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2020.06.17 Wed

伝え方・働き方

モデルのギャラや使用期間はちゃんと知ってる?今さら聞けないモデル事務所のリアルトーク [後編]

おいしい料理やスイーツ、絶景、温泉、テーマパーク、体験…。さまざまな写真を組み合わせて作る誌面を、さらに華やかに彩るのが、モデルの存在。

前編では、モデルの出演依頼をする際に伝えるべきことや、「コンポジ」と呼ばれるモデル資料を見極める方法を知ることで、自分の想像とマッチするモデルを選ぶためのコツを学ぶことができました。

\ 前編 も 要チェック /この記事を読む

後編では、今さら聞けないギャランティの仕組みのほか、モデル写真の使用をめぐるトラブルなど現場のリアルな話もお届け。「人を取り扱う」仕事だからこそ、忘れてはいけない注意事項やポイントを紹介します。

モデルとはどんな職業で、私たち編集・ライターの仕事とどのようにかかわる存在なのか。モデル業界への理解を深めることで、より良い誌面作りにも繋がるはずですよ!

今回お話を聞いたのは… 

名古屋のモデル・タレント事務所「ジオット」。

企業広告やCM、雑誌などさまざまな媒体で活躍するモデルが約70名在籍。制作部門も併せ持ち、自社モデルを起用したウェブサイトやプロモーションビデオなどの企画提案も手がける。2019年にはキッズ部門を新たに設け、幼児(3才〜)からシニアまで幅広いキャスティングへの対応が可能に。

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1.モデルを依頼する立場として知っておきたいこと

ギャランティを左右する要因の一つは「競合」

モデル事務所とかかわる上で知っておきたいんですが、モデルのギャランティの相場ってどのくらいなんですか?


恒川

小林さん

ん~、企画の内容や使用期間によって全然違いますね。

小林伸(こばやし・しん)/マネージャー。1985年6月2日生まれ、愛知県岡崎市出身。入社14年目。専門学校時代に学んだアパレル業界の基礎知識が役に立つと思い、入社を決意。 東海地方にとどまらないネットワークをもち、きめ細かなマネジメントと、さまざまな案件に対応可能な幅広いキャスティングが強み。

では、金額に大きな差が出るとしたら、どんなところですか?


恒川

小林さん

広告の場合は、競合他社の広告に同じモデルが出ないように、縛りをかけることがあります。「競合排除」なんて言ったりするんですけどね。これが金額面でも大きな違いになるかな。

「競合」とは?

同じ業界やジャンルのメーカーや企業、同カテゴリの製品を指す。例えば、A社の「●●コーヒー」のCMに起用された場合、B社の「△△珈琲」やC社の「coffee ××」などの広告には出演しない、またはA社以外で【飲料】全般を取り扱う企業の広告には出演しない、という縛りがかけられる。契約期間中は、SNSなどで無意識に競合他社の製品を使わないようにするなど、プライベートでの配慮が必要になることも

確かに…。違うメーカーなのに同じ人物が起用されていたら、消費者から見れば紛らわしいですし、商品や企業を宣伝する広告として成り立たないですね。


恒川

小林さん

ただ、予算があまりないという場合には無理に縛りをかけませんし、実際のところ最近ではほとんど縛りをかけないというのが実情です。そもそも、競合他社が起用した子を、あえて使いたいと思う企業は少ないですからね。1年間を通して、名前も顔も出すイメージキャラクターのような仕事であれば、話は別ですが…。

ん~それもそうかも…。


恒川

松井さん

場合によって、単純に金額だけの問題だけじゃなく、その仕事をしたことによる影響も重視していますね。知名度やイメージ、モデルのキャリアにプラスになるかどうか。

松井佳美(まつい・よしみ)/マネージャー。1988年9月17日生まれ、岐阜県出身。入社8年目。ジオットでのインターンシップを経て入社。新人の頃から現在まで、中高生モデルや新人の発掘、育成を担当している。

人気の商品やサービスであればイメージアップに繋がりますし、有名企業であれば認知度も高くなりますよね。ちなみに、ガイドブックなどの情報誌の場合はどうでしょう?グルメスポットでの食事シーンの撮影だったり、観光スポットを満喫している様子だったり、シチュエーションの設定があることも多いですよね。


恒川

松井さん

金額面の違いと言うと、強いて言うなら、編集記事とタイアップ記事の違いですかね。


小林さん

タイアップ記事はもちろん同じく広告扱いになりますね。

なるほど。広告の場合は、ギャランティも上がるということですね。企業のPRにかかわる以上、競合や契約期間など、管理する部分も多くなりますもんね。


恒川

モデルの使用期間を設けるのは半永久的な保証ができないから

企業の広告だと、モデルの使用期間は最長で何年ですか?


恒川

小林さん

媒体や企画によってさまざまですが、基本はリリースから1年間です。お客様との話し合いによって、3年などの長期の契約でOKする場合もあります。

ということは、契約した使用期間を超えて「そのまま継続したい」と希望をされた場合は、追加で使用料契約料が必要になりますよね?


恒川

松井さん

はい、必要です。たまに、使用期間を無期限にしたい、つまり買い取りたいという問い合わせもありますよ。

ええ!?そんなことできませんよね!?


恒川

小林さん

もちろん、そのような希望はお断りしています。予算の都合で追加使用料を払えなかったり、看板を建物に取り付けてしまったので外せなかったり、ということもあるとは思います。お気持ちはよくわかるんですが、基本的に半永久的にそのモデルを管理できる保証ができないんですよ。なので、買い取りは絶対にお断りしていますね。

なるほど…。継続して使用したい場合はどんな手続きをする必要がありますか?


恒川

小林さん

1年契約だとしたら、遅くとも1ヶ月前までに話し合い、条件を提示した上で更新するのかどうか決めます。更新料についても、そのときに話し合います。

話し合ってお互いが納得してから、ということですね。それって、情報誌などでモデルが入った写真を流用したい場合も同じですか?


恒川


松井さん

そうですね。ただ、雑誌の場合は怖いのが、校了直前や校了後にご連絡をいただくことですね…!(笑)。モデルの写真を流用することになったとき、使用できるかどうかの確認をされずに校了間際まで進めてしまうと、実はかなり危ないんですよ。


小林さん

実際にそれでトラブルに発展したことがありました。「これで載せます」といって、モデル写真を流用した誌面が送られてきたんですけど…

まさか…!!


恒川

小林さん

…確認したら、もうジオットの所属ではなくなったモデルだったんです。

ひえ~~~~!…と、いうことは…。


恒川

小林さん

当然、そのモデルの著作権の管理をする義務も権利も僕らにはないので、使用の許可も出せないんですよ。なので結局、校了直前に写真を差し替えることになって。

前もって確認しておけば、別のモデルさんでゆっくり撮り直す余裕もあったでしょうね…。


恒川

松井さん

そうなんです。今所属しているモデルが、半永久的にジオットに所属し続けるという保証はないです。1年後、すでにモデルを引退してしまっていたら?あるいは、他の事務所に移籍してしまっていたら? これらは十分にあり得る話です。


小林さん

確認を取らずに進めてしまうと、校了後の請求連絡の段階でさえストップかけなきゃいけないことになってしまうので、本当に気を付けてください…!

モデルはそれぞれの得意分野で戦っている!


松井さん

事前に必ず、モデル事務所に伝えてほしいのが特殊事項。例えば、水着・浴衣などを着る、飲酒シーンがある、高所などで撮影がある、という場合ですね。モデルによって「できる」、「できない」が分かれるので、ご提案するモデルを検討する大切な要素なんです。

なるほど。未成年であれば飲酒のシーンは当然NGですし、高い所が苦手な方もいますよね。


恒川

松井さん

それだけではなく、モデルの中でもファッション系が得意な子もいれば、ウォーキング、トーク、演技と、得意な分野は千差万別です。案件に応じてモデル一人ひとりに合った分野を加味してご提案しているので、そういった意味でも、特殊な内容は事前にしっかり伝えて欲しいですね。


小林さん

さらに具体的に言うと、とある子は企業広告系の仕事が多かったり、 また別の子はファッションやビューティーの仕事が多かったり…というように得意な業界が分かれている場合もあります。

分かる気がします。前者は親しみやすくて素朴なイメージですが、後者は目鼻立ちのはっきりした個性的な女性という印象がありますね。どういうジャンルに向いているかを見抜くのは、マネージャーさんの役割ですか?


恒川

女性 広告


小林さん

そうですね。面接の時点でそういった話もします。本人がファッションの仕事がしたいと言っても、もっと向いている分野があると思ったら、「やりたい仕事と、できる仕事は違うよ」と説明したり。


松井さん

最初にある程度、どんな分野で頑張っていくかを決めて、転換していくこともあります。もちろん、さまざまな仕事を経験していくうちに、これもできるんだ!という発見もありますよ。できる仕事が増えていくのは良いことですからね。

2.「モデル」という存在を改めて理解しよう

モデル事務所がスカウトにこだわる理由とは?


小林さん

ちなみに、モデルはどうやって事務所に所属が決まるか知っていますか?

あ、そういえば知らないです…てっきり、オーディションか何かだと思ってました。


恒川

小林さん

実は、ほとんどがスカウトなんですよ。

あぁ! よく芸能人が「スカウトされた」って言っていますけど、本当にスカウトってあるんですね…! でも、スカウトって条例とか厳しいイメージがあるんですが、できるものなんですか?


恒川

松井さん

日本モデルエージェンシー協会に加盟しているので、スカウトするときは会員証を見せることになっています。大学や高校の入学シーズンや夏休みなど長期休暇の時期はもちろん、ほぼ毎日、名古屋駅や栄周辺でよくスカウトをしていますよ!

でも、スカウトにこだわる理由はあるんですか?素人的な考えだと、オーディションをして、モデル志望の子を集めてから選んだ方が手っ取り早いような気もしますが…。


恒川

小林さん

今のご時世、インターネットで調べるまでもなくSNSだけでも十分に情報がありふれているじゃないですか?モデルになりたいと思ったら、簡単にモデル事務所は探せるし、それこそオーディションの情報も出てくる。なので、モデル事務所としては、モデルになる素質のある子を早いうちから見つけて、育てていきたいという思いがあるんですよね。

なるほど…先手必勝ですね。結果的に所属が決まったら、まずはレッスンを通して育てていくことになるわけですね。


恒川

松井さん

そうです!基本的にはウォーキング、ポージング、演技。あとは、話し方やマナー、メイクレッスンなどもありますね。

そういったレッスンのなかで、例えば「東海ウォーカー」「まっぷる」などのガイドブックや情報誌の撮影のときに活きるスキルってなんですかね?


恒川

小林さん

ポージングのレッスンというのが、要するにカメラのレッスン。カメラに撮られる練習をします。洋服を着るときのポージングは教えますが、それ以外はもう自己表現の場なので、まずはカメラに慣れさせる。「カメラの前で堂々とする」ということをさせます。

根本的なことですけど、すごく難しいことですよね…。だって普通、緊張しちゃいますよ(笑)。


恒川

松井さん

あとは、情報誌だと食事シーンや体験シーンが多いので、演技のスキルも必要ですね。与えらえたシチュエーションにスッと入るという訓練をしているので、例えば「楽しそうに」と言われれば、表情をすぐに作れるように

シチュエーション ポーズ

それが、現場での応用力に繋がっていくわけですね! 撮影もスムーズに進みますし、すごく助かりますね。


恒川

SNS時代にモデルが取り組もうとしていること

最近は、インスタグラマーやユーチューバーなどのインフルエンサーがメディアに登場する機会もグッと増えましたよね。正直なところ、モデルさんにとっては脅威ではないでしょうか…?


恒川

松井さん

そうですね~。事務所に入っていなくても、InstagramやYouTube、TikTokなど自分を発信するツールはありふれている時代ですからね。

SNSアイコン

影響力や発信力のある人が求められているという印象ですが、モデルさんもそういった部分に関して何か取り組まれていますか?


恒川

小林さん

ジオットにもSNSに力を入れているモデルがいますが、まだまだ少数ですね。もっと力を入れて取り組まないと…と常々思っています。上手に使えば、宣材写真以上にモデルの個性や魅力が伝わるツールだと思うんですよ。


松井さん

東京のモデル事務所の多くは、新人でも必ずインスタグラムをやらせていると聞きますから、ジオットのモデルもどんどん取り組んでいきたいですね。

名古屋のモデルってどんなイメージ?

そもそも東京のモデル名古屋のモデルって、もしかして全然違うんですか…?


恒川

小林さん

基本的にはほぼ変わらないですが、地域性需要によって、モデルの系統は変わってきますよね。名古屋は全体的に、企業広告の需要が高いので、企業の看板娘のような活躍が求められるモデルが多いわけです。

企業が広告に使いたいと思うような、クリーンなイメージ…分かりやすく例えるなら、カルピスやシーブリーズなどのCMガールといったところでしょうか。


恒川
例えば… アサヒ飲料「カルピスウォーター」 
カルピス CM
清純派の新人女性タレントの登竜門として名高いCM。歴代のCMキャラクターは長澤まさみ、川島海荷、能年玲奈など。

資生堂「シーブリーズ」 

主に高校生など10代の新人タレントが出演する、青春をテーマにしたCM。歴代のCMキャラクターは堀北真希、北乃きい、広瀬すずなど。


小林さん

そうです! 要するに、透明感があってイメージアップに繋がる、印象的なモデルですね。

名古屋に限らず、地方は基本的に同じですか?


恒川

松井さん

そうですね。というのも、やはりファッションの最先端は東京ですから、コレクションモデルのような個性的なモデルは、東京のほうが活躍の場が広がるんですよね。

なるほど! だからこそ地方のモデルは、駅構内にあるポスターだったり、CM、看板…普段目にする色々なところで活躍しているということになるわけですね。


恒川

松井さん

それに加えて、名古屋は立地的に東京にも大阪にも北陸にも行きやすいという利点もありますよね。地元の身近な仕事ばかりをするのではなく、さまざまな地域で仕事の経験をしている子が多い、というのも特徴の一つです。

県内にとどまらない仕事をさせることで、成長につながっていると。


恒川

松井さん

そうなんです。例えば、同じキャリア1年目の子でも、名古屋の子と大阪の子では成長速度が違うというか…。実際に、名古屋の子は使いやすいという声もよく聞きますね。

そうなんですか…!?名古屋モデル、すごい(笑)。私たちのように取材やインタビューをするライターもそうですが、結局は現場での場数をふむことが一番のレッスンということですね。


恒川
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3.終わりに

プロのモデルをどうやって発注したらいいのか」その疑問一つから、モデルという仕事はどんな存在で、私たちの仕事とどのように結びついているのか?というところまで深く学ぶことができました。誌面を華やかにしてくれるだけでなく、自分の理想とする制作物を作るために、決して妥協できない大切な要素の一つであることを改めて認識できたのではないでしょうか。

私自身、このインタビューの数日後に、ジオットさんでモデルさんの依頼をさせていただきました!ロケ地の特徴や服装の季節感、自分の中にあるイメージを伝えることを意識してみましたよ。おかげさまで、ガイドブックはとても素敵な誌面に仕上げることができました。

まだモデル発注をしたことがない新人の編集者や、ウェブ制作会社、広告代理店に勤務する方々なども応用できるポイントが詰まった内容になりました!ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

写真:渡邊秀男(ジオット)

 

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MIZUKI TSUNEKAWA

この記事の執筆者MIZUKI TSUNEKAWAクリエイティブ・ディレクター

愛知淑徳大学在学中にエディマートにアルバイト入社し、2019年4月に新卒入社。大学ではメディア制作を専門に学びながら、韓国語の習得に勤しむ。2年次の夏季休暇中にはソウル市内の語学堂へ3週間の研修、3年次には大邱広域市の大学へ交換留学を経験。帰国後に報告書やレポートをまとめたものが冊子として形になり、自分が見聞きしたものを人に伝える楽しさ、難しさを知ったことから編集の世界に興味が芽生える。韓国アイドルと特撮とF1とバンドが好き。エディマートで一番の高身長。

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