2021.02.05 Fri
江戸時代の「かわいい絵画」に癒される│『かわいい江戸の絵画史』(エクスナレッジ・金子信久)
『かわいい江戸の絵画史』は2020年4月にエクスナレッジから発刊された、江戸時代の「かわいい絵画史」を紐解く一冊。
数多くの個性的な画家が活躍し、新しい美術が花開いた江戸時代。描かれた絵画の中には、現代にも通づる「かわいい」表現があったのです。ゆるかわいい子犬やユーモラスな虎、なぜかかわいいおじさん……。「かわいい」表現にもさまざまな手法があり、十人十色の作品が生まれてきました。
『かわいい江戸の絵画史』では、そんな無限の可能性を秘めた「かわいい」を独自に極めた7人の画家たちを紹介。
江戸時代の絵画史にまつわる基礎知識をはじめ、有名画家の作品や美術ファンにはおなじみの作品など多数掲載。作品の紹介だけでなく、なぜ「かわいい」のかを中心に、表現や手法などの観点から作品を掘り下げています。
眺めるだけでも楽しめる「かわいい絵画」に、ほっこり癒されてみませんか?
¥1,980
発行/エクスナレッジ
著者/金子信久
目次
1.江戸時代の絵画の特徴とは?代表的な狩野派・琳派・浮世絵について解説します
世界の美術史を見ていくとロマン主義や印象派など、表現の手法や画風によって画家が分類されています。江戸時代には日本の画家たちも絵画の描き方でいくつかの派閥に分けられていました。
その中でもとくに有名な「狩野派」「琳派」「浮世絵」を例に、江戸時代の絵画の特徴を解説していきます。
狩野派とは?
室町時代から江戸時代にかけておよそ400年にも渡って続いた日本絵画史上最大の画派。狩野派と聞いて「金の屏風」や「障壁画」を思い浮かべる人も少なくないでしょう。
室町幕府の御用絵師である狩野正信を始祖とし、織田信長、豊臣秀吉、徳川将軍などその時代の権力者に仕えた狩野派。長きにわたり御殿や寺院の障壁画をはじめ、さまざまなジャンルの絵画を手掛ける画家集団として日本美術界に多大な影響を及ぼしてきました。
狩野派の代表絵師としては以下の人物が挙げられます。
- 狩野正信
- 狩野元信
- 狩野永徳
- 狩野探幽
- 伊藤若冲
琳派とは?
桃山時代後期から近代まで工芸や書などの装飾芸術で活躍した画派。多くの流派は基本的に師から弟子へと技術が継承されることがほとんどですが、琳派では尊敬する師の作品を手本として個人で学び、継承されていく「私淑」が特徴のひとつです。
本阿弥光悦と俵屋宗達を始祖として琳派の美術が永く繁栄した背景には、才能のある人が自由に習得できた歴史があるのです。
琳派の代表絵師として以下の人物が挙げられます。
- 本阿弥光悦
- 俵屋宗達
- 尾形光琳
- 尾形乾山
- 酒井抱一
- 中村芳中
浮世絵とは?
江戸時代に成立した絵画様式のひとつ。「浮世」とは「憂世」が由来しており、江戸の世を謳歌しようと浮かれて暮らすことを好んだ人々が「浮世」の字を当てたとされています。
庶民層の生活や流行、遊女や役者などをテーマにした絵画を中心に盛り上がりをみせました。浮世絵の表現技法は主に「肉筆画」と「木版画」の2種類で、菱川師宣の肉筆画に始まり、鈴木春信らによる錦絵の技法によって大きく発展していきました。
浮世絵の代表絵師として以下の人物が挙げられます。
- 菱川師宣
- 鳥居清長
- 喜多川歌麿
- 葛飾北斎
- 東洲斎写楽
- 歌川国芳
2.『かわいい江戸の絵画史』の有名絵師たちの作品をちょこっと紹介!
昔の日本画と聞くと、墨で描くような渋いイメージを思い浮かべる人も多いはず。江戸時代の「かわいい絵画」とは、一体何なのでしょうか。『かわいい江戸の絵画史』の中身をちょっとだけ覗いてみましょう。
俵屋宗達/水墨のやわらかいタッチで、「ゆるかわいい」を表現
俵屋宗達は江戸時代初期に京都で活躍した画家のひとり。しかし、生没年不詳でその生涯は現在でも謎に包まれたままです。本阿弥光悦の引き立てにより絵師として名を成し名画を数多く創出した宗達は、日本の美術界に新たな潮流を生み出した功績が高く評価されています。
代表作としては、当時脇役とされていた風神雷神を二曲一双屏風のメインとした国宝『風神雷神図屏風』が有名。主題、技法ともに従来の伝統にとらわれない画期的な名画として高く評価されています。
そのほかに、金箔地が華やかな『舞楽図屏』や“たらし込み技法”を用いた水墨画『蓮池水禽図』など数々の作品を残しています。
宗達の作品のひとつである『犬図』は、『かわいい江戸の絵画史』で紹介されています。濃密な水墨画はカチッとした印象にもなりますが、やわらかで丸みのある「やまと絵」のタッチを取り入れた独自の技法で表現。子犬のぽよっとしたかわいらしい造形に癒されますよ。
与謝蕪村/細かな人物の動きや表情に、「かわいい」魅力が溢れる!
与謝蕪村は松尾芭蕉や小林一茶と並ぶ、江戸俳諧の巨匠のひとり。俳人として知られる蕪村ですが、画家としても活躍し、日本に「文人画」というジャンルを確立した人物としても知られています。
雪の降る静かな夜景を描いた代表作『夜色楼台図』は、冬の夜に家の灯りを見つけて心がほっこりするような、不思議と温もりを感じる作品。やわらかなタッチと軽やかな線で描かれる蕪村の絵画は、中国画と俳諧に通じる“感性豊かな画風”が特徴です。
『かわいい江戸の絵画史』で紹介される蕪村の自画賛は、踊りに夢中な人々が表情豊かに描かれたユーモア溢れる作品。見れば見るほど愛らしく、人間味あふれる蕪村の絵画は、昔も今も人の心を惹きつけます。
3.江戸の絵画ってこんなにおもしろい!『かわいい江戸の絵画史』でお気に入りの作品に出合えるかも
いまや世界の共通言語ともいわれる「かわいい(Kawaii)」をキーワードに、江戸の絵画史の入り口に導いてくれた本書。視点を変えて作品を鑑賞することで、ユニークでかわいらしい一面に気づき、日本絵画の新しい楽しみ方ができますね。
『かわいい江戸の絵画史』で、日本人のかわいい文化のルーツを学び、お気に入りの「かわいい」をぜひ探してみてください。
1962年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。福島県立博物館学芸員などを経て府中市美術館学芸員。専門は江戸時代絵画史。主な著書に『ねこと国芳』『かわいい江戸絵画』などがある。
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発行/エクスナレッジ
著者/金子信久
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