2021.06.07 Mon
200文字のインタビューでも「テープおこし」をしたほうがいいの?/ヒヨコ編集者の質問・ニワトリ編集長の回答[第1回]
“メディアを問わず何でもおまかせあれ!”という敏腕の編集者でも、若かりし頃は何も分からず、ピヨピヨとヒヨコのように鳴いていたはず。みんな悩んで大きくなったのです。
ワタクシ、編集者生活25年、編プロ社長歴17年。自分の若い頃の悩みは記憶の彼方にあるものの、社員から投げかけられた疑問や質問は不思議と覚えています。
このコラムの登場人物は、ヒヨコだった社員たちと、エディマートの編集長とも言えるワタクシ=ニワトリ。かつてヒヨコたちから挙がった「?」に対する、ニワトリ編集長のアンサーを公開することで、編集者がふだん向き合っている仕事や悩み、当社のポリシーなどが伝われば幸いです。
第1回のヒヨコ編集者の質問は、短文に対するテープおこしの必要性について、です。
1.そもそもテープおこしは時間がかかる!
さあ、先輩から預かったテープおこし、がんばるぞ〜! |
なるほど。まずは、そこから説明しようか! |
「テープおこし」とは、インタビューの際に録音した音源を文字におこすこと。ちなみにICレコーダーが普及するまではMD(ミニディスク)、それ以前はマイクロカセットテープに録音していました。そのため今でも「テープおこし」と呼ばれています。
さて、ヒヨコ編集者は大きな案件を動かせないため、「テープおこし」の仕事を回されることが少なくありません。録音された先輩編集者のインタビューを聞くことで、勉強にもなりますからね。
しかし、他人の発言を聞いて、覚えて、書き起こして、また聞いて……という作業は想像以上にハード。作業に慣れていくと、録音時間の3〜4倍で文字おこしができるようになりますが、最初のころは15分の録音データを1日がかりで文字おこしすることも……。
テープおこしが人並みにできるようになると、ヒヨコ編集者も小規模のインタビューを任されるようになります。数本の小規模インタビューをこなした頃でしょうか、今回の記事タイトルのような質問がよく投げかけられます。
2.テープをおこさずインタビュー原稿は書ける?
編集長! インタビューが無事に終わりました。 |
おつかれさま! |
正直なところニワトリ編集長レベルなら、500文字ぐらいまであればインタビューメモでも原稿は書けます。念のため、インタビュー中は録音をしますし、執筆しながら必要に応じて要所を聞き直すことはしますが。
インタビュー原稿はしゃべった内容をそのまま伝えるのではなく、読者のためにわかりやすく整理をして伝えることが必要です。もちろん、悪意のある切り取りや、真意の捻じ曲げはいけませんよ。
編集者としてのキャリアをある程度積むと、インタビューをしながら頭のなかで内容を整理し、発言のポイントは何か、どのように構成すべきかを組み立てられるようになります。そのレベルに達したなら、今回質問された200文字の原稿であればテープおこしは要りません!
しかしそんなこと、ヒヨコ編集者には無理難題。だって、インタビュー中は質問の投げかけに精一杯ですからね。テープおこしをして、発言の内容を俯瞰することで、ようやく伝えるべきポイントや原稿の流れが見えてくるんです。
3.コストパフォーマンスは見なければいけない
でも納期も迫っていますし、制作費も限られていますよね。 |
ほぉ、採算性を考えるのはいいことだね。 |
お金の話もしておきましょうか。
たとえば200文字のインタビュー原稿の制作費が、取材費を含めて10,000円、ヒヨコ編集者の人時生産性(1人が1時間当たりにあげる粗利益の目標値)を仮に4,000円/時とします。
30分の取材、前後移動で1時間、原稿執筆に1時間とすると、合計で2.5時間。この時点で予算の10,000円に達します。テープおこしをすれば、その時間分が赤字ですね。
エディマートではこのようなケースに遭遇したら、担当がヒヨコ編集者であれば、成長のために赤字であってもテープおこしはさせます。
しかしベテラン編集者であればさせません(ただし原稿内容については、インタビューイーに目を通していただきます)。
もしクライアントが当社のベテラン編集者を指定されるなら、ギャランティの相談をさせていただくと思います。
なお、仕事によっては、インタビュー原稿とともに録音の文字おこしデータの提出が必要なこともあります。テープおこしはそれなりにコストがかかる業務なので、ニワトリになるためにはそのことも頭に入れておきたいですね。
よくわかりました! |
よし、がんばりたまえ! |
- ヒヨコ編集者は文章ボリュームを問わずテープおこしをすべし
- テープおこしをすることで、要点や構成が見えてくる
- テープおこしはサービスではない。コストがかかることを肝に命じよ
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