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2021.12.03 Fri

伝え方・働き方

「愛情を注ぎ、コンテンツを育てる」THE BAKE MAGAGINEが生み出した、自社メディアの付加価値とは/株式会社BAKE

イラスト

東京都港区に本社を置く、製菓の製造・販売会社の株式会社BAKE。

焼き立てチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」をはじめ、バターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」や、焼きたてカスタードアップルパイ専門店「RINGO」など、10のスイーツブランドを展開。

日本のみならず海外にも多くの店舗を展開し、国内外あわせて120もの店舗が存在しています。

BAKEの強みの一つが、ハイクオリティなクリエイションを用いた、多角的なアプローチ

ECサイトやスマートフォンアプリ、SNSなど活用し、デジタルの側面からも自社ブランドの魅力を発信するなど、製菓業界において先進的な取り組みを行ってきました。

その一つがBAKEが運営するオウンドメディア「THE BAKE MAGAZINE」です。

2015年にいち早くオウンドメディアを立ち上げたBAKEが、どのようにしてオウンドメディアを活用し、どんな成果を上げてきたのか。

2021 年 7 月のコーポレート・アイデンティティ(CI)刷新にあわせて、11月にリニューアルされた「THE BAKE MAGAZINE」の今後について、株式会社BAKEのコーポレートコミュニケーション室・真鍋順子室長にお伺いしました。

取材
株式会社BAKE コーポレートコミュニケーション室 室長
真鍋順子

証券営業を経験した後、留学しマーケティングを専攻。帰国後はIR支援会社でIRコンサルティング、IT関連企業で約12年間PR・IR業務を主幹。2019年6月株式会社BAKEに入社する。2020年7月より「THE BAKE MAGAZINE」を主幹。(HPTwitter


水野史恵

この記事のライター/水野史恵

エディマグの運営担当として、オウンドメディアの知見を深めるために、業界問わずさまざまなメディアについて勉強中。BAKEのスイーツの中でとくにお気に入りなのは、PRESS BUTTER SAND。

1.製菓業界の“普通”にとらわれないブランドづくり

美味しさ+αの価値を生み出すためのメディア


水野史恵

はじめまして!

さまざまな業界のオウンドメディアのリサーチをしていた中で「THE BAKE MAGAZINE」に出会いました。

サイトデザインや掲載写真のクオリティの高さに惹かれ、そのまま記事を読み進めたところ、自社のPRだけにとどまらず、製菓業界全体の課題解決のために他社を巻き込んだコンテンツを制作していることに気づいたのです。

そこで、どのようにしてどんな思いでメディアを制作されているのか、非常に興味深いと感じたため、今回取材を依頼させていただいた次第です。

まずは、御社がどんな会社であるのか、教えていただけますでしょうか。

はい。株式会社BAKEは2013年に創業したスイーツメーカーです。

1ブランド1プロダクトを基本に、ブランドごとの個性を追求。現在は10のブランドを国内外あわせて120店舗で展開しています。


真鍋さん

BAKEの商品BAKEで製造・販売されている商品各種。ブランドごとにHPやSNSが存在する


水野史恵

「BAKE CHEESE TART」や「PRESS BUTTER SAND」の店舗にたくさんのお客さんが訪れているのを見たことがあります!

いずれも味が美味しいのはもちろんのこと、商品や店舗のビジュアルやデザインが美しい印象があります

ありがとうございます。

弊社は創業当時から「おいしさの次にデザインが大事」という考えのもと、味はもちろん、五感で楽しめるブランディングにこだわりを持って運営をしてきました

焼きたての商品を提供する工房一体型の店舗やパッケージデザイン、webサイトなどあらゆる手法を通じて、各ブランドの世界観を伝えています。インハウスのデザイナーやディレクターが十数名在籍しているのも、弊社の特徴の一つかと思います。

それらはすべて、“美味しさ +α の価値”を、つくる・見せる・届ける・伝えるため。

その手段の一つが、「THE BAKE MAGAZINEになりますね。


真鍋さん

BAKEのオウンドメディア「THE BAKE MAGAZINE」


水野史恵

「THE BAKE MAGAZINE」はスタートから今年で7年目になりますよね。

当初はどういった目的で開設されたメディアだったのでしょうか。

開設当時は企業認知度の向上や採用を目的に、自社のニュースや社内スタッフのインタビューなどを中心に純度高く発信していました。

制作体制としては、社内に編集部をおき専任担当を配置。影響力のある編集長をおいて、一気にメディアとしての認知を高めていきました。

その後2017年に、経営体制変更のタイミングで「THE BAKE MAGAZINE」をリニューアル。新商品や出店情報などのほか、IT ツールといったトレンド情報も発信するよう変化していきました。


真鍋さん

水野史恵

会社の事業フェーズにあわせて、発信する内容も変化していったということでしょうか

そうですね。とくに2017年は経営体制が変わったことで、自社メディアの在り方を見直す時期でもありました。

オウンドメディアにかける費用や得られる収益などを考えた上で、記事内容を検討する必要があったのです。

その後、2019年にはコンセプトの再定義を実施しました。その経緯についてはこちらの記事で紹介していますのでよろしければご覧ください。自社のオウンドメディアの役割について再検討し、自分たちが発信すべきことを明確にしました

これを機に、自社のニュース限らずスイーツや食の進化に繋がるトピック、インタビューなど、発信する記事の内容にも変化がありました。


真鍋さん

水野史恵

オウンドメディアを運営する上での重要なポイントと言われる目標設定について、節目で精査をされているということですよね

改善を重ねた上で、運用を続けているということは、メディア運営者にとっても参考にしたいポイントかと思います。

現在は真鍋さんが主幹となり、オウンドメディアの運営をされていると伺いました。運営においてどんなことを大切にしているか、教えていただけますか。

事業環境の変化や経営体制刷新を受けて、今年7月にCIを一新し、会社のミッション・ビジョン・バリューを改定しました。新しいCIでは、組織やコーポレートブランディングの強化を図ることを目的とし、BAKEが社会の中で在りたい姿や存在意義を明文化しています。

それに伴い、11月末にオウンドメディアもリニューアルを実施。新たに“「おいしいは、しあわせにBAKE(バケ)る」というタグラインを設定し、「THE BAKE MAGAZINE」の記事を通じて、BAKEの想いや考え方を社内・社外ともに理解してもらうことを目標に掲げています。

その理解のために大切になるのが共感というキーワードです。弊社の想いに共感してもらえないとファンになっていただけません。

社内外問わず一人でも多くの方の共感を呼びファンになっていただけるよう、丁寧な記事づくりを意識しています。


真鍋さん

2.オウンドメディアの在り方とは

人間のイラスト

社内への発信もオウンドメディアにおける重要な要素の一つ


水野史恵

オウンドメディアの運営において、運営層とほかの社員とでメディアに対する思い入れや興味の差が生じてしまうといった問題が考えられるかと思います。

先ほど共感を大切にされているとのお話がありましたが、自社メディアにおいて、社内スタッフにどのようにして共感してもらうのか。そのために意識していることや気を付けていることはありますか?

特別なことは何もしていません。記事を公開した際に社内告知をするくらいです。

なぜ、その程度の共有で問題ないかというと、「THE BAKE MAGAZINE」は長年運営をされていることもあり、社内のスタッフに浸透したメディアに育ったと実感しています。

おそらく、社内のスタッフもメディアの重要性をしっかり認識できていると思います。


真鍋さん

水野史恵

メディアを大切に思う文化が醸成されているからこそ、最低限の情報共有で済んでいるということですね。

御社が社外だけでなく社内にも丁寧に発信を続けており、それらが社員一人ひとりにしっかりと伝わっている。

発信の手段の一つであるオウンドメディアについては、社外だけでなく、社内に対しての発信にも有効であることが表れていますね。

「THE BAKE MAGAZINE」が、これだけ社内へ浸透している最大の理由は何だと思われますか?

「THE BAKE MAGAZINE」が弊社にとって社史のような役割を果たしていることでしょうか。会社の想いや新しい取り組みを深堀りした記事は、新入社員にとって自社を知るために必要なコンテンツになっています。

また、会社として変わらず大切にしてきた考え方を伝え続けていくためにも、「THE BAKE MAGAZINE」の記事にその考えをのせるようにしています。


真鍋さん

水野史恵

オウンドメディアが社内コミュニケーションの一端を担っているということですね。

そのようにして自社メディアに新しい価値を見出している点は、私どもにとっても非常に参考になります。

会社としてステークホルダーを大切にすることは、共通認識であると思います。そのステークホルダーには自社の社員が含まれていることを、常に認識しておくことが重要ではないでしょうか

お客様や取引先の方と同じく大切な存在である社員に対して、きちんと情報発信を行っていく。私たちとしても「THE BAKE MAGAZINE 」がその役割をしっかり担っていかなければと思っています。


真鍋さん

“良い記事”をしっかりと定義して発信する


水野史恵

真鍋さんは前職でも広報やメディア運用といった業務を担当されていらっしゃったのですよね。

前職で運用されていたメディアと「THE BAKE MAGAZINE 」とでは、どんな違いがありましたか?

これまで私が担当してきたメディアは主に採用を目的としていましたが、「THE BAKE MAGAZINE 」は他社のインタビューから自社商品の話題まで扱う記事の幅が広く、読者もさまざまですね。

「THE BAKE MAGAZINE 」の記事のPV数は、一般のオウンドメディア同様、公開直後に伸び、徐々にシュリンクしていくことが多いです。そんな中、誕生5周年を記念した自社ブランドRINGOを深堀りした記事は、公開から時間が経っても一定のPVを維持しています

いわゆる自社のPR記事であっても、記事のつくり方次第でしっかりファンに届く内容にできるんだという好事例になりました。

真鍋さん

ブランド誕生5周年を記念した「RINGO」の特集記事


水野史恵

単なる広告ではなく、オウンドメディアならではの効果が得られた良い事例ですね!

一方で、オウンドメディアの価値はPV数だけで測れないとも言われていますよね。御社としてはどのように考えられていますか?

弊社でもKPIとしてPV数は明確に設定をしていません。

しかし、記事を読んでもらわなければ始まらない。その点では、読んでもらえる良い記事=読者に伝わる記事であるという考えは持っていますね。


真鍋さん

水野史恵

読者の反応があることや先ほどのRINGOの事例のように、長く読まれることが御社にとっての良い記事の定義に当てはまるということでしょうか?

そうですね。

数値に表れにくい部分はもちろんあるとは思いますが、読んでもらえていることが一番わかりやすい読者からの反応でもあると思っています。

だからこそ、自己満足ではなくきちんと読まれる記事をつくらなければいけないという責任感を持って記事を制作していますね

真鍋さん

水野史恵

なるほど。

もう一つ気になる点として、「THE BAKE MAGAZINE」では他社を巻き込んだ記事をあげていますよね。

これはどういった意図があるのでしょうか?

第一には製菓業界全体を盛り上げたいという気持ちがあります。

素晴らしい商品やアイデアを紹介し微力ながら応援することで、“お菓子を進化させる”というビジョンの実現に繋げたいと考えています。

また、「せっかくコラボ商品を発売するのだから、魅力を存分に伝えたい!」といった思いから、仮に競合他社であっても、丁寧に記事をつくっています。

真鍋さん

リニューアルに伴い、伝えたい思い


水野史恵

CIの刷新にあわせて「THE BAKE MAGAZINE 」もリニューアルの真っ最中(取材時)なんですよね。

今後のメディアの方向性についてもお聞かせいただけますでしょうか。

新ミッションとして掲げる 「しあわせに、 BAKE る。」と新ビジョンである 「お菓子を、進化させる。」の実現に繋がるストーリーを展開していく予定です。

具体的には、「ものづくりへのこだわり」「フードテック」「地域活性化」「食品ロスの削減」などをテーマにした記事を考えています。


真鍋さん

水野史恵

新ミッション・新ビジョンの浸透をさせることに注力されているということですね。

そうですね

記事を通じて新しいCIを社内外の方に理解してもらうことで、ファンを増やしていきたいという思いです。


真鍋さん

水野史恵

真鍋さんはオウンドメディアの統括だけでなく、ご自身で記事を執筆されることもあるとか。

はい。取材から自分で担当し、執筆まですることもありますし、外部のライターさんに依頼することもありますね。


真鍋さん

水野史恵

先ほど、記事制作の目的についてはお伺いしましたが、実際に執筆される上ではどんなことを重視されているのでしょうか。

一言でいうと“BAKE愛”でしょうか(笑)

商品に対しても、デザインに対しても、コーポレートに対してもそうですが、最後まで熱量を持ってこだわれるかどうか。つまるところ愛があるかどうかではないかと思っています。

もちろん、サイトの設計やSEOなどマーケティング戦略も重要ですが、それらをとことん突き詰めることも愛情がなければ難しいですよね。

良い記事をつくりたい良いメディアをつくりたいという想いがあってこそ、メディアは成長してくれるのではないでしょうか。

真鍋さん

水野史恵

最終的には愛情が必要である、ということはクリエイティブな仕事をする上で非常に大切な要素かもしれませんね。

弊社は従来の製菓業界にはなかった“お菓子の美味しさをデザインで魅せる”という考え方のもと、これまでチャレンジを続けてきました。

その一環としてスタートした「THE BAKE MAGAZINE 」においても考え方は同様です。恥ずかしいものは出したくない、納得のいくものを発信したいという思いは日に日に強くなっていますね。

真鍋さん

水野史恵

すごく力のある言葉…!

クリエイティブやデザインを大切にされているからこそ、言葉にも重みを感じます。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

3.業種は違えど、ものづくりに対する熱意は変わらない

今回の株式会社BAKEのインタビューでは、多くの気づきがありました。

その一つがオウンドメディアの可能性について。

BAKEでは新入社員が会社を知るための重要なツールとして「THE BAKE MAGAGINE」を位置づけています。それはもはや社史と言ってもいい存在でしょう。

これまで広告やPRを目的にした記事というのは、初動の数字がすべてであり、一過性のものも多かったはずです。しかし、自社のメディアを運営することで、社外へのアピールに限らず、社内への情報や学びの発信が可能に

そういった社内への効果を実感することで、自社メディアに新たな価値を見出すことができました

また、記事制作に対する情熱については、うれしい共感も。

見せ方やブランディングに強いこだわりを持つBAKEは、記事制作においても同様のこだわりを持っていることがわかりました。

洋菓子の製造・販売でこれだけ人気を博しているのは、しっかりとこだわってコンテンツをつくっていることも理由の一つと言えるでしょう。

ものづくりに対する情熱は業種が違えど、尊敬し見習わなければいけないと強く感じました

4.終わりに

先日、ジェイアール名古屋タカシマヤにRINGOの期間限定店舗がオープン。多くの人で賑わう姿を見かけました。

真鍋さんが話していた通り、店舗のデザインから手提げ袋のビジュアルまで、細部にわたりこだわりを持っていることが一目瞭然これがBAKEとして大切にしている見せ方であり、ブランディングであるんだと実感しました。

これまで知り得なかった、作り手の方の情熱と愛情を感じられた今回の取材。

見せ方にこだわるのは、決して外見だけを取り繕うことではなく、素晴らしい商品をより多くの人に届けるために必要な要素であり、おいしさとブランディングが共存する裏側には、BAKEで働く方々のある意味で泥臭い努力があってこそ。

2021年7月にCIを一新し、さらなる進化が期待されるBAKE。今後、どんな展開をしていくのか楽しみです!

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)浸透に向けた思いをまとめた特集記事

イラスト=キタハラケンタ

FUMIE MIZUNO

この記事の執筆者FUMIE MIZUNOクリエイティブ・ディレクター

大学卒業後、大手機械メーカーに就職。企画・広報業務を担当するなかで、自分自身で何かを作り上げたいという気持ちが芽生え、転職。2018年エディマートに入社する。学生時代はメディアプロデュースを専攻。テレビ番組や記事制作を通じて、「つくる」ことの楽しさを知り、編集の仕事に憧れを持つように。現在は主に雑誌や新聞の編集・ライター業務とオンライン書店「Emo Books」の運営を担当。食べることが大好きで、グルメ取材が何よりの楽しみ。女性アイドルと猫と野球をこよなく愛する編集者として日々奮闘中!

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