2019.09.28 Sat
新聞デザインの基本。入稿ルールと写真のレタッチで気をつけたい3つのこと
前回は新聞デザインの基本として、段の概念やレイアウトについてまとめました。今回はその続きとして、適切な写真のレタッチと入稿方法を説明します。掲載日の真夜中から早朝にかけて毎日印刷される新聞は、掲載日の間際に校了し、そのあとすぐに入稿するタイトなスケジュールを組んでいます。また高速印刷に適した独特の写真レタッチ技術も必要。この記事ではその方法を解説していきます。
目次
1.新聞用の写真は明るめにレタッチ(補正)しよう
写真のレタッチの基本は明るめ
入稿前の準備として欠かせない写真のレタッチは、Photoshopなどのソフトを使って色の補正や不要物の除去といった加工作業を行います。新聞の紙質はインキがのりにくく、日刊という特性からインクを乾かす時間もスピーディー。そのため使用できるインキ量を制限するなど独自のルールがいくつか存在します。新聞に掲載する写真の補正はこの3点に注意しましょう!
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総インキ量に気をつけよう
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新聞紙の地色を考慮して、明るめにレタッチ
- 黒や濃色のベタ使いは限定的に
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肌の色みはマゼンタとイエローのバランスが大事
総インキ量に気をつけよう
印刷はCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色で表現します。Illustrator上では各色100%ずつを組み合わせてさまざまな色を表現しますが、実際は乾燥やにじみを避けるため、印刷する紙によって適切な基準が設定されています。 新聞の総インキ量は各新聞社で異なりますが、おおむね240〜250%程度。雑誌などの書籍や広告では300%を超える総インキ量で印刷ができるため、レタッチ後の印象はかなり変わります。まずはPhotoshop上の設定から。
Photoshopカラー設定→CMYK内の「カスタム」をクリック→色分解オプションを、新聞社ごとに設定された数値に合わせる
次に情報パネルの右上からパネルオプションを選択→第1色情報、第2色情報をそれぞれ「インキの総使用量」「CMYKカラー」に設定
これで総インキ量が確認できます!例えば下のフリー画像でいちばん濃くなりそうなポイント(左下の人物)をクリックすると、インキ量は設定した240%より多くなりません。
新聞紙の地色を考慮して、明るめにレタッチ
ご存知のとおり、新聞の紙は真っ白ではありません。これはすでにベースカラーが敷いてあるのと同じこと。新聞写真のレタッチはこのことを念頭に置いて、思っているより明るめに仕上げるのが正解です。
注意しておきたいのはクライアントへ原稿の確認をするとき。原稿の校正は、通常のコピー用紙に印刷して確認をする場合が多いと思いますが、その場合、実際の掲載原稿よりも鮮やかな仕上がりになることがほとんどです。新聞に初めて出稿するクライアントであればなおさら、掲載前に色みについて一言添えたほうがトラブルにつながりにくいかもしれませんね。
黒や濃色のベタ使いは限定的に
通常、新聞紙面で黒ベタを敷くことはめったにありません。インキが乾かずに対向面に色移りしてしまったり、紙質が薄いため裏写りする恐れがあるからです。対向面に別の広告が入る場合に至っては使用NGとなります。掲載例としては高級車や化粧品、ファッションブランドなど上質感をアピールする広告や、夜を演出したいときでしょうか。
エディマートでは毎年夏に東山動物園で開催する「ナイトズー」の紙面を担当していますが、この企画では夜の雰囲気を出すため濃色を背景に使います。 インキのにじみで文字がつぶれないように太めのフォントを使ったり、文字色は濃色に映える白や黄色を使いました。使用は限定的にし、余裕があれば対向面を確認したほうが良さそうですね。
肌の色に気をつけよう
新聞では浅い色(薄い色)がきれいに表現できます。そのときに特に気をつけたいのが肌の色。黄色人種の場合、肌のいちばん明るい部分が、M(マゼンタ)とY(イエロー)のインキ差が2%ほどが理想です。少量のインクで表現できるため、C(シアン)やK(ブラック)が多くのっていると顔色が悪く見えてしまいます。この2色をなるべく少なめに調整すると、きれいな顔色に仕上がります。
下記のフリー画像では、スポイトツールを使って鼻の頭をいちばん明るい場所としました。Mが14%でYが12%なので理想的なインキ量です。
2. 新聞広告のスケジュールと入稿方法について
各新聞社にデータを持ち込んで入稿する
写真のレタッチが終わり、広告原稿が校了したら入稿準備を進めましょう。新聞広告では掲載日の前々日から前日に校了する場合が多く、その後、数時間以内に入稿することがほとんど。データは新聞の広告割付などを決める、広告整理部といわれる部署へ入稿します。入稿方法は各新聞社によって異なるため、手順を確認しながらがおすすめです。詳しくは下記の記事をチェック!
エディマートがよくお世話になっている中日新聞を例に挙げると、データが入ったCD-Rと、原寸の出力見本を前述の整理部へ持ち込むのが基本です。企画によっては別の制作会社へ入稿したり、営業担当者にメールで送る場合もあります。
入稿形式はPDFが基本
最近は各印刷会社と同じくほとんどの新聞社がPDF入稿に対応しています。PDF入稿のメリットとしては、制作ソフトが自由なことや入稿データのサイズが小さいため作業時間の短縮につながること、データ自体が安定するなどさまざまあります。
私個人としては、イラレデータのアウトライン化や総インキ量などの注意点のチェックが、手元のPCで事前に検証できることが最大のメリットと感じています。 手順は入稿用のPDFをAdobe Acrobatで開き、専用のプリフライトチェック行うだけ。入稿に適してない項目があれば、エラーが情報が出てきます。以前eps形式で入稿していたときは事前チェックの漏れが原因で再度入稿することもしばしば…。そういったケアレスミスが大幅に減るため、選べるならPDF入稿をオススメします!
3.最後に
新聞広告は紙質や印刷行程の関係上、入稿時にはさまざまな制限がありますが、新聞紙の質も以前に比べて向上しており、クリアな表現ができるようになっています。特徴を理解した上で、適切なレタッチで表現ができるといいですね。
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