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2021.08.20 Fri

伝え方・働き方

FORZA INTERNATIONAL サッカーを通して子どもたちに世界を体感させたい │ 地元企業のSDGsを取材

持続可能な社会づくりを、誰も取り残すことなく達成することが目標のSDGs。2030年のゴールに向け、すでに多くの企業で取り組みが進んでいます。

エディマートでは、地元企業のSDGsを取材し、発信のお手伝いをすることで、「目標12:つくる責任 つかう責任」と、「目標17:パートナーシップで目標を達成しよう」の実現をめざしています。

今回は、子どもたちのためにサッカーの国際大会や留学などを企画、斡旋しているクラブ「FORZA INTERNATIONAL」を取材しました。

1.きっかけは「勝利至上主義」への疑問

FORZA INTERNATIONAL代表の田名部順一さん

小中学生を対象にしたサッカークラブ「FORZA INTERNATIONAL」は、愛知県で唯一、サッカージュニア国際大会やサッカー留学などを企画、斡旋しているクラブです。エディマートが地元企業のSDGsの発信のお手伝いをしていることから、今回、取材の申込みをいただきました。

その際の事前情報として寄せられたのが、自社のSDGsとして「目標4:質の高い教育をみんなに」「目標10:人や国の不平等をなくそう」をめざしているということ。前者ついてはすぐに理解できましたが、果たして後者はどういう取り組みなのでしょうか。
さっそく、名古屋市の多目的グラウンド「テラスポ鶴舞」で練習をするFORZA INTERNATIONALの代表・田名部順一さんにお話をうかがってきました。

代表が肌で感じてきた世界との違い

田名部さんは1977年愛知県に生まれ、学生時代はサッカー漬けだったそうです。各年代で県代表や国体も経験。さらにはブラジル留学、プロチームへの入団の話もあったそうですが、あらたな夢ができたことにともない一旦サッカーから離れます。

その後27歳で独立し、飲食業のプロデュースやメディアの世界で活躍。やがて父親となり、お子さんもサッカーの道に進んだそうですが、その様子を聞いていると、昔からスポーツ指導に感じていた疑問が、より強くなってきたのだとか。
「日本のサッカーは、こと指導に関しては平等ではありません。強豪校や有名なサッカースクールは、いずれも大量に生徒を集めますが、そのなかの一握りだけが大会に出て、活躍できるのはごくわずかです」と田名部さん。

自身のクラブで平等な指導と愛を

学生時代に自身も同じような指導を受けた田名部さんは、海外のサッカーにふれたとき、日本との大きな違いを感じ衝撃を受けたそうです。
「海外は“実力ありき”の厳しい指導であるのも確かですが、誰もが平等にサッカーを教えてもらっている。そして何よりも、指導者の分け隔てない『愛』がありました」。

田名部さんは、日本のサッカークラブや部活動は「勝利至上主義」が多いと感じているとか。「選ばれた一部の子どもだけが特別な指導や体験ができるのではなく、できるだけ多くの子どもたちに海外のサッカーにふれてもらい、グローバルな価値観を知ることが大切」と語ります。

飲食業やメディア活動をやめた田名部さんは、再びサッカーの世界へ戻ることを決意。自らの手で、子どもたちが世界を体験できるサッカークラブ「FORZA INTERNATIONAL」を立ち上げました。

2.世界を体感してもらうための活動


勝っても負けても相手を讃えあう──海外での貴重な経験が、子どもたちの成長と自立を促します

FORZAでは子どもたちに世界を体感してもらうため、大きく分けて2つの活動をしています。1つが、愛知県内の子どもたちに世界基準でサッカーを教える「アカデミー」。もう1つが全国の子どもたちを対象に、スペインの競合クラブチームで指導を受け大会に出場する「セレクション」です。

愛を注げる人数に指導する「アカデミー」

FORZAのアカデミーでは、他のクラブと違い生徒の数をしぼっています。最大で、小学校1年生から6年生を対象としたジュニアなら、U-10で16名、U-12で16名。中学校1年生から3年生を対象にしたユースでは、セカンドU-14で18名、トップU-15は18名を上限としています。

2021年7月現在で計24名の生徒数。田名部さんは「指導者の目が届き、一人ひとりに丁寧に指導するためには人数を絞らざるを得ない」と言います。A、Bチームを作らない、全員が試合に出場する、クラブ活動の一環として海外へ遠征をするという方針も、まさに田名部さん自身の経験から導かれたものでしょう。

その一方で、入会のためには面談を行い、子どもと親御さんにしっかりと意思確認を行うのだそう。ポイントはサッカーの上手さよりも、本人のやる気と保護者の熱意。「それだけに、なかには入会をあきらめる方もいます」と田名部さんは話します。

アカデミーでは、田名部さんを含む世界を知る指導陣が、世界で通用する技術を教えています。練習後にはSNSのグループ上で、一人ひとりにアドバイス。練習を見学していた親御さんに話をうかがうと、「SNSのメッセージは個人に向けたアドバイスでありながら、他の生徒にも共有されるため、励みにも学びにもなっている」と教えてくれました。

「セレクション」は全国のサッカー少年が世界を知る機会に

アカデミーは愛知県内の子どもだけが対象ですが、FORZAでは全国のサッカー少年を対象にした「セレクション」も用意。全国の小学校3年生から中学2年生の選手をセレクションした「FORZA JAPAN」を結成し、スペインのマジョルカ島で開催されるEast Mallorca Cupに毎年出場しています。

またFORZAでは、U-12までの選手で、スペインのクラブチーム「RCDマジョルカ」のカンテラ(育成組織)とトレーニングマッチをしたり、現地のコーチから指導を受ける機会も設定。

これらの遠征活動は、新型コロナウイルス感染症の影響により残念ながら2020年、2021年は実現しませんでしたが、2022年は再開されるそう。練習に励む子どもたちにそのことを聞くと、とても楽しみにしていました!

なるほど、ここに来てFORZAが掲げた「目標10:人や国の不平等をなくそう」の意味が理解できました。

3.サッカーだけではない幅広い教育を実践

生徒とコーチの距離感がとても近いFORZA。子どもたちも年齢差を問わず仲が良い様子がうかがえた

子どもたちのインタビューでは口々に、「練習の合間や移動時間に、コーチからサッカー以外の話もよく聞く」という声が。田名部さんにそのことを聞くと、サッカーで活躍するだけではなく、人としての成長も促したいという想いが垣間見えました。

人とつながり、人と支え合う

FORZAの立ち上げにあたっては、「いろいろな人を信じて、つながることができたことが大きい」と田名部さんは続けます。世界を知る指導陣、遠征先のクラブやコーチ、それをつないでくれた人、運営を支えるスポンサーなど、FORZAの理念に共感するさまざまな人に支えられ、クラブの今があるようです。

「困ったときには人が導いてくれる。だからこそ人と人とのつながりは大切だということは、子どもたちにもよく話しています。サッカーでプレイヤーとして成功しなかったとしても、何らかの形でサッカーに携わったり、別の分野で活躍したり。真面目に取り組んでいれば、誰かがそれを見ていて、導いてくれるということを教えたい」。

子どもたちからは「FORZAの活動以外でも、あいさつをしっかりしなさいとか、社会のルールを守りなさいと言われています」とも。子どもたちの将来を思うからこそ、サッカー以外のアドバイスにも熱が入っているのでしょう。

関連会社の畑の収穫物で食育も

FORZAには農業を行う関連会社があり、田名部さんも定期的に畑へ行き、農作業に汗を流しているそう。クラブの子どもたちに収穫体験をしてもらったり、畑でとれたレンコンを配ったりして、食の大切さも啓蒙しているとか。

「作物は収穫までが大変。雑草を取り、肥料を与えるなど、収穫するためにはさぼることは許されません。それは人の育成でも同じで、先につながるよう丁寧に、一つひとつ教えていくことが大切です」。

少し話を戻しますが、国内にはたくさん生徒を集める勝利至上主義のチームが少なくないと聞きました。一部の優れた子どもたちは活躍できても、大多数はきちんとした指導を受けられなかったり、試合に出られなかったりする世界です。

FORZAのような指導こそ、クラブ運営における「目標12:つくる責任 つかう責任」につながるかもしれないと感じました。

4.共感を増やすことが本当のゴール

スペインのマジョルカ島で開催されるEast Mallorca Cupに出場したFORZAメンバー

最後に田名部さんに、2030年にどうなっていたいか聞きました。

「FORZAの理念はSDGsに通じるものが多いと感じています。いま自分がやらなければいけないのは、メディアなどで取り組みを発信し、FORZAのファンをつくること。そうすることで同じ課題感をもつ人とつながり、未来には当クラブのようなところが増えるはずです」。

現在、FORZAの運営費は、スクールなどの授業料やスポンサー料でまかない、一部は関連会社の収益で補填されているそうです。アカデミーやセレクションに参加できる人に限りがある以上、安定した経営のためには、それを支える共感者を増やすことがとても大切。

今回の取材を通して、サッカーに限らず、FORZAのようなSDGsと密接につながるクラブが増え、共感者が集まれば、自ずと世界で活躍できるアスリートや、グローバルな価値観をもった次世代が育つのではないかと感じました。

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EIJI KITO

この記事の執筆者EIJI KITO代表取締役

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1973年生まれ。96年に同志社大学卒業後、新卒入社の宣伝会議で編集職の楽しさを知るも、己の未熟さから挫折。地元名古屋に戻り、プロトコーポレーションの制作部門に入社し、編集の仕事を学び直す。親会社に転籍後はWEBのプランニングに従事。03年フリー編集者として独立、06年法人化。エディマート代表として制作と営業を統括しながら、自身も編集者として最前線に立つ。好きな言葉は岡本太郎の「危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ」。趣味はバイクとマイクラと部屋いじり。

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