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2022.08.26 Fri

伝え方・働き方

「結果的に長く続けられたのは、バンドでやるライブが本当に好きだったから」自分で決めた選択を突き詰めるための原動力とは/SCOOBIE DO・コヤマシュウ

アーティストや専門家、研究者などさまざまな分野の“人生の先輩”のキャリアを紐解き、自分らしく働くためのヒントをお届けする本企画。

今回お話を伺うのは、4人組ファンクロックバンドSCOOBIE DO」のボーカルを務めるコヤマシュウさん

1995年のバンド結成から27年、そしてメジャーデビューから20周年。メジャーデビュー以来、メンバーが入れ替わることなくずっと歩み続けています

4人それぞれがSCOOBIE DOであり、4人だからこそ成り立っているバンドであると、強く語るコヤマさん。

メジャーデビュー20周年を迎えた今、これまでのキャリアを振り返りながら、さらに今後の未来に向けての想いについて、伺いました。

取材
SCOOBIE DO
コヤマ シュウ

幼なじみであるマツキタイジロウと共に、1995年にSCOOBIE DOを結成し、ボーカルを担当。2022年8月24日に デビュー20周年記念オリジナル・アルバム『Tough Layer』をリリース(HPTwitter


大熊智子

この記事のライター/大熊智子

広告制作会社・代理店勤務を経て、フリーランスのライターに。気づけばあっという間に10余年。いつの間にか会社員歴より長くなっていてびっくり!しかしながら、未だ振り返る余裕はなし。前を向くのみ。

幼少期〜SCOOBIE DO結成に至るまで

1975年生まれのコヤマさん。1番最初に好きになった音楽は?の問いかけに、『およげ!たいやきくん』と即答。当時『ひらけ!ポンキッキ』で流れていたこの曲を気に入り、毎日流れる度に熱心に聞いていたと、母の話で知ったとのこと。

「自分自身の記憶としてうっすら残っているのが、沢田研二さんの『勝手にしやがれ』ですね。曲中に帽子を投げるパフォーマンスがあるんですが、そのマネを頻繁にしてたそうです。小学生になった頃は、ベストテンとか音楽番組が全盛期でした。今でもよく覚えているのが、寺尾聰さんの『ルビーの指環』。まだ低学年だったけど、子ども心にあの渋さにやられましたね」と振り返ります。

その後、中学生になると、音楽好きの兄の影響でさまざまな音楽に触れるようになり、「自分はこんな音楽が好きなんだ!」と初めて自覚をしたのが、坂本龍一の『戦場のメリークリスマス』だったそうです。

そんなコヤマさんがバンドの音楽をあらためて聴くようになったのは、とあるバンドとの衝撃的な出会いがきっかけだったと言います。

「自分の兄とギターのマツキくんが音楽の趣味が合うからと一緒に出かけるようになって。ある時、川崎のクラブチッタで開催された『モッズ・メーデー』から帰ってきた2人が「カッコいいバンドがいたんだよね」って話していました。モッズって、いわゆる60年代にイギリスで流行った音楽文化なんですけど、それを90年代に日本のアンダーグラウンドシーンでやってる人たちがいたんですよね。そのイベントに出演していた『ザ・ヘア』もそのひとつ。初めてその音源を聞いたとき“あ、すごいカッコいい!”と、衝撃が走りましたね」。

運命的となった「ザ・ヘア」との出合い。

これを境に、コヤマさんは今のSCOOBIE DOに繋がるブラックミュージックを聴くように。さらに大学生となり、マツキさんからの誘いを受け、SCOOBIE DO結成に至るのでした。

「やる」と決めたことをやっていたら、27年経っていた

1995年のバンド結成から27年、メジャーデビューから20年という時間は、決して短くはありません。20周年までの道のりを振り返ってみてどのように感じるのか?率直な感想を求めたところ、コヤマさんの答えは「もう、振り返らなくなっていますね」のひと言。

「2015年に結成20周年ライブを日比谷の野音(日比谷野外音楽堂)でやったんですよ。僕の中では、そこで一区切りのような感覚があって。それまでは、あんなこともあった・こんなこともあったって振り返ることもあったんですが、結成20周年が過ぎてたらはあまり振り返ることはなくなりましたね」と話します。

振り返らず前向きにバンド活動を楽しんでいるコヤマさんに、長く活動を続けられている理由を聞くと、何が起きてもぶれない芯があることが伺えました。

「初めから継続を目標としていたわけではないので、『○○年間はやってみよう!』とか『やり続けよう!』という強い意志はなく、やりたいことをやっているだけ。あえて言うなら、好きなことをずっとやっていただけなんです。マツキくんに誘われてバンドを始めたわけなんですけど、やるんだったら『すごくカッコいいバンドをやりたい』って思ったんです。カッコいいことをやると決めたら、やっぱりちゃんとやらなくちゃダメだな、と」。

続けて、「音楽で生計を立てるとか、CDを何枚売りたいとかでなく、自分がやると決めたことにきちんと向き合う自分の全てを捧げて向き合えなければ、カッコいいことなんて出来ない」とコヤマさん。

そんな強い覚悟を持ちながらも、結果的に長く続けられたのは「本当に好きなことだから」だと、真っ直ぐな視線を投げかけながら話します。

「大学生のころ、1995年の秋に、初めてライブをやったんですよ。そのステージに立った時“これだ!”と、思ったんです。自分自身がすごく自由になったような感覚ですかね。ずっと自分が探していたものを見つけた、これこそが“本物だ!”と強く思いました。このときに感じた高揚感が、今でもライブをやる度に蘇るんですよね」。

コヤマさんはもちろん、他の3人のメンバーも“ライブがやりたくてバンドをやっている”という価値観が一致しているからこそ、今の4人でずっと続けられていると言い切ります。

やりたいことこそ、妥協せずに好きにやる

メジャーデビューからメンバーが変わることなく続いてきたSCOOBIE DO。一見、順風満帆にここまでやって来られたようにも見えますが、変化を伴うターニングポイントもあったそうです。そのひとつが、2006年7月の「CHAMP RECORDS」の立ち上げです

「CHAMP RECORDS」は、SCOOBIE DOの音源を制作・販売する完全自主制作レーベルで、メンバーの4人のみで運営されています

「2006年にレコード会社と所属していた事務所との契約が切れて、メンバー4人だけになったんです。これからどうしようか?となったときに、誰一人バンドを辞めると言い出さなかった4人とも、契約が切れたくらいで辞めるわけないという気持ちでした」とコヤマさん。

とは言え、今後の活動方針を考えなくてはなりませんでした。

「これから先どうやって活動していくのかを話し合う中で、メンバーだけでやってみるのも面白いかもしれないと思ったんです。ちょうどその頃、セルフマネジメントを始める先輩ミュージシャンの方が増えていて、思い思い自由に活動されている姿に感化される部分もありました」とレーベルの立ち上げの経緯を話してくれました。

メンバー4人で共有して、4人が本当にやりたいことを続けていくために立ち上げた「CHAMP RECORDS」。設立にあたり、コヤマさんが大切にしたのは、これまで以上に“本当にやりたいこと”を突き詰めていくということ

「何となく『こんな感じでいいかな?』とやっていると絶対につまらなくなってしまう。好きなことだからこそ妥協しない。好きなことを好きなようにやっていくことが大事なんだ」と話します。

“本当にやりたいこと”を見失わないように

それでも仕事でもある以上、やりたいことだけをやっていられるわけじゃない。そんな時、いつも心の中にあるのは「本当にやりたいことは何か?」という自問だと言います。

「結局、僕はバンドでライブがやりたいんです。今までもこれからもバンド以外にやりたいことが全然ない。本当にバンドしかなかったから、ここまで続けられているのかもしれませんね」。

コヤマさんの場合は、やりたいこと=ライブであるからこそ、ライブをするために必要な仕事かどうかが判断の基準であるという話も。

「レーベルでの仕事は、ライブほどの充実感がある仕事ばかりではありません。けれど、本当にやりたいことをやるためには必要な仕事ですからね」とコヤマさん。やりたいことが明確だからこそ、仕事における取捨選択も困難ではないのでしょう。

リアリティを反映しつつも、伝えたいのは「それでも、生きていく」ということ

1995年の結成時からずっと、バンドでやる音楽に真摯に向き合ってきたコヤマさん。

2022年8月24日リリースのデビュー20周年記念アルバム『Tough Layer(タフレイヤー)』は、コロナ禍に制作されたこともあり、すごくビターなテイストやシリアスなムードが感じられるそう。実は、コロナ以前に制作された楽曲もあったけれど、それは全てボツにして、改めて制作。より時代との呼吸やリアリティを感じられる10曲がそろったと話します。

「僕はボーカルですが、その曲の言葉の意味だけを伝えたいわけじゃない。歌詞は『SCOOBIE DO』の一部でしかないんです。歌詞だけにスポットを当てるんじゃなくて、メンバー4人が演奏している全体を感じて欲しいですかね。シリアスなムードの曲であっても、悲しいだけじゃ絶対に終わらせない。辛い悲しい想いとか、憤りとか、そういうのを全部ひっくるめてぶっとばしてこうぜ!って気持ちがいつもあるんです。たとえ、どんなに静かに優しく響く曲であっても、僕の中には必ずありますね」と、コヤマさんは力強く語ります。

言葉で訴えかけているわけではないけど、SCOOBIE DOが全ての楽曲の中に込めているものは、SCOOBIE DOだからこそ表現できるブルース感。ブラックミュージックの焼き直しではなく「それでも、生きていく」という強い想い

「このアルバムの曲を、僕が一人で弾き語りをしたら、きっと違ったムードの曲になってしまうんです。同じコードで同じメロディでも一人だと寂しい感じが出てしまうかもしれません。SCOOBIE DOの音楽は、4人でバンドでやるからこその音楽なんです」。

そんな強い想いを込めつつも、アルバムを手にとってくれた人、楽曲に興味を持ってくれた人には、自由に聞いて欲しいと話します。

「音源を聴いて好きだなとか、カッコいいなとか思ったなら、ぜひライブに足を運んで欲しいですね。ライブには、その場所・その瞬間にしか見られない・共有できない、そこでしか味わうことができないものもある。きっと、もっとすごいことが起こるはず。僕たちもそれを楽しみにライブしてますからね」。

続けて、「SCOOBIE DOにとって、ライブは本当に好きで今までもこれからも大切にしていきたいもの。だからこそ、状況やタイミングを鑑みつつ、これからもずっと続けていきます。皆さんも、自分にとっての良いタイミングで足を運んでくれたらうれしいです」。

終わりに

好きなことにまっすぐに向き合い続けることは、きっと楽しいことばかりではないはず。それでも、決して目をそらすことなく、追い続けてきたコヤマさん。

やる・やらないの選択は、本当にやりたいことをするために必要かどうか、というシンプルなもの。

これはどんな仕事においても重要な指針になるのではないでしょうか

ライブの充足感について生き生きとした姿で話すコヤマさんを見ていると、外部環境が変わりやすい時代であっても、自分の好きなことややりたいことを決して無下にしてはいけないと実感。自分も「好き」を原動力に、もっと仕事を楽しもうと思うばかりでした。

 

SCOOBIE DO 最新情報

デビュー20周年記念シングル『明日は手の中に』

メンバーそれぞれがひたむきに音楽と向き合い続けてきたSCOOBIE DO。本Music Videoはデビュー20周年を記念して、過去のMusic Video25作品の内容やセットをオマージュし、ミニチュアで再現したアニバーサリーに相応しい内容になっている。

動画で見る『SCOOBIE DO・コヤマシュウさん』インタビュー

写真・動画=太田昌宏(スタジオアッシュ

 

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SATOKO OKUMA

この記事の執筆者SATOKO OKUMAライター

大学で社会心理学・メディア論を専攻し、広告に興味を持つようになる。制作会社・広告代理店の制作ディレクターを経て、2009年よりフリーランスのライターとして活動中。激務で体調を崩したことから、薬膳や食養生を学ぶ。「食を通じて、すこやかになる」をテーマに、料理教室や植物療法に関するワークショップも開催している。

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