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2022.01.27 Thu

伝え方・働き方

ニーズを先読みしてあらゆるビジネスに“フィット”するイラストを/ちょうどいいイラスト・浦﨑あいみ

イラスト

エディマートでは日ごろ、新聞や書籍、雑誌やwebなどのメディアにおいて、記事制作行っています。

記事を制作する際に「説明したいことが一目でわかるように」「見栄えを良くするため」「具体例を示すため」などの役割を果たしてくれるのがイラストです。

イラストは企画書・提案書といった営業資料や、HPやオウンドメディアといった自社メディアなどに活用されています。中でもフリーイラストは無料で簡単に利用できることから、業種を問わず多くの方が利用していることでしょう。

ここで気になるのが、無料にも関わらず使いやすいイラストが手に入るということ。普段は当たり前のように使っているフリーイラストですが、実際はどのような仕組みになっているのでしょうか。

その疑問を解決するために、今回は人気のフリーイラストサイト「ちょうどいいイラスト」を運営する浦﨑さんにユーザーの需要に応えるために実践していることについて、インタビューを実施。

イラストにまつわる疑問をぶつけることで、業界・業種問わず、働く人にとって大切なことを学ぶことができました。

取材
イラストレーター
浦﨑あいみ

金沢美術工芸大学環境デザイン卒。フリーのクリエイティブディレクター、イラストレーター。企業の経営ブランディング、戦略立案とクリエイティブディレクションの仕事傍ら、自社コンテンツとして「ちょうどいいイラスト」を運営。(HPTwitter


水野史恵

この記事のライター/水野史恵(エディマート)

エディマグの運営担当として、オウンドメディアの知見を深めるために、業界問わずさまざまなメディアについて勉強中。「ちょうどいいイラスト」でお気に入りのイラストは“荷下ろししているイラスト”。

1.企画書、チラシ、web記事など、どんなコンテンツにも気軽に使えるフリーイラスト

すべてのビジネスに寄り添う、“ちょうどいい”イラストとは?


水野史恵

はじめまして!

いつも資料やコンテンツ制作で「ちょうどいいイラスト」のイラストを活用させていただいています。

ユーザーの需要を掴む方法や求められるコンテンツづくりなど、聞きたいことがたくさんあるのですが、まずは「ちょうどいいイラスト」を開設した経緯をお聞かせいただけますか?

大学卒業後、デザイナーとして会社に勤め仕事をしていたのですが、数年前にフリーに転向しました。

そのタイミングで、デザイナーとしてどのようにして生き残っていくかといったこと考えるようになり、その手段の一つとして開設したのが、フリーのイラスト素材サイト「ちょうどいいイラスト」。2020年12月に開設し、現在に至ります。


浦﨑さん

ちょうどいいイラスト


水野史恵

サイトを開設されたのは割と最近だったのですね!

現在の浦﨑さんのお仕事は、「ちょうどいいイラスト」の運営がメインになるのでしょうか。

サイトの運営をしつつ、一般のイラストレーターと同様に案件を受注したり、デザイナーとしての仕事をしたりして、デザイン、イラスト、サイト運営の三本柱でお仕事をしていますね。

「ちょうどいいイラスト」は私のほかにもう一人メンバーがいて、二人体制で運営。もう一人のメンバーには、サイトの更新作業やUIの改善や著作権に関する確認などを担当してもらっています。


浦﨑さん

水野史恵

制作やディレクションは浦﨑さんが担当し、ハード面をもう一方がご担当されているのですね。

「ちょうどいいイラスト」を開設して約一年になると伺いました。

おそらく幅広いユーザーがサイトを活用していると思いますが、具体的なユーザー像は把握されていますか?

解析を読み解く限り、日本の一般企業に勤めている会社員が中心ですね。サイトのアクセスも午前9時を皮切りに右肩上がりで伸び、昼12時前後に一旦落ち着き、また13時からアクセスが増え、17時前後で収束する。

サラリーマンの勤務時間通りにアクセス数が変動しているので、主なユーザーもそういった層であると想定しています。


浦﨑さん

水野史恵

なるほど!

ではサイトにアップするイラストの内容についても、働く人に向けたものを中心にアップされているのでしょうか?

そうですね。実際にビジネス系のイラストのダウンロード数の伸びが良いこともあり、企画書やプレゼン資料で活用できそうな、汎用性の高いイラストを優先して制作しています。


浦﨑さん

水野史恵

基本的なユーザー層は解析をもとに把握して、そこからどんな内容のイラストに需要があるのかを深掘りされているのですね。

ユーザー層の大枠を掴んだ後は、Pixtaなどの大手サイトをはじめ、働く人が活用しているのであろう同業他社がどんなイラストをアップしているのかを調べました。そこでフリーイラストサイトを運営するにあたってそろえておきたい素材をリサーチし、優先して更新。

その後はサイトに届くユーザーのリクエストに目を通し、リクエスト数が多いものや自分が必要だと感じたものを積極的に制作していています。


浦﨑さん

水野史恵

具体的に浦﨑さんはどんなイラストが必要だと感じたのですか?

活用事例が想像できるシンプルなイラストですね。

例を挙げると、「スマホの使い方講座」の開催を想定した「スマホを操作している中年(男)のイラスト」。

イラストがどのようにして使われるか。つまりゴールを具体的に想像してつくられたイラストは、実際に想像通りに使われていることがこの1年でわかりました。

もちろん、自分の予想の範疇になかった使い方をしてくれるケースもあり、それはそれでありがたいですね。


浦﨑さん

水野史恵

なるほど。だから「ちょうどいいイラスト」では、シンプルなイラストを中心に更新をされているのですね。

そうですね。

あとは今後需要が高まりそうだと感じている、“抽象的な概念をわかりやすく伝える”イラストにも力を入れています。


浦﨑さん

水野史恵

サイトにアップされている「CO2カットのイラスト」のようなイメージでしょうか?

二酸化炭素排出量削減のイラスト。環境問題。地球温暖化

二酸化炭素排出量削減のイラスト。環境問題や地球温暖化に関する資料に活用できそうだ

そうです!難しいこと・わかりづらいことをわかりやすく伝えるために、私のクリエイティブを活用してもらえればと思っています。

今回のイラストが好評であれば、DXやSDGsなどを具現化したイラストを増やしていきたいと考えていますね。


浦﨑さん

水野史恵

抽象的な概念をわかりやすく伝えるというのは、イラストに限らずコンテンツとして需要がある分野かと思うので、とても良い試みかと思います!

ただ、そういったイラストの需要の高さは感じつつも、現在のダウンロード数一位のイラストは、シンプルな吹き出しのイラストなんです(笑)。

手間や苦労が実際の需要と直結しないところが難しくもあり、面白くもあるところですね。


浦﨑さん

2.世の中のクリエイティブを底上げするために、ちょうどいいイラストが心がけること

イラスト

市場意識を持った上で、自己を確立する


水野史恵

ここまで「ちょうどいいイラスト」をどのようにして運営しているかをお伺いしてきましたが、改めて解析のほかに、ユーザーの需要を掴むために取り組んでいることを教えていただけますか?

私自身がイラストレーターだけでなく、ディレクター業も兼務していることもあり、幅広い知見を取り入れることは意識していますね。

ビジネスマンからすると当たり前かもしれませんが、今どんなことが起きているのか、ニュースやトレンドを知ることはクリエイターにも必要な要素です。

イラストレーターだからと言ってイラストの勉強だけをしていると、ユーザーやクライアントの求めることが掴めなくなってしまうことも。

イラストが上手い=イラストの仕事ができる、ではないことを理解して、時流を捉えることが大切だと思います。


浦﨑さん

水野史恵

なるほど。それはイラストレーターやデザイナーに限らず、ライターやカメラマンなど、クリエイティブに関する仕事をする上でとても大切なことだと思います。

クリエイティブな仕事は職人的な側面がピックアップされがちですが、“世の中を知る”こともクリエイターとして重要ですよね。

そうですね。どんな仕事であろうと、市場意識は必要だと思っています。

世の中もそうですし、同業他社がどのようにして成長しているのか。それらを把握した上で、クリエイティブに取り組むことが求められていると思います。

イラストレーターで言うと、お金をいただいている以上、自分の描きたいものではなく、相手に求められるものを描くべきですが、それができない人も少なくありません。

画力はあるのにも関わらず仕事につながらない人は、こういったパターンが多いですね。

ただ、世の中の意見だけに寄り過ぎないことは自分でも気を付けています。


浦﨑さん

水野史恵

軸となる自分の考えは持っておくということでしょうか?

そうですね。需要に答えることだけを考えていると、肉体的にも精神的にも消耗してしまうことがあります

そうならないために、自分の描きたいものやこだわりを残しつつ、求められることに応えるそうやって落としどころを模索していくことが、イラストレーターとして生き残るための正当な努力であると考えています。


浦﨑さん

水野史恵

自分に仕事を依頼してもらう理由をつくるために、個性やこだわりは捨てないこと。

それらと求められる内容のバランスが重要であることは、ライターの仕事でも同じことが言えるかもしれませんね。

“伝わる”イラストが行き着く先を考える


水野史恵

ユーザーの需要をキャッチした後は実際の制作のフローになるかと思いますが、浦﨑さんどんなふうにして“伝わるイラスト”を制作されているのでしょうか?

単純明快で必要な情報のみで構築されたシンプルなイラストに仕上げることを心がけています。

一つのイラストの中に情報を詰め込み過ぎてしまうと、何を伝えたいイラストなのかわかりづらくなってしまう。

これだけ情報があふれている社会で生きているからこそ、パッと一瞬見ただけで認識できる、視認性の高さが重要だと感じています。


浦﨑さん

水野史恵

ユーザーの皆さんもわかりやすさを求めているということですね。

そうですね。先ほどお話した通り、使い方つまりゴールが明確なイラストの方が情報量の多いイラストに比べてダウンロード数は多いです。


浦﨑さん

水野史恵

ここで疑問なのですが……。

苦労をして需要を掴み、試行錯誤をして完成させたイラストをなぜ有償ではなくフリーイラストとして配布されているのでしょうか?

冒頭でお話した通り、イラストレーターとして生き残るための手段の一つとしてフリーイラストサイトを開設しました。

フリーイラストはクリエイターとユーザーの間で評価や価値観が異なると思っています。ユーザーからは好意的な一方で、クリエイターからは「イラストレーターの仕事を奪う」とか「イラストの単価を下げる」といった指摘をいただくことも。

そういった意見が飛び交う中で、フリーイラストの存在により、イラストそのものの質は確実に向上していると思っています。幅広い領域でフリーイラストが活用されている現状から、有償のイラストは無償よりも高い質が求められるようになりました


浦﨑さん

水野史恵

フリーイラストが存在することで、有償のイラストに求められる内容も高度になり、クリエイティブ全体の質も上がっているということですね。

たしかにそれはユーザーである私も実感できていることかもしれません。

今まではお金を支払わなければふれられなかった質の高いクリエイティブを、フリーイラストが存在することで気軽に体感できる世の中になっていると感じています。

だからこそ、自分自身もフリーイラストサイトを運営しようと思えましたし、「ちょうどいいイラスト」を通じて世の中のクリエイティブの底上げに少しでも貢献したいと考えています。


浦﨑さん

イラストレーターを目指す人に伝えたいこと


水野史恵

ここからは将来イラストレーターになりたい人、目指している人に向けてお話をお伺いしたいです。

今までのお話からすると、やはりプロのイラストレーターになるには質の高いイラストが描けなければいけない、つまり高い画力が必要になるということでしょうか?

もちろん画力はあって越したことはありません。しかし、クリエイティブの質は画力だけでなく、クリエイター自身の人間力も大きく影響すると考えています。

イラストレーターやデザイナーは顔を出さずに仕事をしている人が大半ですが、作品だけでなく自分自身を知ってもらい、自分という人間を好きになってもらうことが非常に大切。

コンテンツがあふれている時代だからこそ、自分を選んでもらうための理由をきちんとつくる必要があると思いますね。


浦﨑さん

水野史恵

たしかにイラストを有償で発注することを想定した場合、その人自身が好きかどうかという点はとても大切なポイントかもしれません。

浦﨑さんご自身はもちろん、「ちょうどいいイラスト」というコンテンツのファンづくりにも力を入れていると伺いました。

そうですね。TikTokでイラストのメイキング映像を配信したりskebを活用して作品依頼を募ったりしてコンテンツのファンを増やす活動をしています。

そういった“イラストにイラスト以上の付加価値を付ける”ことは私たちが目指すべき方向性であり、目標でもあります。


浦﨑さん

水野史恵

コンテンツに付加価値を付けることは理想である一方で、とても難しいことでもありますよね。

今はまず「サイトのUIを改善して、よりイラストにふれやすくする」とか「業務の効率化を図り、イラストの更新率を上げる」という身近で実践しやすいことから進めています。

そうやって好循環をつくりあげることで、「ちょうどいいイラスト」のコンテンツとしての価値を高めていきたいですね。


浦﨑さん

水野史恵

これからの「ちょうどいいイラスト」の進化が一層楽しみです!

本日は貴重なお話をありがとうございました!

3.「ちょうどいいイラスト」が考える、ファンあってのクリエイティブとは

「ちょうどいいイラスト」がどのようにしてユーザーの需要に応えているのかを紐解いた結果、クリエイティブにおいての大切なことを再認識することができました。

まずは“ファンづくり”というキーワードについて。これは人やモノ、作品に限らず、コンテンツに対しても言えることです。『自分だからつくることができるコンテンツ』にするために、どのようにして価値を加えていくか。

単純なようで難しい作業であり、クリエイティブを生業とする私たちにとって永遠のテーマかもしれません。

価値を加えるためには、どんなものに価値があるのかを認識する必要があります。

そのためにもインタビューで話題に挙がった、時流を読み解き、求められるものを分析し、クリエイティブに生かす能力が必要になるでしょう。

自分にとって大切にしたい要素・こだわりと相手がもとめる要素にうまく折り合いをつけ、双方にとって価値のあるコンテンツをつくることを今後も心がけていきたいと強く感じました。

4.終わりに

「ちょうどいいイラスト」で配布されているイラストは、基本的にすべてがフリー。データをダウンロードするための登録なども不要なため、ユーザーは自由に使用することが可能です。

ある意味、ユーザーの顔や全体像がわかりづらい状況の中、直接届くありがとうの声は浦﨑さんにとって大きなモチベーションになっていると言います。

不特定多数のユーザーがイラストを利用している状況下で、SNSやTikTokを通じて届くダイレクトなメッセージは非常に大切な存在である。そう話す浦﨑さんの言葉に、思わず大きくうなずいてしまいました。

至る所で共感を覚えた今回のインタビュー。

良いクリエイティブに対して良いと直接伝えることの大切さを学ぶことができました。

クリエイティブの底上げに貢献し、進化する「ちょうどいいイラスト」の今後に期待です!

イラスト=ちょうどいいイラスト

FUMIE MIZUNO

この記事の執筆者FUMIE MIZUNOクリエイティブ・ディレクター

大学卒業後、大手機械メーカーに就職。企画・広報業務を担当するなかで、自分自身で何かを作り上げたいという気持ちが芽生え、転職。2018年エディマートに入社する。学生時代はメディアプロデュースを専攻。テレビ番組や記事制作を通じて、「つくる」ことの楽しさを知り、編集の仕事に憧れを持つように。現在は主に雑誌や新聞の編集・ライター業務とオンライン書店「Emo Books」の運営を担当。食べることが大好きで、グルメ取材が何よりの楽しみ。女性アイドルと猫と野球をこよなく愛する編集者として日々奮闘中!

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