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2020.11.06 Fri

本の紹介

『蕎麦湯が来ない』(マガジンハウス・せきしろ×又吉直樹)/何でもない日常が面白くなったり、切なくなったりする「自由律俳句」を楽しむ

作家せきしろとお笑い芸人ピース・又吉直樹の共著であり、『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』に続くシリーズ第3弾。404句の自由律俳句と、50篇の散文を収録。

本書の中で掲載される 自由律俳句とは、定型(5・7・5)に縛られずに作られる俳句のことです。

情景を思い描いてみたり、身に覚えのある場面を思い返したり、言葉の行間や含みを想像したりと楽しみ方はさまざま。 それぞれの句に込められた奥行きを味わえます。

蕎麦湯が来ない

¥1,540
発行/マガジンハウス
著者/せきしろ×又吉直樹

この記事のライター/水野史恵(エディマート)

エディマートに所属し、編集や執筆の業務を担当。東海地方を中心とした情報誌や観光ガイドブック、新聞記事などを制作している。取材先で出会ったおいしいものや美しい景色はしっかりと手帳にメモをしておき、プライベートで再訪することも多い。


水野史恵
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1.『カキフライが無いなら来なかった』に始まった、自由律俳句との出会い

自由律俳句をテーマにした、作家のせきしろさんとピースの又吉さんの本が出るらしい」。

そんな話を聞いて、すぐに購入したのが共著一作目となる『カキフライが無いなら来なかった』。自由律俳句と聞いても正直ピンときていませんでしたが、「面白いコントやラジオをつくる二人の本なんだから、きっと面白いんだろう」とワクワクしながらその本を読み進めたのを覚えています。

そもそも自由律俳句とは何なのか。調べると、こんな解説がされています。

自由律俳句とは 自由律俳句とは、5・7・5の定型俳句に対し、定型に縛られずに作られる俳句を言う。季題にとらわれず、感情の自由な律動(内在律・自然律などとも言われる)を表現することに重きが置かれる。(以上、Wikipediaより引用)

つまり、5・7・5のリズムのルールを取り払った自由な俳句ということです。句の読み方も区切りも受け手に委ねられていて、季節や情景も受け手の想像次第

私はシリーズ一作目の『カキフライが無いなら来なかった』で自由律俳句と出会い、二作目『まさかジープで来るとは』で自由律俳句の楽しみ方を覚えました。そして、二人の共著を通じて自由律俳句の魅力を知ることになった私にとって、待望の一冊となったのが、三作目である『蕎麦湯が来ない』です。

 

2.自由律俳句の私なりの楽しみ方

捉え方は受け手次第の自由律俳句。ある句からどんどんと想像を膨らませ、ストーリーや背景を妄想して楽しむのが私なりの楽しみ方です。ここで、本書内で特にお気に入りの句をいくつか紹介します。

親の傘の重たさ(せきしろ)

カツ丼喰える程度の憂鬱(又吉直樹)

おかしいな誰もいない(せきしろ)

ユニオンジャックの水着が来た(又吉直樹)

 

一つひとつの句から、色んな情景が想像できませんか?

「親の傘の重たさ」を読んだときに、父の傘を持ったときの記憶がふわっと浮かんできたり、「カツ丼喰える程度の憂鬱」を読んで、あんなに辛そうだったのにカツ丼は食べられるのかというシーンが想像できたり。

自分の思い出と重ね合わせたり、ありもしないシーンを妄想したりと色んな楽しみ方ができるのが自由律俳句の魅力。ぜひ404句の作品からお気に入りを見つけてみてください。

また本書内では、自由律俳句に関連したエッセイとイメージカットも収録。この句にはこんな背景があったのか、答え合わせのようにエッセイから筆者の感情を読み取ることができるのも面白いです。

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3.忙しい日々の中でほっと一息つきましょう

私はちょっとだけ現実逃避をしたいときにこの本を読むことが多いです。仕事や家庭のことで悩みがあると、ベッドの中でこの本を開く。日常に寄り添っている句をじっくりかみ砕いて楽しむことで、日々の悩みが薄れる気がするのです。

声を出して大笑いするような本ではありませんが、思わずふふっと笑ってしまう。読んでいてなんとなく安堵感を感じられる、そんな癒やしの本です。

だんだんと寒くなり、今まで以上におうちじかんを長く過ごすことになりそうな今日このごろ。自由律俳句の世界に浸ってみるのはいかがでしょうか。家ごもりのお供として、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

蕎麦湯が来ない

¥1,540
発行/マガジンハウス
著者/せきしろ×又吉直樹

 

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FUMIE MIZUNO

この記事の執筆者FUMIE MIZUNOクリエイティブ・ディレクター

大学卒業後、大手機械メーカーに就職。企画・広報業務を担当するなかで、自分自身で何かを作り上げたいという気持ちが芽生え、転職。2018年エディマートに入社する。学生時代はメディアプロデュースを専攻。テレビ番組や記事制作を通じて、「つくる」ことの楽しさを知り、編集の仕事に憧れを持つように。現在は主に雑誌や新聞の編集・ライター業務とオンライン書店「Emo Books」の運営を担当。食べることが大好きで、グルメ取材が何よりの楽しみ。女性アイドルと猫と野球をこよなく愛する編集者として日々奮闘中!

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