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2019.08.21 Wed

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出版不況のなか編集プロダクションが見つけた新しい存在価値とは?

編集プロダクションの新しい存在価値

代表の鬼頭です。当社は編集プロダクションとして、出版社をメインに、新聞社や広告代理店、印刷会社から制作を請け負い、今日まで歩んできました。「出版不況」と言われて久しいですが、当社ももちろん、そのあおりを受けています。“今後は事業が縮小する一方なのか”と考えたこともありましたが、ここ数年、編集プロダクションだからこそ必要とされる新たなフィールドが見えてきました。今は明るい未来のため、その舵取りを全速力で進めています。

今回は、編集プロダクションができることをおさらいしながら、エディマートが新たな得意分野としているフィールドについてご紹介したいと思います。編集に携わる多くの方の参考になり、心に明るい光が差すと思いますので、最後までお読みくださいね。

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1.出版不況が編集プロダクションに与える影響

出版不況が編集プロダクションに与える影響

制作費減少&短納期で高まる負荷

出版不況は1990年末ごろから始まったと言われます。もう20年も経つのですね。当社のある中部地方は、製造業が好調で、2000年代前半は愛知万博や中部国際空港の開港などがあり、首都圏よりは出版不況の波が遅く到着したと記憶しています。それでも、年を追うごとにじわりじわりと、厳しい状況になってきました。

具体的には、制作費の削減や休刊による仕事減、出版計画がぎりぎりまで立たないことからの制作期間の圧縮など。それでもクオリティは担保しなければいけないため、利益を圧縮しての対応、マンパワーを使っての解決が増えていきました。良心的な出版社は、新規ページではなく流用ページを増やすなど、こちらの負荷を減らす配慮をしていただけましたが、“より良いものをつくりたい”と思いこの仕事をしている以上、安易に手を抜くことはできず、心の葛藤も少なくありませんでした。

出版不況なのに仕事量が増える!?逆転現象の理由

出版不況だから仕事が減ったかといえば、一概にはそうとは言えません。当社の場合、出版に関わる案件数は逆に増えていきました。答えは簡単。1案件の売り上げ・利益が下がったなら、同じ金額を確保するために案件数を増やす必要があるからです。たとえばこれまで1冊300万円の制作費だったものが200万円になったとしたら、足りない100万円分を、50万円・30万円・20万円の仕事で埋めれば、案件数は合計で4つになります。案件はそれぞれに締め切りがあり、関わるクライアントや外部クリエイターがいるので、増えれば増えるほど負荷は増大します。言葉は悪いですが「儲けは少ないけど忙しい」状況です。

出版社のアウトソーシングにより磨かれる編集力・企画力

出版不況は、編集プロダクションのスキルを高めることにもつながりました。これはどういうことでしょうか?
かつて多くの出版社は、社内で編集スタッフを複数抱えてメディアをつくっていたと思います。ところが不況の影響により、業務の効率化や人件費を削減するために、中の人を減らし、編集業務をアウトソーシングすることが増えていきました。出版社には編集長とデスクのみを置き、残る制作は編集プロダクションやフリーの編集者に外注する。今では決して珍しいことではありません。

本の設計や企画立案、取材や執筆といった実作業の多くを、外部の編集プロダクションが担うため、出版社に本来あってしかるべき編集力や企画力は、仕事のアウトソーシングとともに、外に流れていると私は感じています。

 

2.編集プロダクションのこれからの生き方

編集プロダクションのこれからの生き方

今の時代に出版社に必要とされる編集プロダクションとは

先ほど、出版不況なのに仕事量は増えている、と書きました。これはどこの編集プロダクションにもあてはまるわけではありません。さまざまな出版社の仕事の進め方や要望にフィットする「対応力」や、マンパワーを使って解決するためのある程度の「規模感」は必要でしょう。

そして何よりも、求められるのは編集力と企画力。出版社と一緒になって、ときに出版社をリードして本をつくるぐらいの力を、編集プロダクションには求められます。エディマートでも、出版社に企画を持ち込んだり、出版社とともに新規の商品開発を行ったりと、出版不況のなかでもリーチの高い本づくりを進めています。

 

BtoBの強化は欠かせない

一方で、出版社以外とのビジネス拡大も欠かせません。特にBtoBですね。出版社とのビジネスもBtoBではありますが、その先の読者のメリットを最優先にするため、弊社の中では出版は感覚的にはBtoCです。

BtoBの最たるものといえば、セールス・プロモーションのサポートでしょう。会社案内や学校案内、周年史や記念史など。代理店や印刷会社と一緒にこういったツールをつくることは、これまでも出版と並行してやってきましたが、近年さらに強化を進めています。

勝算というとおこがましいですが、今の時代はあらゆるツールに「伝わる」「届く」ことが求められています。情報誌制作でずっとそのことばかり考え、時代や旬に沿った提案をしてきた編集プロダクションこそ、各社に最適なツールがつくれると信じています。

Webは「作る」のではなく「支える」「動かす」

出版不況の理由の一つに、ネットメディアの台頭があることは否定できません。当社もWeb制作に本腰を入れようと考えたことがありました。3年ぐらい前でしたが、時すでに遅し。世の中には2000年代初頭からWeb制作に取り組む会社が多数ありましたので、付け焼刃でWebの世界に飛び込んでも結果は見えていました。

そうしたこともあって、しばらくWebとは距離を置いていましたが、あるとき、いろいろなホームページを見ていると、「動いていない」ものが本当にたくさんあることに気づきます。当時、勉強のためにWeb制作会社を訪問していたのですが、そういう状況を前にデザインリニューアルの提案はできても、コンテンツを動かす提案はなかなかできていない様子。なるほど、編集プロダクションである当社は、“Webを作れるようにならなければ”と焦るのではなく、動かせていない企業に寄り添い、動かす手伝いをすればいいのではと悟ります。

 

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3.コンテンツマーケティングにおける編集プロダクションの強み

コンテンツマーケティングにおける編集プロダクションの強み

1社1メディアの時代にコンテンツは資産に

回りくどく書きましたが、要するに「コンテンツマーケティングへの目覚め」です。それまで、メディアをもつことは出版社や新聞社など一部の企業に限られていましたが、ITの進展により今では誰もがメディアを持てる時代になりました。「メディアを持てる」と書きましたが、裏を返せば、メディアを持たないと、持っている会社と発信力で差がつく時代になったともいえるでしょう。

それぞれの企業には、それぞれの企業しか持ち合わせていないコンテンツがあります。A社とB社が同業であったとしても、それぞれに違った魅力あふれるコンテンツがあるはずです。ところが、有益な資産(=コンテンツ)をもっているにも関わらず、自社では気づいていない、発信していないことも少なくありません。

SEOは弱くても、最終的に心に届く、残るコンテンツ

せっかくの資産ですから、効果的に発信して自社へのリーチを高めるべきです。SEOが妄信されていた時代、効果的なキーワードが盛り込まれたコンテンツを大量につくることが求められました。その結果、ネットメディアには質の低い情報があふれ、WELQ問題も大きな騒ぎとなりました。

さらにGoogleのアルゴリズムが改良されたことも手伝い、ネットメディアはようやく、質を重視する時代になったと感じています。そして、時代の求めにあった質の高いコンテンツを提供できるのが、それを生業にしてきた編集プロダクションであり、出版社のアウトソーシングにより編集力・企画力が磨かれた編集プロダクションなのです。

アルゴリズムを解析して、検索エンジンの上位に表示されるコンテンツをシステマチックにつくれる企業もあるかもしれません。しかし、その先にいるのが人間である限り、最終的に心に届き、心に残るコンテンツをつくれなければ、意味はありませんよね。

ブランド力に乏しくても適正価格でつくれる

出版社のなかにも、コンテンツマーケティングに取り組んでいるところもあります。名の知れた企業名や媒体名を活用してプロデュースすれば、ブランド力を借りた魅力的なオウンドメディアができるかもしれません。

しかし、もしかするとそのコンテンツ制作の実務は、出版社から編集プロダクションへアウトソーシングされている可能性もあります。結果的に編集プロダクションがつくっているにも関わらず、出版社を通してブランド名が上にのれば、おのずと価格は高くなることでしょう。もちろんそこに価値を見出すなら、その選択肢は「あり」だと思いますが、コンテンツの質を重視するなら、編集プロダクションに直接発注して、適正価格でオウンドメディアをつくるというのも一つの方法でしょう。

4.最後に

いかがでしたか?出版不況のあおりをうけ、編集プロダクションは斜陽産業だというイメージをもたれていたら、それは大きな誤解です。
あらためて書きます。今は誰もがメディアを持てる時代ですが、メディアを持って自身の資産(=コンテンツ)を発信する人と、そうでない人で大きな差がつく時代でもあります。

一方で、伝えたい人の心に届き、しっかりと残る質の高いメディアは、簡単に誰もがつくれるものではありません。そんなとき、確実なソリューションと適正価格で、心強い味方となってくれるのが、編集プロダクションであると私は考えます。

また、出版不況だからといっても、僕らは本づくりが好きな人間の集まりですので、出版ビジネスから手を引くことはありません。コンテンツマーケティングを太い柱としながらも、世の中に必要とされる本を能動的に企画・制作していく。そんな明るい未来が見えているのです。

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EIJI KITO

この記事の執筆者EIJI KITO代表取締役

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1973年生まれ。96年に同志社大学卒業後、新卒入社の宣伝会議で編集職の楽しさを知るも、己の未熟さから挫折。地元名古屋に戻り、プロトコーポレーションの制作部門に入社し、編集の仕事を学び直す。親会社に転籍後はWEBのプランニングに従事。03年フリー編集者として独立、06年法人化。エディマート代表として制作と営業を統括しながら、自身も編集者として最前線に立つ。好きな言葉は岡本太郎の「危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ」。趣味はバイクとマイクラと部屋いじり。

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