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2021.04.30 Fri

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自治体広報誌などのコンテンツに編集者を活用。プロポーザルや運用もスムーズに。

観光需要の拡大、人口減少をとめる移住提案、税収を増やすための企業誘致など、自治体はさまざまな課題を抱えています。もちろん、課題解決を図るための施策を行っていますが、取り組みについてきちんと発信をしなければ、目的は果たせません。

発信手段はいろいろありますが、年齢を問わず広く訴求できるツールのひとつがパンフレットやリーフレットなどの印刷媒体です。近年はWebや動画コンテンツでの訴求も増えていますが、印刷媒体もセットになることが多いのは、そのような理由からでしょう。

エディマートにも自治体広報誌を中心としたコンテンツ制作のお問い合わせをたくさんいただきます。提案を検討する広告代理店や印刷会社、もしくは自治体から直接ということも。そんななか、よく聞こえてくるのは、

「提案まで時間がない」
「制作するものは決まっているが、中身は固まっていない」
「提案までは自社でできても、運用はできない」

という声。
自治体とつくるコンテンツは、最終の納品日は余裕があっても、提案まではスピード感を求められることがほとんど。そして、実制作・運用については、企業向けとは異なる点も多いため注意が必要です。

今回は、当社が編集として入り、自治体コンテンツの提案や制作をした経験をもとに、課題解決に役立つノウハウをご紹介します。複数社の企画提案から優れた1社を選定する「プロポーザル」に参加予定の方にも、参考になれば幸いです。

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1.自治体広報誌のプランニングは「中」と「外」の視点が大切

自治体は大前提として、「何にいくら使うか」という予算があり、計画にそって業務が行われています。公共性や公益性が求められる以上、一般企業よりも予算計画の遂行は厳密。そのため、突発的にコンテンツ制作が行われることは少なく、あらかじめ「何を」「いくらで」「いつまでに」つくるかが決まっているケースがほとんどです。

募集要項や仕様の確認

コンテンツ制作は、自治体が用意している募集要項や仕様の確認からはじまります。
多くの場合、

  • 目的

    その事業や施策を行う背景や目的

  • 業務委託期間

    業務が委託される開始日と終了日。契約締結日から開始となっていることが多い

  • 参加条件

    「日本国内に本社がある」「会社更生法の手続きがされていない」などの条件

  • 業務の内容

    自治体側が、受託者にお願いする内容

  • スケジュール

    制作物の納期。途中段階の確認工程が書かれていることも

  • 予算

    業務に使用できる予算

が仕様書にまとめられています。
プロポーザルの場合は、さらに提案に必要な書類や、選考方法などが情報として加わります。
すでに外注先が決定しているなら、この書類をもとに自治体の担当者にヒヤリングを進めますが、複数社が参加するプロポーザルの場合は、不明点などを問い合わせ、回答を待ちましょう。

前述のようにこれらの書類は、自治体側が、自分たちの視点であらかじめ考えたもの。この書類に要件がまとまっているからといって、いきなり制作が始まることはまずありません。書類を読み解き、制作側が肉付けした企画書や構成案でコンセンサスをとるのが一般的な流れです。

顕在的課題と潜在的課題を整理

企画書や構成案をつくる際にもっとも大切なのが、募集要項や仕様に書かれている「目的」の深い理解です。家づくりでいえば「基礎」の部分。ここをしっかりと固めておかないと、どれだけいい文章やデザインをつくっても簡単に倒れてしまいます。
まず「目的」に書かれていることが、顕在的課題なのか潜在的課題なのか、それとも両方なのかを把握する必要があります。

  • 顕在的課題

    目に見えている課題のこと。たとえば観光パンフレットであれば「春だけではなく、冬の観光客を150%増やす」、企業誘致の案内であれば「〇年までに10社の企業を誘致する」など。

  • 潜在的課題

    顕在的課題の奥に潜んでいる本当の課題のこと。前者の観光パンフレットであれば「近隣の観光地に人が奪われている」、企業誘致の案内であれば「人口減少で税収が下がっている」など。

顕在的課題が解決されても、潜在的課題が残っていればふたたび同じような状態に戻ってしまいます。潜在的課題があまりに大きなテーマの場合、そのツールだけでは解決できないこともありますが、企画のさまざまなエッセンスとして生きてくるはずなので、しっかりとリサーチ、分析をしておきましょう。

「中」の視点と「外」の視点

目的への理解を深め、ターゲットに訴求するコンテンツをつくるためには、「中」と「外」、2つの視点をもつことが大切です。自治体でいえば、「中」はその団体に所属する人々の視点。「外」は、提案する私たちを含む「第三者」の視点です。

「中」の視点を得るためには、担当者への聞き取りはもちろん、現地に足を運んで課題にふれたり、かかわる人々の声を拾って情報とするべきでしょう。課題を「自分ごと化」するためには欠かせません。
時間や距離に制約があり、現地に足を運べない場合、当社では

  • 公式機関に問い合わせる(観光情報であれば観光協会、特産品であれば商工会議所など)
  • 書籍を活用し正確な情報を手に入れる
  • インターネット上の膨大な情報を精査する

こともあります。

一方で、当事者であればあるほど、見えていないことがあります。たとえば多くの自治体では観光資源の発掘が急がれていますが、住んでいる人にとっては当たり前のものが、外の人から価値を見出され、新たな観光資源となる例も。
「外」の視点を加えるためには、自分自身の冷静な目とともに、競合の状況や市場のトレンドを重ね合わせましょう。SNSを活用したトレンド情報の収集も効果的です。

コンテンツのポイントづくり

課題が整理でき、「中」と「外」の視点からリサーチや分析ができたら、コンテンツに盛り込むべき内容や構成(情報のボリュームの大小、ストーリー展開)が見えてくるはずです。
しかしこれだけでは、必要な要素が組みあがっただけ。家づくりでいえば、基礎や間取りが固まり、構造材が組みあがったものの、外壁や内装といった特徴がない状態です。
必要なのは、コンテンツを特徴づける「ポイントづくり」。提示されている仕様の範囲内で、ターゲットの心に届けるための工夫が欠かせません。

ポイントづくりの例

  • キャラクターを設定する

    オリジナルキャラクターを設定。キャラクターをストーリーテラーにすることで、企画の伝達力がアップします。

  • 著名人や識者をアサインする

    地元出身者や企画に関連した著名人を起用したり、識者をアサインして企画の信ぴょう性を高めたりします。

  • 判型を工夫する

    パンフレットやリーフレットでのポイントづくりの定番。A4の縦サイズが一般的なところ、女性を意識したA5判や横使い、印刷用紙や加工に工夫をすることで特徴を出します。

  • デザインをおしゃれにする

    近年は行政や自治体でも、デザインにこだわったツールが多数。可読性は損なわない程度におしゃれなデザインを施すのもトレンドです。おしゃれな自治体広報誌は話題を集め、SNSなどを通じて拡散されることも。

メディアとのコラボレーション

ポイントづくりのひとつとして、すでに名の知られたメディアと協業する方法もあります。
たとえば「Walkerブランド」で知られるKADOKAWAでは、「〇〇Walker」という名のもとでPR冊子を制作。また、「ことりっぷ」をリリースする昭文社では、「ことりっぷ〇〇」という形で自治体や商品を訴求するツールを手掛けます。
ブランドの名を借り、かかわる会社が増えれば制作費はかさみますが、認知を高めたり、企画のメジャー感を演出したりするためには有効。当社も取引先の出版社からお声がけをいただいたり、当社から企画を持ち込んだりして、メディアとコラボレーションしたコンテンツを数多く手掛けています。

2.自治体広報誌の制作や運用を任せるなら信頼と実績が要

企画と構成が固まったら、いよいよ制作です。企業のプロモーションツールとは異なる点があるため、要点をおさえておきましょう。

自治体広報誌と企業のプロモーションツールとの違い

制作にあたっては以下の要点をおさえておくとよいでしょう。

  • 文章、デザインともにロジカルに

    「なぜこのコピーなのか」「なぜこの色やあしらいを入れたのか」など、コンテンツを構成するすべての要素に理由を求められることがほとんど。コンテンツの目的とターゲットを深く理解した上で、ロジカルに要素を落とし込んでいく必要があります。

  • 修正回数が多いことを見込んでおく

    企業のプロモーションツールでも同様のケースはありますが、自治体の場合は確認が何層にもわたり複数回あるため、修正回数は非常に多いです。初校と最終原稿では大きく変わっていることもよくありますが、ていねいに対応しながらもミッションを見失わないように気を付けてください。

  • 校正や校閲には細心の注意を

    ひとつの間違いでも、公共性や公益性が失われる大きなトラブルにつながりかねません。また、万が一、ミスが発生して刷り直しになったとしても、その分の予算は確保されていないので、制作側が負担することになるでしょう。校正や校閲に関しては、場合によっては外部の専門業者を入れるなどして、細心の注意を払いましょう。

  • 環境への配慮

    近年、自治体のツール制作にあたっては、環境への配慮が求められます。エコ電力の利用やリサイクル適正、環境に配慮した事業者での印刷などが該当します。環境へ配慮した工程を組んだり、業者を選定したりすると、コストがアップすることも。募集要項や仕様に書かれているので、事前の確認を忘れずに。

信頼と実績のあるプロフェッショナルの起用を

自治体の仕事は、企画の大小問わず非常にシビアでデリケート。制作物の品質とともに、お金、時間、かかわる人にさまざまな約束事があります。
制作するためにはライターやデザイナー、カメラマンなどをアサインしなければなりません。しかしフリーランスのなかには、「品質は高いけれど納期が甘い」、「急ぎの修正が発生したが、連絡がなかなかつかない」という方も少なからずいます。ましてや、制作途中でリタイアされたら、プロジェクトの進行に多大な影響を及ぼし、自治体の課題解決にも迷惑をかけることになります。
企業のプロモーションツールであれば、場合によっては納期や予算、スタッフの再調整ができるかもしれませんが、行政・自治体はまず無理でしょう。制作チームを構築するなら、各分野で信頼と実績を積んだ方をアサインすることが重要です。

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3.編集プロダクションならプロポーザルからまるごと対応が可能

ここまで読んで、企画提案から制作、運用まで、企業のプロモーションツールとは違ったむずかしさを感じられたのではないでしょうか。
冒頭に挙げたように、当社にご相談いただく広告代理店や印刷会社の方の多くが、自身で企画を立て、制作スタッフをアサインされています。しかし、プロポーザルは時期が重なることも多く、一人で複数の企画立案、スタッフのアサインを抱えるとなると、かなりのハードワークに。働き方改革が叫ばれ、業務時間にも限りがあるなかで、確度の高い提案をするのは、非常に困難です。

プロポーザルや運用に編集者を入れるメリット

当社からおすすめしたいのが、手前みそになりますが「編集プロダクション」を使うこと。それによって解決することはたくさんあります。

  • 企画書、構成案の作成

    企画立案から編集プロダクションが携わることも。受注業者が広告代理店や印刷会社だからといって、その会社が企画書を作らなければいけないルールはありません。企画書の内容や文章、ラフスケッチを編集プロダクションが制作し、その素材をもとに代理店側が自社の提案書類に落とし込む。もしくは企画書そのものを編集プロダクションが作ることも可能です。

  • リサーチ、市場分析

    提案内容に信ぴょう性をもたせるために欠かせないリサーチ。電話でのリサーチや現地調査などには、マンパワーが必要です。出版物や広告の制作実績のある編集プロダクションは、日ごろから各種リサーチを実施。トレンドなどの市場分析も得意としています。

  • チームビルディング、進行管理

    制作や運用にはそれなりのスタッフが必要です。一人ひとりクリエイターをアサインし、やりとりするには大きな労力を要します。そこに編集者(ディレクター)を加えれば、ライターやカメラマン、デザイナー、さらには著名人や識者のアサイン、プロジェクトの進行管理などを一任できます。

  • コーディネート力による品質向上

    「いい原稿が書けた」「目を引く写真が撮れた」「素敵なデザインが仕上がった」としても、ファッションと同じように“ちぐはぐ”なコーディネートであれば逆効果。編集者はプロのクリエイターを束ね、その持ち味を引き出しながらベストなハーモニーを生み出します。

  • 校正、校閲による品質向上

    日々、出版物や印刷物を世に送り出している編集プロダクション。情報の正確性についてはとくに高い意識をもっています。校正、校閲のノウハウもあるため、行政や自治体の情報を正しく拾い、バイアスをかけずに正しく伝えることが可能です。

なお、当社の肌感覚にはなりますが、地の利のある(その地域の情報発信に実績のある)編集プロダクションを制作スタッフに加えることで、プロポーザルの際にアドバンテージになることも少なくないようです。

ワンストップはもちろんパーツ対応も可能

編集プロダクションに、企画立案から納品までワンストップでオーダーすれば、発注側の負荷は大きく軽減されるでしょう。しかし、予算の都合により必ずしもワンストップでオーダーできないケースも想定されます。
その場合は、企画のみ、制作のみ、運用のみなど、業務の一部を発注することを検討してみましょう。自社に制作担当がいるなら、編集プロダクションと分業や協業をすることで制作コストをおさえられるはずです。
当社においても、発注側の予算に応じて、ワンストップやパーツのみなど柔軟に対応させていただいています。

4.行政・自治体広報誌の実例

中部経済産業局・中部のたからモノ 地域ブランド THE STORIES

☆目的を深く理解した上で、ターゲットに伝わる最善の構成を思案

中部経済産業局管内の、地域団体商標制度を活用した地域ブランディング成功例を紹介した事例集です。矢野経済研究所様からご依頼いただき、エディマートでは、企画立案、構成から、取材、執筆、写真、デザインといったコンテンツ制作を全て担当。

人の顔が見える紙面づくりを意識し、地域ブランドの誕生秘話やサクセスストーリー、成功までの道のりを探りながら、地域団体商標制度がどのように活用されてきたかを紹介しています。

昭文社・ことりっぷ長久手さんぽ

☆メディアとのコラボレーションで地域の魅力をブランディング

「住みよさランキング」で常に上位にランクインする、愛知県長久手市。こちらの冊子は、同市の魅力をPRするため、女性に人気のガイドブック「ことりっぷ」とコラボレーションしたものです。当社が「ことりっぷ」の名古屋や飛騨高山、伊勢志摩の編集を担当していることから、昭文社様からオーダーいただきました。

掲載スポットのリサーチを入念に行い、長久手市の魅力が伝わる誌面に。レイアウトは本誌と同様ですが、料理がよりおいしそうに見える写真の撮影など、細かな部分までこだわってつくりました。

日本旅行・春いろ いなわしろ

☆震災後の課題解決のため、地元の方々とともに観光資源を発掘

東日本大震災による風評被害の影響で、観光需要の低迷に悩んでいた福島県猪苗代町。日本旅行のなかで、地域活性化研究・コンサルティングを担う日本旅行総研様からご相談をいただだき、需要拡大につながる冊子を制作いたしました。

冊子に盛り込む内容の策定では、当社スタッフが猪苗代町に足を運び、現地で観光ガイドを務める「いなわしろ伝保人会」と検討。観光ガイドのみなさんは誌面にも登場いただいたことで、桜の美しさと、人々のあたたかさが伝わる一冊に仕上がりました。

5.最後に

新型コロナウイルスの影響により、各地の観光産業は大きな打撃を受けています。一方で、テレワークの普及から、オフィスに通わずに自分の好きな場所で仕事ができるようになりました。あらたな居住地として地方に注目が集まっています。

交通網の整備により、企業誘致に力を入れる自治体も少なくありません。また、政府が「観光立国」をめざす以上、afterコロナにはふたたび、インバウンドを中心とした需要の拡大も期待されるでしょう。

地域の課題は尽きません。それらを解決し、希望へと変えていくためにも、適切なコンテンツ制作は欠かせません。この記事をお役立ていただければ幸いですが、エディマートもぜひ力になれればと考えていますので、お気軽にご相談ください。

 

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EIJI KITO

この記事の執筆者EIJI KITO代表取締役

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1973年生まれ。96年に同志社大学卒業後、新卒入社の宣伝会議で編集職の楽しさを知るも、己の未熟さから挫折。地元名古屋に戻り、プロトコーポレーションの制作部門に入社し、編集の仕事を学び直す。親会社に転籍後はWEBのプランニングに従事。03年フリー編集者として独立、06年法人化。エディマート代表として制作と営業を統括しながら、自身も編集者として最前線に立つ。好きな言葉は岡本太郎の「危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ」。趣味はバイクとマイクラと部屋いじり。

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