2020.07.07 Tue
[監修:国語教諭]社会人に必要な「伝わる文章」の書き方│短文でも違いが出る“伝わる表現”とは?
「文章の書き方」は、小学校の頃から国語の授業で学んでいるもの。ですが社会人になって、「企画書をまとめるのが苦手」「メールやチャットの内容がなぜか伝わらない」「自分の文章力がどの程度なのか不安」など、文章に悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
メールやチャットといった短文のやり取りに慣れてしまった今こそ、大人として覚えておきたいのが「伝わる文章の書き方」です。
情報や想いが正確に伝わる文章が書ければ、ビジネスもスムーズに進むことでしょう。
そこでこの記事では、毎日のように原稿を書くプロのライターが、
- まずは、文体や読点の打ち方など初歩的なルールをおさらい
- 次に、伝わる文章の組み立て方やコツをマスター
という順で、伝わる文章のポイントを整理。
さらに中学校で国語を教える先生に監修をいただき、上手な文章が書けるようになるコツをご紹介します。
2013年名古屋市教育研究員として、『思いを見つめて表現することのできる生徒の育成』について研究。2018年長期社会体験研修に参加し、作文指導とビジネス文書作成の共通点などを学ぶ。
この記事のライター/鬼頭英治(エディマート) エディター歴20年強。新聞、雑誌、Webといったさまざまなメディアでライターの原稿確認や、自身も執筆を行うかたわら、編集プロダクションの代表として、社内外でビジネス文章をやりとりする機会も多い。 |
目次
1.「文章の書き方」はいつ学んでいたのでしょう?
メールやチャットなど、コミュニケーションツールが進化している一方で、相変わらず文章で伝える機会は少なくありません。むしろ顔が見えないからこそ、正しく伝わる文章を書かなければ、誤解が生じ、ビジネスでトラブルが起こることも!
みなさんは短文のやり取りや、絵文字やスタンプで感情を表現する方法に慣れてしまっていませんか?そうすると、仕事などできちんとした文章を書くときに必要なルールやマナーを守れず、相手に伝わらない内容になりがちなので注意したいですね。
「伝わる文章」とは?
「伝わる文章」とは、誰もが無理なく読み進められ、正確に「情報」と「想い」が伝達できる文章のことです。
文章には目的があります。日記やメモは自分が分かれば良いですが、コミュニケーションツールとしての文章は、「情報」と「想い」を相手に伝えなければなりません。
- 誰もが無理なく読み進められる
- 情報を正しく伝達できる
- 想いを正しく伝達できる
中学校までの国語が基本
実は伝わる文章の書き方は、義務教育である中学校までに誰もが学んでいるのです!
たしかに世の中には「文章技術」「論文作法」といった、文章力を上げるための専門書がたくさん存在します。より高度な文章をめざすなら専門書を読むべきですが、「伝わる文章」に仕上げるためには、そこまでの必要はありません。
中学校までの国語の学習内容で、作文に関する数個のポイントをおさらいすれば、みなさんの文章は見違えるほど伝わるものに変わるはずです。
2.文体や表記ゆれ、読点の使い方など「文章の書き方」の基本をおさらい
ここからは実際に、人に伝わる文章を書くために押さえておきたいポイントをご紹介します。
プロのライターの視点から必要だと思うポイントを挙げ、それを中学校で国語を教える清水先生にチェックしていただきました。
まずは、文体や読点の打ち方など初歩的なルールからおさらいしましょう。
やさしい表現を心がける
専門用語でない限り、文章はやさしい表現に書き換えるようにしましょう。
ビジネスの文章だからといって、難しい熟語や、一般的でない横文字を多用するのは禁物です。特に、多くの人の目にふれる文章は「中学生でも読める」表現が良いとされます。
一方で、口語体の表現を使うときも慎重に。「OKです」「やっぱり」「わりと」は、つい使いがちな表現ですが、ビジネスの文章にはふさわしくありません。
文体、表記のゆれを整える
文章の様式は大きく、「です・ます」(敬体)と「だ・である」(常体)に分けることができます。どちらで書くかを決めたら、最初から最後までその様式を守るようにしましょう。
また、「丁寧」「ていねい」、「全て」「すべて」など、同じ文章の中に漢字表記とひらがな表記が混在するのもよくありません。混在しやすい単語は、文章作成ソフトの検索機能を使って洗い出すなどして、統一を図ることをおすすめします。
ほかにも、英数字を全角もしくは半角でそろえる、見出しと本文で文字サイズを変えたらそのルールを守るなど、細かい部分の統一を図ると、読みやすく品質の高い文章になります。
読点「、」を適切な場所に打つ
文章の切れ目に入れる読点「、」。多くの人が、どこに入れるべきか迷うかもしれません。
読点は、「息継ぎをする場所」「読みやすくなる場所」に打つのが基本です。
紙で印刷する文章と違い、メールやホームページの文章は、1行に表示される文字数が相手の環境にゆだねられます。そのため、こちら側では読みやすいと思っていた文章でも、相手先で折り返しの位置が変わってしまい、読みづらくなってしまうケースも。
だからこそ、適切な位置に読点を打つ必要があるのです。
迷ったら、こんなときに打ってみましょう。
読点を打ち過ぎると、逆に読みづらい文章になるため、必要最小限にとどめると良いでしょう。
ここからは、より伝わる文章になるためのステップアップ編です。もちろん、どれも簡単なことなので安心してくださいね。
「そういえば、昔習ったことばかり」と思った人も多いのではないでしょうか。ここまでのポイントを押さえるだけで、みなさんの文章はだいぶ読みやすいものになるはずです。読点が苦手という人は、声に出して文章を読み、息継ぎしたい場所を探してみるのも一案です。
3.筋立てやデータ、文末を工夫して「文章の書き方」をマスター
ある程度の長さの文章を読みやすくするためには、筋立て(文の構成)を整理することがポイントとなります。
また、数字などの確かなデータを添えたり、文末のバリエーションを増やすと、レベルがさらに上がり、しっかりと相手に伝わる文章に仕上がるはずです。
筋立てを整理してから書く
文章を書く前にあらかじめ、何について、どのように並べて伝えるかを整理した「筋立て」を考えましょう。思いついたことを、思いついたまま書いていては、読みやすく伝わる文章にはなりません。
よく知られているのが「起承転結」による筋立てです。
起承転結による筋立て
- 「起」…伝えたい内容の背景
- 「承」…話の導入、本題に入る前の準備
- 「転」…起こった出来事や展開
- 「結」…出来事の結果や感想
起承転結による筋立てを意識すれば、とても読みやすい文章になるはずです。しかし、起承転結の筋立てでは結論が最後に分かるため、ビジネスシーンでは好まれないことも。
結論を先に求められるビジネシーンでは、先に要点を述べ、次に理由や具体例を重ね、最後にあらためて要点を書く筋立てが良いとされ、この筋立てを「PREP法」と言います。
- 「Point」…要点(伝えたい結論や想い)
- 「Reason」…理由(その結論や想いに至った理由)
- 「Example」…具体例(理由を補足するための事例やデータ)
- 「Point」…要点(再度分かりやすく)
小中学校の文章指導では、「はじめ・中・終わり」「序論・本論・結論」の三段階構成、さらに「頭括型・尾括型・双括型」の型も学びます。
- 「頭括型」…結論→理由
- 「尾括型」…理由→結論
- 「双括型」…結論→理由→結論
それぞれの型に利点はありますが、ビジネスシーンではPREP法と似ている双括型がおすすめです。
数字など確かなデータを添える
事実を伝えるためには、それを裏付けるデータが欠かせません。
自社の調査結果や、公式ページに掲載されている数値、国や自治体、関係団体が発表している情報など。確かなデータを添えることで、情報の信憑性が高まり、相手の理解が深まります。
ただし、情報を転用する場合は、本当に正しい情報かを確かめる「ファクトチェック」とともに、出典元の記載を忘れずに。
また相手はすぐに文章を読むとは限りません。「去年」「来年」といった、相対的な書き方より、「2020年」など具体的に記しておいたほうが、読み手に誤解を与えないでしょう。
文末のバリエーションを増やす
同じ文末表現が続くと、単調な印象になりかねません。そのため、語尾のバリエーションを増やして、連続する表現を回避しましょう。
文章を読み返してみると、語尾が「〜です。〜です。」や「〜ます。〜ます。」と繰り返されていませんか?また語尾を、名刺や代名詞などの体言で止める「体言止め」も、つい連続しがちです。
例えば、「〜もあります。」なら「〜も。」と助詞で止めることができます。
他にも、「多い。」が続きそうなら「少なくない。」と言い換えたり、「〜のはずです。」を「〜でしょう。」とすることも可能です。
同じ語尾が続くようなら、他の表現ができないか考えてみましょう。
筋立てを決めたら、各項目で何を伝えるか箇条書きにしておきましょう。これは「プロット」と呼ばれるもので、自分の文章の流れを俯瞰して見ることができます。
4.「伝わる文章」を書くためのQ&A
「伝わる文章」を書くにあたってよくある疑問にお答えしていきます。
- Q1. やさしい表現とはどういうもの?
- Q2. 文体がぶれないようにするコツは?
- Q3. 文末のバリエーションを増やすには?
どれも、これから文章の上達をめざす方に役立つ情報ばかりなので、気になる質問からチェックしてくださいね。
Q1. やさしい表現とはどういうもの?
A.新聞各社の1面コラムが参考になります
新聞各社の1面に掲載されているコラム、たとえば朝日新聞の「天声人語」や読売新聞の「編集手帳」、毎日新聞の「余禄」は、比較的広いターゲットを意識し平易な表現が採用されています。
小中学校の授業や課題で、これらコラムの書き写しが行われることもあるため、やさしい表現、使いやすそうな表現のストックにもおすすめです。
Q2. 文体がぶれないようにするコツは?
A.伝えたい相手を明確にしておきましょう
先に「文章には目的がある」とお伝えしました。みなさんの文章には「伝えたい相手」がいるはずです。文章を書く前に、伝えたい相手を明確にしておきましょう。これを「ペルソナの設定」と言います。
年齢や性別、職業、趣味嗜好、家庭環境などを洗い出し、そのペルソナに向けて文章を書く意識をもつことで、文体のぶれはおのずと減っていきます。
Q3. 文末のバリエーションを増やすには?
A.自分だけの“ことば辞典”を作りましょう
本やブログを読んだり、広告を見たりして出合った「使える」表現をストックしてみてください。文末だけではなく、さまざまな表現をジャンルに分けてストックするのも良いでしょう。スマートフォンのメモアプリなどを活用すると、出会ったときにすぐ記録ができて便利です。
5.文章力が上がる!ライターおすすめの本5選
ここで、プロのライターも参考にする、文章力を上げるために一読したい本をご紹介。やさしい内容のものばかりなので、さらにレベルアップしたい方はこちらも読んでみてください。
※国語教諭の監修外
井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室/井上ひさし ほか
題のつけ方や段落の区切り方など、文章を書くための基本がぎっしり。2001年に刊行された古い本ですが、読みやすい文章、伝わる文章は時が経っても同じだと実感します。
文庫: 288ページ
出版社: 新潮社 (2001/12/26)
発売日: 2001/12/26
伝わるシンプル文章術/飯間浩明
「クイズ文をつくることができれば、伝わる文章が書けるようになる」。2008年に刊行した本を改題・再編集したものだが、今も売れ続けているベストセラー。
単行本(ソフトカバー): 262ページ
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン (2018/3/25)
発売日: 2018/3/25
記者ハンドブック 新聞用事用語集/共同通信社
新聞記者のための辞書ですが、漢字と平仮名どちらを使うのか、送り仮名はどう付けるのか、同音異義語の使い分けなどがまとまっており、プロでなくても参考にしたい一冊。
新書: 768ページ
出版社: 共同通信社; 第13版 (2016/3/22)
発売日: 2016/3/22
国語のおさらい(おとなの楽習)/越智奈津
文法や漢字、品詞など、中学までに習った国語をざっとおさらいできる本。「なんで中学生の時にちゃんと学ばなかったんだろう…」という、表紙の言葉が刺さります。
単行本: 191ページ
出版社: 自由国民社 (2009/7/1)
発売日: 2009/7/1
伝え方が9割/佐々木圭一
コピーライターとして活躍する著者が、自身の修得した伝え方の技術を惜しげもなく披露。実際に使われた広告コピーが例に挙げられ、とてもわかりやすくまとまっています。
単行本(ソフトカバー): 212ページ
出版社: ダイヤモンド社; 初 2013版 (2013/3/1)
発売日: 2013/3/1
4.まとめ
いかがでしたか。みなさんの文章も変わりそうでしょうか。
あらためて、社会人に必要な「伝わる文章」の書き方のポイントを確認しましょう。
- やさしい表現を心がける
- 文体、表記のゆれを整える
- 読点「、」を適切な場所に打つ
- 筋立てを整理してから書く
- 数字など確かなデータを添える
- 文末のバリエーションを増やす
簡単ですのでぜひ取り入れて、今よりもっと「伝わる文章」にしてくださいね。
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「文章力を上げよう」と考えると、ハードルがとても高く感じられるかもしれません。しかし実際は、中学校レベルの国語をおさらいするだけでも十分です。肩の力を抜いて、一緒に思い出していきましょう。