学館全体で共有しているプラネタリウムの役割として、こう記しています。

“大切なのは、プラネタリウムを見終わった後、本物の星空を見上げるということ”

「プラネタリウムに多くの人に来てもらって、そのなかから天文学者や宇宙飛行士になる人が現れるといいですね」。そんな言葉をかけられることも多いものの、決してそれがプラネタリウムの役割だとは思っていないのだと野田さんは言います。

目指しているのは、本物の夜空を見上げてもらったうえで、正しい宇宙観を持ってもらうということ

きちんとした宇宙観は、どんな職業に就いたり、どんな大人になったとしても、生きていくうえでの手助けになるはずだと信じています」。

では、正しい宇宙観とはどのようなものなのでしょうか?

「たとえば世界が狭かったりすると、いろんな軋轢があったときに自分の居場所を失ったと感じ、極端な場合は自ら命を絶ってしまうこともある。でも宇宙全体に比べて地球はどのくらい小さな星なのか、宇宙の歴史の中で考えればひとつの命がどんな存在なのか、ということを知っていれば、考え方が変わったり、気持ちが楽になることもあるはず」。

「さらに天文学では、地球中心で物事を見るときもあれば、太陽中心にして地球を一つの惑星に過ぎない存在として見る場合も。自分中心で主観的に見たり、客観的に見たりという視点の変換が必要になるゆえ、宇宙を理解することが、主体と客体を入れ替えて相手の立場に立って考えるということの訓練にもなるのではないか」。そんな考えを聞かせてくれました。

人生の中に、星や宇宙の壮大なスケールを織り込んでいくしかし、その織り込み方や模様は、人それぞれなんだと思います」。

本書に登場する学芸員の毛利勝廣さんの言葉です。私たちの生き方がそれぞれ違うように、宇宙との関わり方もそれぞれ違っていていいわけです。

そんなふうに宇宙と人を結び付けるためには、プラネタリウムを本物の星空に近づける必要があるのだと、あらためて野田さんは断言します。

「ド派手な星空ばかり映し出して感動させることは簡単だけど、外へ出て星を見てもらうためには、実際に近い空を表現することが大事。さらに科学的な話もして関心を引き、『おもしろかったからちょっと外へ出てみるか』と夜空を見上げた時、星の数は少なくても名前と顔が一致したりして、『あれがプラネタリウムで出てきた星だ、何光年も離れているんだよな』というふうに宇宙に対する興味を持ってほしい。そのために、われわれがいるんです」。

地球と人のあいしかた 今、ミュージアムができること

¥1,650
発行/高陵社書店
著者/岩崎公弥子

5.終わりに

小学校の頃から星空に魅せられ、天文学を学んで研究を行い、長年学芸員として天体や宇宙の魅力を伝え続けてきた野田さん。最後に天文学の魅力について尋ねてみると、こんなふうに答えてくれました。

「宇宙と地球は分かれているわけではなく、われわれは宇宙の中で生きている。宇宙にビッグバンが起こって膨張していって、気が遠くなるような現象の積み重ねの中で自分がここにいる。自分自身を知ろうと思ったら、結局、天体とか宇宙のことを知っていないと、最終的な理解は得られないような気がするんです」。

つまり、天文学の魅力とは、学ぶことで自分自身を知れるということ

そして、なぜ自分が今ここにいるのか、ということの答えを探せるということ

そして、プラネタリウムが、天体や宇宙のことを知るワクワクするような入り口であってほしいと野田さんはいつも考えています。

「現在においては宇宙のさまざまなことが研究によって解明されてきています。ただそれが一般の方まで伝わっていなかったりするので、宇宙が膨張しているとかちゃんと年齢もあるとか、そんなサイエンスと結びつくようなことも、プラネタリウムで伝えていけたら外へ出て出会う本物の星空も、知識をもって見上げるとまたまた違った様相になるはずですから」。

空の星を見上げてきれいだな、とロマンを感じるのは素敵なことです。でも目で見て分かること以上の天文学の知識を持つことで、星空を眺めることがさらに楽しく、奥深いものになる。

そして自分が果てしない宇宙の中で生きている一人なのだという実感は、私たちの人生の手助けをしてくれるはずなのです。

プラネタリウムや天体観測を楽しみたい。そう思い立ったなら、まずはぜひ今回ご紹介した5冊の本を手に取ってみてください。まだ見ぬ新しい自分にも、出会えるかもしれません。

動画で見る『名古屋市科学館の学芸員・野田学さん』インタビュー

写真・動画=HIGTINSKY/取材協力=名古屋市科学館

 

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AI OTSUKA

この記事の執筆者AI OTSUKAライター・編集者

和歌山生まれ、おもに名古屋育ち。名古屋大学在学中、地理学を専攻してフィールドワークを学び、各地で「高齢者の余暇活動」をテーマに調査研究。生涯を通じて余暇を楽しむことの大切さ、人に話を聞いて文章で伝えることの面白さを実感し、編集の道へ。東京の編集プロダクションなどで約6年間、おもにタウン誌の制作に携わる。その後、名古屋へ戻り約8年間、エディマートに勤務。30代までの仕事に燃えた日々は一生の財産! 出産を経て、フリーのライター・編集者として再スタート。仕事と子育てと家事、家族と過ごす時間とひとり時間。ほどよいバランスを見つけようと試行錯誤の日々。

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