2019.09.11 Wed
対談記事の書き方を教えます。インタビューとは大違い。正しい企画の立て方から。
エディマート代表の鬼頭です。
当社では創業間もない頃から新聞社とのお付き合いが始まり、今でも広告局制作のさまざまな企画を手掛けています。新聞の企画のなかで、インタビューと同じぐらい多いのが「対談記事」です。よくあるのが、企業の経営者×著名人、自治体の首長×業界団体トップなど。今回は、少なく見積もっても100本は対談記事を手がけてきた私が、対談を滞りなく進行し、より良い記事に仕上げるためのコツを紹介します。インタビューとは異なる、対談記事ならではのノウハウがありますので、ぜひ最後までお読みくださいね。
目次
1.対談前までにやっておくこと
対談記事の成否は、事前準備にかかっているといっても過言ではありません。インタビューの場合の事前準備は、質問案を作成して媒体社やインタビューイーに共有しておいたり、カメラマンに撮影内容を共有したりする程度で済むことが多いですが、対談記事の場合は主役の2者にバランスよく話していただきながら、読者に趣旨を伝える必要があります。そのため事前に、構成案(プロット)とともに、台本をつくっておくケースがほとんどです。
趣旨をもとに対談の構成案を作成
対談記事にはそれぞれ目的があるはずです。よくあるのが、「新サービスや施設の完成をアナウンスする」「就任の想いを伝える」「会社のブランド力を上げる」などでしょうか。構成案(プロット)作成にあたっては、これら目的が果たされることが“必要にして十分”。足りていないのはNGですが、余計な情報を盛り込みすぎるのもいけません。
新聞の対談記事の場合は、下記の流れで構成案を作ることが多いです。
構成案の作り方
- 構成案Aパターン…多くの対談にあてはまる構成
[過去を振り返る]→[現在を語る]→[未来を見据える]
両者にこれまでの経緯をふりかえってもらった上で、現状(強みや特色など)を語り合い、最後に今後どうしていきたいか想いを聞く、という流れです。 - 構成案Bパターン…伝えたい内容が多い場合に適した構成
[プロローグ]→[伝えたいこと①]→[伝えたいこと②…]→[エピローグ]
対談によっては伝えたいことが複数ある場合も。そういうときは、いきなり伝えたいことに入るのではなく、前段で全体をくくるプロローグ(動機、経緯など)を挿入。その後、伝えたいことをまとめていき、最後にエピローグ(期待する効果、今後の展望など)を入れてしめくくる、という流れです。
想定質問を作りゲストに確認
構成案ができたら、それぞれの話のフックとなる質問を作っていきましょう。例えば、道路の開通を伝える対談で構成案Aを採用するならば、
想定質問の作り方
- 過去を振り返る質問例
「まずはこれまでを振り返りながら、開通の日を迎えた想いをお聞かせください」
- 現在を語る質問例
「今回の開通による整備効果、数値目標をお聞かせください」
- 未来を見据える質問例
「次の道路整備における重点エリアや、今後の課題があればお聞かせください」
など。インタビュー記事の場合は、質問を投げかけたまま当日を迎えることもありますが、対談記事では、2者それぞれがどのような回答をするか事前にすり合わせておき、対談当日に回答がバッティングしないように注意します。
あらかじめ台本(予定稿)を作成しておく
対談する2者(多くの場合はその事務方)から、想定質問に対する回答が届いたら、それをもとに台本(予定稿)を作成します。対談までに時間がない場合は、想定質問+回答のリストをまとめておくだけのこともあります。もし対談に登場するのがVIPなら、時間の有無を問わず台本を作成しておいたほうが良いでしょう。
台本は、対談記事に関わる多くの人の安心材料になりますし、収録後のスピーディな初校アップにもつながります。原稿をオーダーするライターにお願いしても良いと思いますが、当社の場合は編集者が台本まで準備することがほとんど。対談の趣旨を深く理解している人が、ここまでの準備をするべきだと私は考えます。
2.対談当日の編集者の役割
さて、事前準備をぬかりなく行えましたか?先ほど「対談記事の成否は、事前準備にかかっている」と書きましたが、まだ油断してはいけません。対談当日にも編集者がするべき仕事はあります。
ゲストの話の強弱をチェック
おそらく多くの対談は、みなさんが準備した構成案や台本に沿って進行することでしょう。しかし事前準備は、対談に登場する「本人」ではなく「事務方」を相手に、メールや電話のやり取りで進めることも少なくありません。だからこそ、対談当日は登場する本人の表情や、話の力点に注目してください。
構成案や台本はあくまでも「素材」です。過信することなく、本番の様子に応じて追加や割愛、ブラッシュアップをして原稿を仕上げなければなりません。
必要により当日のファシリテーターも
対談当日は、媒体社側が立てた司会者が、構成案や台本をもとに質問を投げかけます。地方局のアナウンサーやプロの司会者、新聞社の場合は主筆や論説委員、局長クラスがファシリテーターを務めると思います。
対談記事の経験が多い編集者の場合、ファシリテーターを任されることもあるかもしれません。私もこれまで、多くの対談でファシリテーターを務めさせていただきました。適切なタイミングで質問を投げかけ、ときに想定にはない質問を投げかけたり、時間にあわせて質問をカットしたりと、相応のむずかしさがありますので、詳しくはまた別の機会にまとめさせていただきますね。
対談を撮影する際におさえておくべきこと
対談のファシリテーター、ライターも別でいる場合、編集者は撮影ディレクションを行うことがほとんどだと思います(あわせてゲストの話の強弱をチェックすることは忘れずに)。以下に対談記事の撮影で必須な項目を挙げておきます。
対談記事で撮影する写真
- 対談中の登壇者
身振り手振りを交えた様子を、左右両方向から
- 対談中の2者をまとめて
逆八の字に向けたイスに座って2者を、まとめて1カットで
- 必要に応じて手元などのアップ
スタイリッシュな対談では、こういったクローズアップカットも
- 記念写真
企画で使用しなくても、必須の撮影カットです
それぞれの撮影内容にも注意点がありますので、詳細はこちらも後日エディマグにアップしますね。
なお「記念撮影」は、企画に使わなくても撮っておくことをおすすめします。対談終了後に主役の2名揃っての記念撮影を撮影するほか、場合によってはファシリテーターをまじえた3名で、周りにいる事務方なども含めた大勢で、ということも。著名人との対談の場合は、記念撮影を数パターン行うこともあるでしょう。
初めて対談を行う企業の場合、記念撮影に気づかないこともあると思うので、「よろしければ記念に皆さんで写真を撮影されませんか」と声をかけるのも、編集者の腕の見せどころです。
3.対談後の記事の仕上げ方
入念な事前準備から対談を終えホッとするのも束の間、いよいよ記事の仕上げに入ります。対談終了後に媒体社やライターとともに、仕上げ方の打ち合わせをしておくと間違いがありません。構成案や台本があるからといって、対談後の打ち合わせなしで取り掛かると、「あとで大直し」ということもありますので、当日を終え、早く“お疲れ様の一杯”を飲みたい気持ちは分かりますが、しっかりとすり合わせをしておきましょう。
台本があっても文字起こしは必須
対談中に録音した音声データは、文字起こしをしておきましょう。台本通り、脱線することなく進行したならば、当日のメモのみで文字起こしは必要ありません。しかし多くの場合は、当日ならではの話、補足などが出てきたはずです。
クライアントから「文字起こしデータも納品してほしい」と言われることもあるので、文字起こしは面倒くさがらずに!
あいづちは入れなくても伝わる
特に新聞に言えることですが、冗長な表現は嫌われます。登壇者のAさんが話した後に、Bさんが「そうですね」と言ったとしても、次の話題が同調する内容であれば、あえて「そうですね」と文字にしなくても伝わります。
また、ファシリテーターの「──最初に、あらためてこの日を迎えた想いをお聞かせください」は、文字数に限りがあるならば「──まずこの日を迎えた想いを。」でも済みます。このあたりは、企画の体裁にあわせてアレンジしましょう。
話者のバランスは5:5を目指す
冒頭に書きましたが、対談記事の場合は登場する2者にバランスよく話していただくことが大切です。これは事前の構成案や台本、対談当日のファシリテーターの腕にもかかりますが、片方が多く話すケースもあることでしょう。
美しいのは、2者が5:5のバランスで話すことですが、4:6ぐらいなら許されます。3:7以上の差が出てくるようなら、事前の台本には入れていたものの当日割愛された話題を足すなど、媒体社や事務方と相談しながらバランスを取ってみるのも一案です。
ファクトチェックは大切!
対談記事には、数字や日付、人物名、歴史的な事実など、いろいろなデータが出てくるかもしれません。本人が自信をもって発言したとしても、思い違いがあるかもしれまんので、ファクトチェックは必須です。複数の目でチェックし、場合によってはプロの校閲者を入れて、事実関係の確認は行いましょう。
当社もこのファクトチェックを重ねることにより、「しっかり見てくれている編集プロダクション」と評価いただいています。
4.最後に大切なこと
いかがでしたか?ここまで来れば、あとは媒体社や事務方による複数回の確認を経て、対談記事は手離れしていくことでしょう。
一方で、対談記事に費やすカロリーの高さにびっくりされたかもしれません。事実、対談記事を「おまかせ」で作ることができる編集者、編集プロダクションは限られており、だからこそ弊社も高い頻度でお声がけいただいている状況です。
ぜひ皆さんも、インタビューとは異なる対談記事ならではのノウハウを身につけ、編集できる企画の幅を広げてみてください。
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